俺の妹がこんな所にいるわけがないっ!
俺こと神裂悠真です。
今俺たちはなんやかんやで〈もう一つの並行世界〉という所にいます。
そこではよく解らんが災厄が訪れようとしているらしい。
うーむ……なんか勢いに流れつつあるよーな気がしてならんのだけど……。
まぁそれはいいんだ。
でもな、今の状況からしてなんかあるんじゃないかな~なんて思うんだけど―――
「えへへ~兄さん、驚いた?」
俺の目の前にいる黒髪ツインテールの少女、そして俺の妹―――神裂美空が年相応の笑みで俺(こっちの世界)の家のリビングの扉を開けて入ってきた時は、心臓から口が飛び出そうだったよ!
とまぁ今までの事を簡単にまとめてみたが、わかっただろうか。
「……今お前、なんて………?」
俺は実妹の口から出た言葉に戸惑いを覚えた。
俺の妹――美空はまだ中学2年生だ。学校は俺の通っている紅蓮学園の中等部で、魔法科。
俺の妹なのに兄である俺より魔法の技術が高い。俺としてはかなり複雑な心境なのだが……。
あともう一つ。
俺たち―――要するに神裂家。この家系は代々精霊使いをやっている。精霊とはいつも一緒にいるレスティアの事だ――といっても、皆が皆人の姿をしているとは限らない。人形の精霊は簡単に言ってしまえば上級精霊だ。
つまり、美空も精霊使いである――が、精霊との契約はまだ結んでいないためわ、まだ精霊がいない。
俺は言うまでもなくレスティアがいる。本当はもう1人精霊がいるのだが……。
とりあえずこの話は置いておいて。
そんな美空がなぜこの〈もう一つの並行世界〉にいるんだとか、俺たちがここにいることをさも知っいたかのような振る舞いをしているんだとか、いろいろと訊きたい事が山ほどあるがその中で一番気になったのが先程俺が訊いた事だ。
それは遡る事ほんの数秒。
俺たちが今後について会議的なものを行っていると突然部屋の扉が開かれ、美空が入ってきた訳だ。
最初はなにごとっ!て叫びそうになったよ?だってまさか妹がこんな異世界なんかにいると思う訳ないでしょ?
そして美空は入るなり突然耳を疑う事を言ったのだ。
「私は兄さんの正体を教えに来たんだよ?」
俺たちはその言葉に唖然としてしまった。
「ん?もう一回いうよ?―――私は兄さん――いや、兄さんたちに兄さんの本当の正体を教えに来たんだ」
いや、来たんだ。じゃないよ!
「一体どういう事だよ!」
「そうよ。どういう事か教えてくれないかしら。美空ちゃん」
俺に続いて紅莉が問う。なんとも不服そうな表情だ。
唯は黙って俺たちの会話に耳を傾けていた。唯だって訊きたい事ぐらいあるだろうに。
そんな俺たちを見回すと俺の左隣(右にはレスティアが俺に寄り添うように座っている。今まで黙ってたけど柔らかい物とかいろいろ当たってますからね!!)に腰を下ろし、思案顔のエレナに手招きする。
「なんです?」
小首を傾げつつも美空の元に駆け寄る。何を話すのか気になって顔を寄せようとしたが「兄さんには秘密だよ!!」という美空さんの声によりあえなく断念。
まあ、そう簡単には行かないって事はこの15年でこの神裂さんは学んでいますからね。
……とはいえ気になるものは気になる。
そんな人間特有のあれを遺憾無く発揮中の俺の服の袖をレスティアが相変わらずの無表情でちょんっと引っ張ってきた。
「んぅ?どうかしたか?」
「……マスター。お腹すいた」
「………」
おう……。珍しくシリアスな雰囲気をぶち壊しな台詞がレスティアの口から出ましたよ!Σ( ̄□ ̄;)
おっと。つい顔文字が出てしまった。
まあ、確かにそんな時間だ。
時計を見上げると、短針が真上を指していた。
なんか意識したら俺も腹減ったな…。
なに食べようかな?なんて今まで話していたこととは180度曲がった事で悶々としている間に先程まで行われていた秘密の会議が終わったらしく、エレナは美空から離れ、元の座っていた場所へ戻っていた。
「んで、何話してたんだ?」
何気無く思った事をそのまんま訊く。
「うん。これからのことだよ。とりあえず先にやらなきゃいけな―――――ッ!?」
「?どうしたんだ?」
突然美空は言葉をと止め、窓へと駆け寄り、外を睨むように見始めた。
「兄さん。―――さっそくだけど、まだ能力大丈夫?」
突然、そんなことを訊く。
だから咄嗟に、
「ああ。まだ大丈夫だと思う。しばらく使ってないからわからんけど」
そう答えた。
「わかった。じゃあ行こう―――あの災厄の元へ」
どういう事だろう?
そう訊こうと立ち上がろうとする前にエレナを連れて部屋を飛び出していってしまった。
「………ったく。よくわからんがみんな行くぞ
!」
恐らくみんなもさっぱりなんだろうけど俺の言葉をに頷き、部屋を出ていった。俺もそれに続いていった。
―――この時感じた違和感は一体なんだったのだろうか。この時の俺には、知る由もなかった。