五話の裏 中身
右も左も上も下も分からない真っ暗闇の中にいる。目を凝らすと、目の前にそのままパーティーに行けそうなくらい派手な格好の男が立っている。その男は自分と同じ顔をしている。
「お前は誰だ?」
彼は問いた。
「僕は君だよ」
男が言った。
「俺は俺だ。お前なんかじゃない」
「そうだ。君は君だ。僕じゃない。でも僕は君なんだ」
「なに言ってっかわかんねぇよ」
「そりゃそうだろう。君にとって初めてのことじゃないか」
「なんだお前は?」
「僕は君だよ」
「ふざけるな!」
「君のいけないところはその短気だね。僕は何も間違ったことは言ってないのに」
「俺は俺だと言っているんだ」
「そうだよ。君は君なんだよ。他の誰でもない」
「ならお前はなんだ?ここは一体なんだ?」
「何度も言うけど、僕は君だ。ここは君の中だよ」
いい加減話が進まないので認めることにした。
「なんで俺の中に俺がいるんだ?どうしてお前がいるんだ?」
「僕は君から産まれたんだ。ここは言ってしまえば胎内だ。僕の為のね」
「何言ってっかわかんねぇな」
「そりゃそうだろう。君には初めてのことじゃないか」
「じゃあよ、なんでお前は産まれたんだ?」
「君では咲を殺してしまうと思ってね。君の中の、君の意識が及ばないずっとずっと深くにいる君がね、僕を切り離したんだ。僕は君の良心だよ」
「じゃあ俺にはもう良心は残ってないのか?」
「咲を手に入れたら僕は君に戻るよ」
「つまりなんだ?」
「僕はしばらく君の代わりに君になる」
「その間俺はどうなるんだ?」
「大丈夫、乗っ取ったりはしないよ」
「なんの為にそうするんだ?お前に得があるのか?」
「あっはは!僕は君だよ?目的が一緒に決まってるじゃないか。理由なんていらないね。じゃ、変わってもらうよ?」
織本忠は目を覚ました。時計に目をやる。
「おっと!いけない。今日は一君が来るんだった」
織本の一人称間違ってて直すの面倒だから書いた。やることはいまいち変わんない。