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うぉくのふぉそみつ リターンズ  作者: ムッシュ志乃
6月編
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【然るべく 水玉模様と 雨粒と】第4話 対決大学 その2

「各戦場で勝敗を決し、最終的に勝利数の多かった組の勝利となる! 『ビックリ人間チーム』が最終的に勝利したその場合、陣内一葉! 貴様には『演劇サークルの王』の称号を与えよう! 良崎=リーベルト・アンナ! 貴様には『大学のマドンナ』の称号を与えよう! しかぁーし! 我が『努力家さんチーム』が勝利した場合! この水原銀子には『演劇サークル』の全権限と『演劇サークル終身名誉会長』、『演劇サークル終身名誉マドンナ』の肩書を、曾根崎忠には『演劇サークルのツッコミ王』の肩書とサークルにおける拒否権を与えるものとする!」


 思っていた以上のストレスが水原さんには溜まっていたらしい。そして私の称号だけ見劣りしていないか? 確かにこの珍妙な生き物たちに囲まれて目立った活躍はしていないから文句は言えないのだがツッコミ王などと言う獲得しただけで一度も使っていないような称号よりも新しく良いものを用意してほしい。


「何ぃー? めんどうくさいから棄権してしまえばいいだとぅ? ぬは、ぬは、ぬはは! 最終的な勝敗にかかわらず、この対決大学にて最も目覚ましい活躍をした者には金一封の副賞を与えようではないか!」


「いよぉっしゃあああ!!! やるぞリーベルト! 俺たちは天賦の才に恵まれた『ビックリ人間チーム』だ! いくら凡人が努力したところで選ばれた人間の生まれ持つ才能の前には敵わないことを思い知らせてやろうぜ!」


 ハイジさんのテンションが急に上がった。しかし、無理にテンションを上げている水原さんに対するアシストに見えなくもない。これでハイジさんが乗ってこなければ水原さんは見殺しだっただろう。


「……やってやりますよハイジさん!」


 良崎も水原さんの気持ちを汲んでか、ハイジさんと掌をバチンと叩き合わせた。

 いやぁ、どうしよう。と、いうかなんていうことをしてくれたんだ。ハイジさんと良崎が本気を出したら私と水原さんでは何一つかなわないぞ。早押しクイズや常識テストならまだしも、体力勝負では万に一つも勝ち目はないぞ。


「フハハハハ! いいだろう! 努力家さんの努力の力を見せてやろう! 貴様らはしょせん早熟なだけ! 本当の力とは熟成と努力のみによって培われるのだ! 返り討ちにしてやりましょうよ水原さん!」


 嗚呼。私も毒されてきているな。


「対決大学第一回戦は日没を合図とし『日の目を見られない貯水池決戦』を執り行う!」


「カットー」


 小林氏が宣言すると、水原さんはやっと柵から降り、階段を下って私達の元へとやってきた。


「大変失礼なことをしてしまいました。申し訳ありませんハイジさん。アンナちゃんもごめんね」


 出で立ちこそ元帥だが、物腰は少佐に戻っている。


「ちゃんと理由を話せ」


 ハイジさんは腕組みをし、眉間に皺を寄せる。


「あの……サークルの人数が足りてなかったみたいで、サークルとしての活動続行は不可とされてしまいまして」


 ド畜生! だからサトウキビのネルソンなんていなかったんだ!


「畜生! ネルソンこの野郎!」


 私は地団駄を踏んだ。架空の人物の存在を思い込まされた挙句、サークルの活動が不可で対決大学だと!? ふざけるなハイジ!


「でも、特例として大学の宣伝映像を制作すればサークル活動の続行を許可すると言われまして……」


 伏し目がちな目は既に涙を湛えているだろう。そんな条件を提示されては、形式上だけとはいえ会長としてはその条件を飲むしかないだろう。


「誰だ。そんな条件を出したのは」


「言えません」


「んのクソ狸め。『演劇サークル』の文句は俺に言えってんだ!」


「非公式なものだから大学の宣伝になるならば内容は問わないということだったので、とりあえずわたしはサークルのことでは小林さんしか相談できる人がいなかったので小林さんに相談したらみんなには内緒でやれば面白いんじゃないかとなりまして」


「小林ィー! 今回はそのアイディアに免じて許しやるが水原に手ぇ出したら一万回殺すからな!」


「滅相もないです」


 と小林さんが慌てた声を上げるがあなたも人のよさそうな顔をして何しているの?


「まぁ、しょうがねぇよ。ここは会長の振る旗についていくしかねぇよ。お前ら、やるぞ」


 いつになく真面目じゃないか。それとも私に免疫がついてきたのか?


「全部15回戦かぁ。どんなPVになるんでしょう」


 良崎はまんざらでもないようで、少し期待に胸を膨らませているようだ。物理的にではなく。


「カメラの方は小林さんが回すので、それを後々編集してAO入試の締切には間に合わせたいと」


「お前ら、それが出来るのか」


「…………」


 普段はアレなハイジさんに真面目に叱責されるとつい聞く方も真面目になってしまう。なんて真面目なんだ。やはり不意打ちを受けることに慣れていないから自分のペースが崩れているのか。


「……わかったよ俺が編集やるよ。お前ら就活の準備もあるもんな。こばやっちゃんもそろそろ卒業して社会復帰しようぜ。俺も母校と後世のために尽力するってのも悪くない」


 すげぇ。もうこれはハイジさんじゃない。陣内さんだ。頼れる普通の先輩、陣内先輩だ。


「申し訳ないです。申し訳ないついでにアンナちゃん、見栄えがいいのでまたあのゴシックロリータの服でお願いします」


「……事情が事情だし、銀さんの頼みなら断れないです。それに、もうどうでもいいんですよ。わたしはもう出だしで躓いたからもうまっすぐ走れないんですよ」


 良崎も渋々了承する。特に演劇をするわけでもない演劇の団体に所属した上、初めての部活動らしい活動で忘れたい歴史の無茶ぶりをさせられるとは、本当に生まれ持った容姿以外は恵まれないやつだなぁ。

 何も生まれ持っていないわたしには到底かなわないが。


「さらに申し訳ないついでに、今日は学校に徹夜で一泊です」


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