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うぉくのふぉそみつ リターンズ  作者: ムッシュ志乃
4月編
2/185

【あわるもの 良しと嘯く 春浮かれ】第2話 登場! ゴスロリハーフ美女リーベルト その1

七、


「つっても曾根崎入れても……」


 ハイジさんは難しい顔をして電卓をたたいた。先日の『神輿戦車シェリダンM.G』の騒動などどこ吹く風、未だにキャタピラの痛々しい爪痕は残っているものの、大学は何事もなかったかのように動いている。『神輿戦車シェリダンM.G』もどこかに格納されてしまった。


「足りねぇ」


 1+1+1+1=『アト一人足リナイ』。

 最近の電卓は数字ではなく、その計算の結果がどういう意味を示しているのか直接教えてくれるらしい。と、いうか1+1+1+1くらいの計算ぐらいは暗算できないのだろうか。


「そんな、その電卓がおかしいんじゃないですか?」


 水原さんはハイジさんから電卓をひったくり、乱暴に数字を入力しなおした。

 1+1+1+1=4

 ……あれ? 数字だ。というか、暗算しろよ。お前ら本当に高校出たのか?


「本当。四人しかいないわ。あ、人数の話ね。五人いないと、サークルが消滅しちゃうのよ」


 と、水原さんは私に助け舟を出した。に、してもだ。

 私は恥を忍んで挙手をした。


「どうした曾根崎」


「えぇと、足りないのは二人なんじゃないでしょうか」


 フッ、とハイジさん鼻で笑い、電卓を私に差し出した。


「いや、お前何言ってんだ。足りないのは一人だろ。だってまず俺で一人。ほら、1。で、水原で+1」


 どうも腑に落ちないが、渋々電卓をパチパチと叩く。


「で、曾根崎で+1、ネルソンで+1で4だろ」


 私で+1、ネルソンで+1。確かに4だ。五人には一人足りない。


「そうですね。確かに一人足りないんですが、ネルソンって誰ですか?」


「あ? ネルソンはネルソンだよ」


 ハイジさんの声には少し怒気が含まれている。すかさず水原さんがそのカバーに入る。


「曾根崎くん、ネルソンよ?」


「だから、そのネルソンとは……」


 ハイジさんは眉間にこれでもかというほど皺を寄せ、口を思い切り歪ませた。


「だからネルソンだっつんだろ!」


「そ、そのネルソンは昨日も今日も来てないってことですね!」


「お前何言ってんだ! お前本当に高校出たのか!」


 えぇ!?


「ちょっとハイジさん、抑えて。いい大人なんだから! 曾根崎くんもあんまりハイジさんを怒らせたらダメよ!」


 そもそも何故ネルソンに話題が及ぶとここまでハイジさんの沸点が低くなるのかがわからないし、水原さんも、人のよさそうな顔をして何故ネルソンについて理解できることを前提にしていることがわからない。


「ふぅー、無知な一年にこの知の救世主たる俺が教えてやるよ。いいか、春が迫ると、サトウキビ畑ではネルソンが収穫できる」


「ほぉ……」


「だから、春が迫るとサトウキビ畑ではネルソンが収穫できる! ブランコやセサルやデラロサでも採れるとでも思ったか?」


 何故――


「まぁ、最近はトマト畑でソトやマエストリなんかが採れるなんて噂を耳にしないでもないが、実際に足を運ぶまでは確証が持てないからな」


「わかりました。よろしく、ネルソン」


 私はネルソン(見えていない)に握手を差し出した。強気に出ていっそ白目でも向いてやろうかと思ったが、入部二日目でそれではあまりにも心象が悪い。ハイジさんと水原さんはネルソンなる人物がいると信じて疑わないのだから、後輩としてはそれに合わせる他ない。


「で、あと一人はどうするんですか? ブドウ畑にラミレスでも採りに行きますか」


「テメェ、ふざけてんのか。なんでレフトが必要なんだよバカヤロー! 今欲しいのはショートだろうが!」


 南米にありがちな名前挙げたら怒られた!

 あとショートもいらねぇし!


「まぁまぁハイジさんも曾根崎くんも落ち着いて落ち着いて。今からもう一人探しても遅くないですから」


 水原さんが仲裁に入るが、実質探さなきゃいけないのは二人だ。

 本当に入るのか、二人も。

 あと、ハイジさんのネルソン関連での沸点の低さにも納得がいかない。




八、


「えー毎度おなじみハイジ、ハイジでございます。優しい言葉と清い心、ハイジ、ハイジでございます」


 拡声器を掴み、ハイジさんは何度も繰り返す。その左後ろでは私が『演劇サークル』の幟を持ち、右後ろでは水原さんが籠に入った飴を沿道のギャラリーに投げ入れている。まるでワイロ付きの選挙活動だ。ハイジさんが道に立っただけで自然と人垣は割れ、ハイジさんの目の前には一筋の道が出来た。そして、誰も飴を拾おうとしない。


「皆さん名前だけでも覚えていってください。ハイジと『演劇サークル』でございます。いつも爽やかな朝のような気持と家族のような温かみをもってやらせていただいていますハイジ、ハイジでございます」


 ハイジさん、選挙活動をするのは構わない(構わないのか?)が、しっかりと党の名前を宣伝しなければ目的果たせないぞ。何せ、我々はハイジさんの支持者を募っているのではなく、『演劇サークル』の入部者を募っているのだから。

 沿道の方々は、私たちを妙な見世物を見るような目を私たちに向ける。それもそうだろう。この中にはあの『神輿戦車シェリダンM.G』の被害にあった人もいるかもしれない。誰もそれに触れないだけで、内心はハイジさんに対する怒りが沸騰しているのかもしれない。

 そして、そのハイジさんの下についてしまったから未だに私は学科で知人が出来ないのかもしれない。


「人だかり見っけた! 行くぞ!」


 と、筆頭が勝手に駆けだしてしまうような統率のない集団である。しかも、その集団の三分の二は実在していない部員の存在を信じている。正直な話、内情を知ってしまえばこの集団にはもう魅力などないのではないか。


「10まーんばりーきだ、鉄わーんハイージ!」


 妙な節をつけながら、前方の人垣にハイジさんはダイブ、それを見た水原さんは「ハイジさーん!」とまた悲痛な声を上げてそれに駆け寄る。


「……」


 私はそれを数歩離れて見ているしかない。しかし、依然私は『演劇サークル』の幟を持ったまま、他人のふりは到底できない。


「……どうしたよネルソン。助けに行かないのかよ」


 つい、いたたまれなくなって行き場のない怒りをぶつける。


「ネルソン! ハイジさん達とは俺よりも付き合いが長いんだろ! オイ、なんとか言えよネルソン! ネルソン! ドラァ!」


 ハイジさんが自らトラブルに巻き込まれに行く「きたぞーハイジージェットのかぎーりー」の歌声、それを案ずる水原さんがただひたすら繰り返す「ハイジさーん」の声、それに対して詰まりに詰まった感情をぶちまける私の「ネルソンこの野郎」の声。


 その地獄のような惨状を見かねてか人垣は次第に薄くなり、その中心のハイジさん達が見えてくる。

 言い争う金田一ハイジ+軍人水原+ゴスロリ美女+外人イケメン。

 幟を上げたままネルソンに対して怒りをぶつけている方が、無駄にあの輪に近づくよりもまともな気がする。


「どうするんだよネルソン! お前の先輩はよ!」


 輪の中では、ハイジさんがゴスロリに胸ぐらをつかまれ、イケメンに激しく追及されている。それを見て傍であたふたしている水原さん。

 しかし、どうやらイケメンが使っている言語は日本語ではないようで、ハイジさんには通用していないようだ。まぁ、日本語が通用するかと言ったらいささか疑問が残らないでもない。


「曾根崎! 場が収まらねぇ! 戦車呼べ!」


 そんな修羅場で私の名前を呼ばないでくれ。そこそこに珍しい苗字なのだ、あまり人におぼえられては困る。

 急に残ったギャラリー達も騒がしくなり、中にはもつれる足でその場を逃げ出す者もいる。そんな様子からも『神輿戦車シェリダンM.G』の残した影響がいかに強いかうかがえる。


「お前が呼ばないんなら俺が呼ぶぞー!」


 背中に悪寒が走り、腕が粟立ったのがわかった。


「『神輿戦車シェリダンM.G』ー!!!」


 その言葉が周囲に混乱を招くのは百も承知であったが、そう叫ぶのがこの場合賢明だと私は判断した。

 私の一声で騒がしかっただけのギャラリー達の声は一気に悲鳴となり、蜘蛛の子を散らすように退散した。取り残されたハイジさんはゴスロリに思いっきり頬をグーで殴られた後、その憂さを晴らすかのようにイケメンの脛に蹴りを入れ、ニヤリと笑いながらゴスロリの手首をつかんで私の方へと全力で走ってきた。それを追って水原さんもやってくる。

 私のすぐ横をすれ違う時、ハイジさんとゴスロリはまるで気ままな王子様に手を引かれる気の強いお姫様のような顔をしていた。つまり、二人ともまんざらでもないような顔をしていたのだ。


「ヒャッハー、イタリア野郎、この娘はこれで俺のものだー! 追ってきても無駄だぜー!!!」


 まるでルパン三世のように手を引く女性をヒョイと持ち上げて両手で抱えた後、頬を何度も殴られながらもハイジさんは全速力で走り続けていた。どういう肺活量をしているんだ。

 私はそれを追い、それに追従するように90分+延長戦を走り回った後のサッカー選手のような水原さんが追い付く。


「あはははは!」


 自分でも気づかないうちに、私は爆笑していた。なんだろう、この気持ちは。

 いつまでも走り続けられるような気分になりながら、人一人を抱えたまま走っているのに未だに背中が近づかないハイジさんを追った。

 私が笑うのをやめたのは、ハイジさんの足跡に少しずつ血痕が混じり始めてからだった。




九、


「いや、ハハッ、血が止まらない」


 部室ではハイジさんが笑って胡坐をかいていたが、その頬は熟れすぎた野菜のように妙な色に腫れ上がり、鼻と口からは血がとめどなくボタボタと垂れていた。


「水銀、ティッシュ。あと氷嚢」


 何故か笑顔を絶やさないが、その眼前に座っているゴスロリからは背中だけでもわかるくらい強烈な怒気が放たれている。


「た、ただいま持ってまいり、ます」


 息も絶え絶えの水原さんがそう返事をし、ゴスロリがこっちを振り向く。

 近寄ると、まぶしくて目を細めてしまうほどの美形だった。なんというか、芸能人や絵画を含めても私が今まで見た人類の中で恐らく一番美しいだろう。しかし、その美女がハイジさんが激しく出血するまで顔面を殴り続けるのだから、世の中恐ろしい。


「あと、このシュヴァインシュタイガーにお茶出してやれ」


「シュヴァインシュタイガーじゃない!」


 流星のようなパンチがハイジさんの頬を撃ち抜いた後、金属さえも笹の葉のように細かく切り刻んでしまうような声でゴスロリが怒鳴る。私は一瞬腰が引けてしまったが、ハイジさんは少しも臆せず、真っ赤な顔面(流血で)を嬉しそうに綻ばせた。


「じゃあそろそろ名前教えてくれよ。さっきのイタリアナンパ野郎は結局お前の名前わかんなかったんだしさ」


「……」


 ゴスロリは押し黙ったままだ。


「あの男前、ずっと叫んでたぞ。俺はお前が欲しいんだ、例えどこへ行こうと僕は君を見つけることが出来るんだ、ってな」


「……ハイジさん、英語わかるんですね」


 と私。


「いや、もっと厳密に訳すとかなーりどぎつく卑猥なこと言ってたけどな。あんな程度の良識でよその国に来るなんてよっぽど度胸のあるバカか、自分の常識のラインをはるかに上回る好色家か、コイツの魅力が常識を超えさせるレベルかだ。まぁ、カムチャッカラインを知ってたところをみると、カスパリードシステムによるセイント・サウス・フェニックスのキョクセー・ジュージ・ケーンの持つ力も知ってるはずだから、後者二つの可能性が高いかな。まぁ、少なくともブランドン宣言を俺かコイツがしない限り、あのベルルスコーニはコイツには寄ってこないよ。だからお前も安心しな、えーと」


 と、安全を保証した後ハイジさんはゴスロリの頭を撫でたがまたすぐに頬を殴られてしまった。


「……人に名乗らせるなら、そっちから名乗るべきなんじゃないですか」


 きつい声のゴスロリ。私も出来ればお近づきになりたいが、あの鉄拳の射程距離に入るのには少し抵抗があるので数歩下がったまま、土間で正座をする。


「俺は平賀=キートン・ハイジだ」


 ドグチュア!


「ハイジさーん!」


 水原さんが悲鳴を上げるまで、私は人の顔面はこれほどへこむことが出来るのかと思わず感心してしまうほど、ハイジさんの顔面にはゴスロリの鉄拳が深くめり込んでいた。


「陣内一葉だ。背水の陣の陣に、白線の内側までお下がりくださいの内、柳一二三の一に樋口一葉の葉で陣内一葉。で、お前はクロー……」


 メタア!

 また顔面に一発食らうも、ハイジさんはまだめげずに、むしろ一種の快感まで覚えているかのように微笑みを浮かべたままだ。


「良崎です」


「そうか、よろしく良崎カー……」


 バギャス!


「アンナです」


「良崎アンナ?」


「はい」


 こ、こえぇー! 良崎アンナ!


「でも、覚えないでいいです。すぐ帰りますから。むしろ忘れてください」


 突っぱねるようにゴスロリは言い放ち、腰を上げた。クラゲのようなフリルが揺れ、その顔がこちらに向いた途端に、その暴力的なまでの美貌で私も顔がほてってしまうのがわかった。


「あ、そういえば」


 ルチャアア!


「これは『日独伊は敗戦国だから仲良く』と言った分!」


 グッパオン!


「これはわたしの生徒証を盗んだ分」


 パキ……


「これはそれを隠してる分」


 ガオン!


「これはまだそれを返さない分」


 バチィ!


「まだ足りないですけど」


 それぞれが舌根(ゼッコン)雁上(ガンジョウ)稲妻(イナヅマ)伏兎(フクト)夜光(ヤコウ)と人間の急所を完璧に打ち抜いているオール急所五連撃ッッッッ!


「それでも、まだやりますか?」


 なんという格闘センス……ッ! 私では到底近寄れない。例え相手が静止している状態とは言え、あれだけ見事に急所にヒットさせるのはもはや才能以外に説明する言葉がないのではないだろうか。何故さっきのナンパの時にそれを使わなかったのだ。

 それよりも、良崎アンナはこの部屋を出るとき、私の横を通るだろう。当然、良崎アンナの攻撃の射程距離圏内だ。ハイジさんにもあれだけ容赦がなく、強烈に怒っているのだからその矛先が後輩である私に向いてもなんら不思議ではない。


「ハッハ、まだやるかい、だって」


 あれだけの攻撃を受けてもまだハイジさんは笑っている。良崎アンナの射程距離外ギリギリのところで水原さんが応急処置の準備をしてはいるものの、頭部を中心にあれだけのダメージを受ければそろそろ意識が飛んでもおかしくないだろう。しかし、ハイジさんは鮮やかな青色が見る影もなく赤く血に染まった懐から、白いカードのようなものを取り出した。


「まだやるもんね、俺。そっちこそまだやるかい、えぇと、良崎=リーベルト・アンナ」


 ズキュウウウン!

 良崎=リーベルト・アンナの蹴りがハイジさんに決まったかのように見えた。しかし、決まっていない! ハイジさんは良崎=リーベルト・アンナの足首をしっかりとつかんで防御している。と、いうか外国人だったのか良崎=リーベルト・アンナ。それで日・独・伊か。


「俺はお前が『演劇サークル』に入るまでやめる気はないね」


 ハイジさんは不敵に微笑み、良崎=リーベルト・アンナの足を放した。

 ボン! トゥ! ビィ! ワーィドゥ!

 今日何度目かわからない良崎=リーベルト・アンナの連撃はまた完璧にハイジさんの顔面をとらえている。ついに何も言わなくなってしまったハイジさんからカードを奪い取って背を向け、良崎=リーベルト・アンナは獅子でさえ殺してしまいそうな真っ赤な鬼の形相に歪めた顔をこちらに向けた。

 まさしく威風堂々。勝者の姿だ。


「待て、良崎=リーベルト・アンナ」


 急に糸で引っ張られたように良崎=リーベルト・アンナの動きが止まった。


「ハイジさん避けて!」


 水原さんが叫び終える前に、ハイジさんは良崎=リーベルト・アンナを指して言った。いや、正確には良崎=リーベルト・アンナの足元だ。


「お前は、畳の縁を踏んでいる」


 ゴゴゴゴゴゴゴ、という地鳴りのような不気味な音を体全体で感じる。その音に揺さぶられるかのように、ハイジさんもついに重い腰を上げた。血が滴る音が、妙な地鳴りの音に重なるようだ。




十、


「畳の縁を踏んだら……」


 ハイジさんの血まみれの顔面の奥の目が怪しく光り出すのと同時に、窓がビリビリと音を立てて振動を始めた。


「ハイジさん落ち着いてください!」


 あまりの怒り(なのかはよくわかんない)で水原さんの静止の声も全く聞こえていないようだ。しかし、その存在感がこの部屋を満たしていることは間違いない。あの良崎=リーベルト・アンナもハイジさんを警戒してか、半歩下がった。


「五分、正座だ!」


 ハイジさんの声と同時に部屋の中の茶碗や文具が一瞬飛び上がり、ポルターガイスト現象が発生した。ネルソンに続き、ハイジさんのこの畳の縁への執着は一体なんなのだろう。

 バキバキという何かが壊れる音が外から聞こえてきたので、『演劇サークル』の紙を剥がして窓から外を覗くと、サークル棟の向かいにある林の木が折れて何かの文字を形成し始めているようだ。


『団塊ボーイズ』


 日本語なのに本当に内容がミステリーなミステリーサークルを形成するところがハイジさんらしいというか、もうミステリーサークルくらいならおかしくないと思えてきているあたり、私ももうこの『演劇サークル』に順応し始めているのだろう。しかし、水原さんのように順応しすぎて常識がズレるのも嫌だ。


「五分正座で済むのなら!」


 良崎=リーベルト・アンナの怒声で振り向くと、良崎=リーベルト・アンナはハイジさんに挑戦状を叩きつける意味でか、地団駄を踏むように何度も畳の縁を踏みつけていた。


「踏んでやるわよ!」


 そう言い放ち、良崎=リーベルト・アンナはその場に正座した。背筋をピンと伸ばし、顔を真正面に向けたお手本のようななんとも美しい正座だ!

 赤く目を光らせたまま、ハイジさんは良崎=リーベルト・アンナにゆっくりと歩み寄る。あまりの存在感にハイジさんの周りで紫色の煙が渦を巻いているように見える。良崎=リーベルト・アンナは覚悟を決めたのかもう微動だにせず、お互いににらみ合ったままだ。

 ハイジさんの言葉に初めてしたがって正座した良崎=リーベルト・アンナ。初めて良崎=リーベルト・アンナに抵抗し、怒り(だと思う)を露わにしたハイジさん。お互いの意地と意地がぶつかり合う、良崎=リーベルト・アンナvsハイジさんの大一番だ。

 しかし、その勝負の幕切れは一瞬だった。

 先にハイジさんが膝から崩れ落ちたのだ。


「ハイジさーん!」


「ハイジさん?」


 私と水原さんの声が重なった。


「何してるんですか」


 バナナで釘を打てそうになるほど冷たい声で良崎=リーベルト・アンナ。


「んー? 膝枕。いやぁ、ここで膝枕に寝ないのは男が廃るでしょう」


 どうやら、ハイジさんは崩れ落ちたのではなく良崎=リーベルト・アンナの膝枕に頭を預けたらしい。あれだけの美女が近くで正座をしているのだから気持ちはわからないでもないが、その美女が類稀なる攻撃性と格闘センスを持っており、全く隠すことなく遠慮なく暴力として人に振るうとなれば話は別だ。


「ハイジさんのバカー!」


 水原さんが悲鳴にも似た声を上げた。


「はは、こりゃ極楽だね。あと4分正座な。ぎゃあああ」


 私には後ろからでも良崎=リーベルト・アンナが親指を立てた拳を高く掲げ、思い切り振りおろすのが見えた。


「目が……目がぁあああ」


 ハイジさんは弾かれたように飛び出し、右目を押さえてミミズのようにのた打ち回っている。良崎=リーベルト・アンナのあれだけ鋭く尖った手入れのされた爪で目つぶしをされたのだから、いよいよハイジさんも無事ではないだろう。


「いい加減にしてください!」


「お前……目はねぇよマジで……。めだま、あたま、きんたまの『3たま』は急所過ぎるから攻撃しちゃいけないって両親から教わらなかったのかよ……」


 『3たま』急所の一つ『あたま』にあれだけの攻撃を受けても笑っていられたのに、妙に真剣でなんとか絞り出すようなハイジさんの声が、特大の目つぶしのダメージの大きさを物語っている。


「今までわたしにやってきたことの数々を覚えていたら、当然の報いじゃないですか」


「でも目はないって……」


 どうやら、この良崎=リーベルト・アンナvsハイジさんのお互いの心身を消耗した大激戦も、ハイジさんがマジになってしまったということで真の決着のようだ。勝者は、超攻撃的ゴスロリ良崎=リーベルト・アンナ。

 良崎=リーベルト・アンナはちらりと左手首の腕時計を一瞥し、五分経ったことを検めて立ち上がった。


「サークルは別を探します」


 冷たくなって動かなくなってしまったハイジさん、恐怖のあまりに肝が冷えて動けない私。冷たい氷嚢をハイジさんの右目にあてがう水原さんに背を向け、返り血まみれの良崎=リーベルト・アンナは冷たい口調で言った。


「さよなら」




十一、


 ハイジさんの引き起こしたポルターガイスト現象で物が散乱して荒れた室内、そこここに染みこんだハイジさんの血痕、そして水原さんの懸命の処置の甲斐もなく未だに起き上がれないハイジさん。和室を拠点とするたった三人のサークルという、どこか牧歌的な印象さえあるはずの部室が一気に野戦病院と化している。


「絶対諦めねぇ」


 かすれた声で蚊が鳴くようにハイジさんが言った。


「ハイジさん、あの人はもう本当にないですって」


 私も恐怖で蚊の鳴くような声で反論する。


「俺に意見すんなクソ心中」


 目を氷嚢で抑えたままハイジさんは唾を飛ばして毒づいた。そして氷嚢をずらし、血走った左目を露わにさせた。


「水銀、電卓」


「はいただいま」


 座布団運びの山田君のような手際で水原さんは瓦礫の中から電卓をすっと取り出し、ハイジさんに渡した。


「いいか心中」


「その心中っていうのやめていただけますか」


「男には、いや、人間にはやらなきゃいけない時ってもんがあるんだよ。食欲、睡眠欲、性欲に従うこと」


「ハイジさん、膝枕ならわたしがしますから……」


 と水原さんが呟くが、今のハイジさんには右から左のようだ。


「それから、気に入ったやつが困ってる時は助けるってことだ。独善的でもな」


 ハイジさんは器用に左手でパチパチと電卓に何かを打ちこむ。


「クソ、よりによりだ」


 そして放り投げる。転がった電卓の液晶画面には『エンゲキブ』とある。


「曾根崎、お前は嫌なことから逃げるためなら人間やめられるか?」


「……」


 正直な話、私にはなぜそこまでハイジさんが良崎=リーベルト・アンナに固執するのかわからない。もう一生見つけられないような美形ではあったが、縁がなければそれまでだったと割り切れる。


「でも、良崎は」


「リーベルトの話じゃねぇ」


 逃げてはいけないと思うことから逃げることは、人間をやめること。これは私の持論ではなくハイジさんの持論だ。私がこれに従う必要はない。

 しかし、私は、逃げなかったのではないだろうか? この『演劇サークル』に入ると決め、ハイジさんに出鼻を挫かれながらも署名し、この『演劇サークル』の一員として幟まで担いだ。


「逃げないです。人間をやめるとかじゃなくて、僕は逃げないです」


 ハイジさんはニヤリと笑った。


「でも、やるべきことが間違ってるかどうかを考えるのをやめてまでも逃げないのはダメです。負け戦は避けるべきです」


「それはお前の持論だろ。俺の持論は独善的なんだ。そしてこの『演劇サークル』は俺のものだ」


「いえ、書面上はわたしのものです」


 水原さんが水を差すが、またハイジさんは無視をする。彼女なりに、良崎=リーベルト・アンナが入部することに対して抵抗があるのだろう。


「従え。わかったらさっさと部屋から出ろ。水銀もだ」


「え、わたしもですか?」


「俺の秘蔵の薬があるんだよ。秘密の場所に隠してあるからお前ら外出ろ」


「いえ、ダメです。ハイジさんは無理できる体ではありません!」


「安心しろ水銀。男にはな、やらなきゃいけない時があるんだよ。お城の化け物からお姫様を取り戻す時だ」


 水原さんは覚悟を決めたのか、目に涙を浮かべながら薄暗くなってきた扉の向こうに消えていったが、ハイジさんの「やらなきゃいけない時」は一体いくつあるのだろうか。一つや二つならまだカッコよく説得力もあるが、それがこういくつも出てくると子供の「一生のお願い」と同レベルではないか。ありがたみも重みも何もない。それは水原さんの涙にも言えることだ。

 しかし、私も窓に『演劇サークル』の紙を張り直し、水原さんに続く。悪い予感がするからだ。

 

「オー……ラァッ!!!」


 ズ、ダンッ!!!

 扉が閉まった数秒、ハイジさんの気合の籠った声の後、やっぱり思い切り畳を叩く音がした。




十二、


 ズッズッダンダンダンダン!

 ズッダンダダン、ダンダダンダン! ズッダンダダン、ダダンダダンダン! ズッダンダダン、ダンダダンダン! ズッダンダダン、ダンダダンダン! 

 腹の底まで響くようなドラムと、かき鳴らすようなギターに、音を縦横無尽に暴れさせるベース。まるで楽器を持ったチンピラ達が我武者羅に自分たちの行き場のない主張を音で叩きつけたような、粗削りなようで洗練されている音が余計に魂を駆り立てる!

 そしてハスキーボイスに乗って私の元へ、けだるさもハイもひきつれて言葉が飛び込んでくる。歌詞は英語らしく正確にはわからないが、割れるような歓声がその『凄み』の証拠だ。

 こんなチンケでやるせない日常を生きるボクらでさえも、ただ一心不乱になって叫んでしまう『本物のロック』が、この扉の向こうでハジケている! きっと、このギグは伝説になるだろう!


「ファミリアトゥザミリオンズ!」


 ※ファミリアトゥザミリオンズ‐OASISのライブアルバム


 日本語の発音での絶叫の後に、扉が内側から蝶番ごと蹴り飛ばされる。カチリ、カチリという固いもの同士が当たる足音。ハイジさん……か?


「ハイジさん……?」


 カチリ、カチリ。扉の敷居をまたいできたつま先は、スパイクだ。


「ハ、ハイジさん?」


「俺がハイジだ」


 淡い水色のシルエット。胸に刻まれた『ETIHAD AIRWAYS』の文字とエンブレム。そして半ズボン。


「……ユニフォーム?」


「Manchester City Football Club」


 さっきの謎の単語の発音と同じ人間とは思えない完璧な英語の発音でハイジさんが不敵な笑みを浮かべる。その顔には、先ほどまでの痛ましい傷跡は一つも観られない。思い切りつぶされたはずの右目さえも、くりっとした目が輝いてその先の風景をとらえている。ほ、本当に回復したのか!


「行くぞ、曾根崎」


 まだ日の早い春の夕闇に映えるマンチェスターシティのユニフォーム。


「み、水原さんは?」


「『俺が逃げてくれと思う時、お前は逃げていてくれ』とアイツには言ってある。お前は」


 ハイジさんは芝居がかった仕草で私を指さした。


「俺が誰かの力が欲しい、と思う時に俺の力になってくれ」


 俺が誰かの力が欲しい、と思う時に俺の力になってくれ。

 ここまで、私を信頼してくれた人間が果たしていただろうか。いつも誰かの金魚のフンだった小学生時代。周囲と少しずつ溝が出来始めてしまった中学生時代。人を見下して自分の殻に閉じこもった高校生時代。

 そして大学生時代。私は人との『心底』の付き合いを願った。そして、今この人は私に背中を預けてくれようとしている。


「喜むずぇ……」


 …………。


「喜んで!」


 なかったことにして言い直すと、ハイジさんは腰に手を当て、フリーキックを蹴るサッカー選手の如く首を何度か回し、その場で飛び跳ねたりと準備運動のようなことをしてまた不敵な笑みを浮かべた。

 バババババババババババ……

 瞬く間に状況が移り行き、今度はまた耳を塞ぎたくなるような爆音だった。

 ハイジさんはどこから取り出したかヘッドホンを自分に、もう一つを私の耳にかけた。

 スポットライトのような強烈な光を上空から浴びせられ、私は思わず目を細めた。


「いいタイミングぅ」


 サークル棟上空に、ヘリコプターがホバリングをしている。ローター音が爆音、サーチライトがスポットライトか。その光にも目が慣れてくると、ヘリコプターからワイヤーが垂れ下がっているのを私は認めた。


「ナイスネルソーン!」


 ヘッドホンからハイジさんの声が聞こえる。次の瞬間にはハイジさんに捕まれたままサークル棟の柵から飛び出していた。そして着地したのは……


「またこれですか!」


 『神輿戦車シェリダンM.G』!


「まぁ、大船に乗ったつもりで俺について来い!」


 ワイヤーが傾き、ヘリコプターが全進を始めた。強風にさらされ、ハイジさんは飛ばされないように帽子を抑えた。私は両手で『神輿戦車シェリダンM.G』の狛犬に抱きついてその手を放すことが出来ない。


「マンチェスターシティになんの恨みがあるんですか! とんだネガティブキャンペーンですよ!」


「俺ついさっきからドルトムントサポーターなんだよ!」


 マンチェスターシティ大迷惑――!


「高いところは苦手かー?」


「安全ならばー」


「高度を上げる前に飛び降りとくかー? 空から攻める方が楽ってだけで、お前は別に歩いてもいいんだぞー」


「すぐに飛び降りられるような環境は安全とは言えませーん!」


 ハイジさんの楽しそうな笑い声がヘッドホンを通して流れてくる。


「ふ、あはははははは!」


 もう一つの笑い声はネルソンか? いや、違う。私だ。私の笑い声だ。口を阿呆のように開けて大笑いしているから、こんなに喉が渇くのだ。


「よっこいしょっと。この間に装填しなおすか」


 ハイジさんがワイヤーを手から放してひょいと身を翻す軽業を披露し、鳥居の横に立った。それを避けようとした私は、ついワイヤーを放してしまい、虚空に放り出されてしまった。


「うわぁあああハイジさぁーーーん!!!」


 必死の叫びもむなしく、体が重力に従って『神輿戦車シェリダンM.G』からどんどん離れ、ジェットコースターに似た感覚と共に地面に近づいていく。




十三、


 恥ずかしながら、ヘリコプターに吊るされた機動御神輿から落下した恐怖で一瞬意識が飛んでしまったらしい。しかし、再び私が目を覚ますことが出来た、ということは。


「……サトウキビ?」


 力強くそそり立った茎に囲まれており、葉でところどころに擦り傷や切り傷が出来ているものの、私自身は強い痛みも感じず、無事なようだ。どうやらサトウキビがクッションとなり、落下の衝撃から身を守ってくれたらしい。

そうだ。まだ続いているんだ。私の人生は。そう、くれたんだ。サトウキビ畑のネルソンが、私に人生の延長戦を。

 私にまだサヨナラじゃない、と。

 体を起こし、ヘッドホンを探す。幸いにもまだ日が残っているおかげですぐに見つけることが出来た。ヘッドホン単体は見つかったが、何にも繋がない状態でハイジさんと音声を共有できるかは少し心配だったが、それはすぐに杞憂に終わった。


「曾根崎、曾根崎ィー!」


「聞こえてますハイジさん!」


「よかった、生きてたか。俺は今、いや、ヘリはまだ見えるか!?」


「そう簡単に見失えるものではありません!」


 3時の方向に輝くランプと、耳を突く爆音。LEDが煌びやかな『神輿戦車シェリダンM.G』の形に輝いているのも見える。


「曾根崎! 俺の力になってくれェー!」


「ヨロコンデー!」


 どこかの助っ人外国人ばりの大声で叫びながら、それを追う。


「こっちは敵新歓バーベキューに到着した! リーベルト発見!」


 目線を上空から真正面に向けると、サトウキビ畑の向こうに大学生のバーベキューの光景が見える。爆音に阻まれ音は聞こえず、風向きからか匂いは何もしないが、きっとあそこには良崎=リーベルト・アンナもいるのだろう。ヘリコプターに気付いたのか、バーベキューは慌ただしい異様な雰囲気を発している。


「空中でシェリダンを切り離す! お前は隠れてていい!」


 切り離す?

 再び上空に目を向けると、確かにワイヤーが『神輿戦車シェリダンM.G』からパージされて落下している。しかし、『神輿戦車シェリダンM.G』のキャタピラ部分の下が真っ赤に光ったと思うと、ジェットが噴出されて『神輿戦車シェリダンM.G』が再び浮き上がり、単体でホバリングしている。それを確認したのか、ヘリコプターはどこかへ向かって再発進したが、『神輿戦車シェリダンM.G』のホバリング音で未だに爆音は続いている。

 私はサトウキビをかき分け、走るスピードを上げる。バーベキュー場と私の間に一本のサトウキビもなくなった頃、ついに私も肉眼で良崎=リーベルト・アンナを確認した。大量の返り血を浴びて赤黒いゴスロリのファッションと、他の追随を許さない圧倒的な美貌。間違いない。しかしここは安全第一。私はハイジさんの言葉に甘えてサトウキビの陰の暗闇に身をひそめる。



十四、


「リィーィベルト!!!!」


 顔をしかめるほどのハイジさんの怒鳴り声がヘッドホンからやってくる。しかし、肝心の良崎=リーベルト・アンナはぽかんとした顔をしている。爆音で聞こえていないのだ。


「お前は服のセンスがねぇな! 服超だせぇ!」


 冷静に考えると、ホバリングした神輿戦車の上でマンチェスターシティのユニフォームを着て金田一の帽子を被りヘッドホンをしている方が何倍もヤバい。


「居場所がねぇから、寂しいから、人の目に留まりたくて派手な格好したのかもしれないがすげぇ空振ってるぞ! それじゃあ注目はされても人はお前自身を見ることが出来ない! そんな見られ方じゃ誰もお前の居場所にはなれやしない!」


 依然、良崎=リーベルト・アンナはじめ『演劇部』の面々には一言も聞こえていないようだ。ヘッドホン越しの私にしか聞こえていない。


「でも、お前はそうでもして自分の欲しいものを取りに行く強い心を持ってる! なりふり構わず、目標に我武者羅に進み続けようとする気高い向上心と貪欲さをな! 俺は、お前のそんなところが好きだー!」


 うわぁー。いいこと言ってるのになぁ。


「お前は、『お前に何がわかる』って言いたいかもしれない! 誰も信じられず気を許せず誰に何を話したらいいのかわからない環境で、手っ取り早く話のタネになるようなことをしてしまう気持ちもわかる! 特に、そんなダメダメの恰好でも少しも美貌を損ねないお前には下心で忍び寄ってくる輩も少なくないだろう! でも、『お前に何がわかる』って言える時点で、お前はその居場所がないことの痛みを知っているんだ!」


 本当に説得されてしまいそうなことを、


「演劇で誰かを演じても、お前は一生お前なんだ! それから逃げるな! 痛みから逃げるな! 克服しなきゃいけないんだ!」


 あのハイジさんが珍しく真面目に言っているのに。


「俺にはいくらでも居場所がある! サークルにも研究室にも家にでもどこにでもな! 確かに、今の俺にはお前の痛みを時間差なしに共有することはできないかもしれない! でも、いくらでも居場所がある俺だから、その居場所の一つぐらいお前に譲ってやる! 受け入れてやれる! だからお前も! 『演劇サークル』入れ! お前の望むものがある!」


 一言も聞こえていないんだもんなぁ。


「なんとか言えよこの野郎ー!!!」


 その声も、自分の所有兵器の爆音に全てかき消されてしまっている。なんという悲劇。

 その悲劇に追い打ちにをかけるように、先日の恨みからか『演劇部』の構成員が石を『神輿戦車シェリダンM.G』に投げつけた。石はハイジさんに当たりこそしなかったものの、『神輿戦車シェリダンM.G』の主力装備『スペースビーム鳥居』に命中、火花が走った後『スペースビーム鳥居』は爆発してしまった。ハイジさんには運よくかすり傷一つなかったものの、怒りは大いに買ったようだ。


「こんの、がすもくに埋まってるカブトムシの幼虫め! そんなに死にたきゃ口で言え!『神輿戦車シェリダンM.G』! オールウェポンセット!」


 賽銭箱が縦に回転、狛犬が横回転し、真正面を向く。神輿の屋根の両脇からも物騒な銃身が飛び出し、ジャイロで回転しながら狙いを的を探している。


「メガバスター、レーザーキャノン、ホーミューショット! オールウェポン・ファイアッ!」


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