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うぉくのふぉそみつ リターンズ  作者: ムッシュ志乃
6月編
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【然るべく 水玉模様と 雨粒と】第19話 対決大学 その17

 どうやら『萬斎抄 芍』の効果が残っていたのか、大皿の盾を砕く勢いの1Kgのそうめんの直撃を頭部に受けたというのに良崎本人はピンピンしている。あまつさえ作戦失敗はお前のせいだと言わんばかりに地面に拳を叩きこんで悔しがっている。


 残り時間がない。作戦もない! 相手も万策尽きたようだが、スタート地点から手詰まりなのはこちらも同じだ。勝ち目がない!

 水原さんもハイジさんもただ闇雲にそうめんを発射しても後輩たちを危険に晒すだけだともう装填することもせず策を練っているが、いたずらに時間が過ぎていくだけだ。

 ……しかし、正直な話兵学部はいいPRにはなったのではないだろうか?

 結局昨年のそうめんの処分はバズーカを介してものすごい勢いで地面に叩きつけるという結果になってしまったが遊びで使うそうめんバズーカ、それも火薬を使わないでもあの威力だ。死の商人たちが我が大学に買い出しに来るのはそう遠い将来でもないだろう。日本一籠城戦に強い大学どころではない。日本一戦争に強い大学だとアピールできたではないか。

 私が不毛な対決をそうやって正当化していると、水原さんがそうめんバズーカを地面に置き、私の元へと駆け足でやってきた。


「バズーカとは5m以上距離があるからルール違反じゃないのよ」


 と最初に断りを入れ、水原さんはとっておきの秘策を私に耳打ちした。

 一気に目が覚めた。あの目にも止まらぬ速度も、全てをぶち抜く威力も全ての問題を解決しているではないか! あとは私の力量次第だ!


「ただねー、これ今やっちゃうとすぐに向こうに真似されちゃうのよー。だから最後の最後ねー」


 忠告しながら水原さんはバズーカの位置に戻る。


「いったい何企んでるのよ」


「うるせぃ土に帰れ。二戦連続戦犯が区間MVP様にたてつくな」


 良崎の追及と敗者のすがりつきとして一笑に付したら胸骨に思い切り頭突きを受けた。

 その後、数分間の口論と良崎の一方的な暴力を経て制限時間も間近に迫り、ハイジさんと良崎はとにかく軽いそうめんを数撃つ作戦に出たがそうめんを捉えることが出来なかった。

 そして、我々の計画も実行段階に移り、水原さんがそうめんバズーカのMAX20Kgを装填する。私もLサイズの大皿を抱え、準備完了の合図をする。


「曾根崎くん、日本中の食べ損ねたそうめん、勝利を求める向上心、不可能へのチャレンジ精神、今一度、あなたに預けるわ」


 水原さんがバズーカを構える。


「水原さんは負けないです! 俺が勝たせるもの!」


 私も大皿を構える。


 我々の秘策は奇しくも―

 『ビックリ人間チーム』と同じく、地球の重力を最大限に利用したものだった。

 水原さんが砲口をほとんど地面と垂直に掲げ! 思い切り引き金を引く! すると20Kgのそうめんが上空に向かってまっすぐに撃ち上げられる。

 ハイジさんが「その手があったか」と舌打ちをするのが聞こえた。

 上空に撃ち上げられたそうめんは上昇の際に空気抵抗でいくらかほどけ、表面積を広げる。そして落下の際にさらに広がり、微力ながらもパラシュートの役割を持ち減速! さらに地球の重力による落下の速度の最速は決まっている。例えそうめんが最速で落ちてこようともそれは目で追えないほどの速度ではないはずだ。

 上空でエネルギーを使い果たしたそうめんは一瞬停止し、あとは重力に従って最短距離で地球へ向かう。つまり、私はそうめんの真下で大皿を構えていればいいのだ。

 麺類の王と言えども重力には逆らえない。地球をナメんな! 小麦粉共!


 ベッ! チャアアア……


「目測を誤りました」


 こんもりと盛られた20Kgのそうめんの山を目の前に私は大皿を持ったまま動くことが出来ず、水原さんも両手で顔を覆って膝を屈め、動かない。

 速度の問題、威力の問題、位置の問題すべてにおいて完璧な作戦だったが私の力量が伴わなかった。しかし水原さんが懸念した、相手に真似される事態だけは避けられるだろう。もう発射→上昇→下降→キャッチをする時間は私達にも『ビックリ人間チーム』にもない。


「オラァ!」


 しかしハイジさんは諦めない。20Kgのそうめんを装填し、バズーカから5mを少し超えたところに撃ちこんだ。当然、あのバズーカとの最短距離なんて言う危険な位置に良崎はおらず、ただそうめんの山が出来るだけである。

 しかしハイジさんはそのそうめんの山に突進し、その山頂をひっつかんで口に押し込み、どんどん頬張る。


「やられた……」


 そうか。いくら地面に落ちたとはいえ20Kgのそうめん。その20Kgすべてに泥が付着しているわけではない。20Kgもあれば食べられる部分はある。あまりにも乱暴だが、ハイジさんの勝利への執念が我々を上回ったということだろう。


『午後6時10分をお知らせします』


「終了ー! 『ビックリ人間チーム』現在計量中! 『努力家さんチーム』0g! よって対決大学第三回戦『何キロ食えるかな? 去年のそうめん一斉処分スーパー流しそうめん大食い対決!』は『ビックリ人間チーム』の勝利!」


 小林氏が対決終了を宣言すると、兵学部の歓声を受けてハイジさんがそうめんを頬張ったまま拳を高く掲げる。それに良崎がなぎ倒すようにタックルをかまし、抱きついた。

 これが敗北か。あれが……勝者! 畜生!


「MVPの審査は兵学部のみなさんにお願いいたします。今回も激闘を戦い抜いた四人の名前を呼ぶので、この人こそ! と思う人の時に拍手をお願いします。『ビックリ人間チーム』陣内一葉さん」


 割れんばかりの拍手とジンナーイジンナーイのスタンディングオベーション。過半数は超えているだろう。巷ではテロリストだのと忌み嫌われている割にはここじゃ随分な扱いじゃないか。『神輿戦車シェリダンM.G』の出生の秘密がわかった気がする。


「良崎アンナさん」


 まばらではあるが、地球の力を最大限に借りた『超停止』が成功していれば、ハイジさんに票が流れることもなくかなりの高評価だったはずだ。


「『努力家さんチーム』水原銀子さん」


 ハイジさんに次ぐかなりの大歓声だ。確かに最後の最後で見せたあの秘策は見事であったが、その見事さを噛みしめる度に私はもう、なんだか帰って布団にもぐりたくなるんだ。


「曾根崎忠くん」


 まばらな拍手。嫌味か。むしろ0の方が面白いじゃないか、きっとここで拍手した奴は選挙で自分の名前を書いて無効票になったりするようなヤツだろう。

 MVPから一転、痛恨のエラーで一気に戦犯になってしまった。今なら良崎の気持ちがわかる。


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