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何でも屋  作者: ポテトバサー
第二章・よそでイチャつけ!!
19/56

マジかよ杉田君 (終)

[あらすじ]

 デートコースは決まったが、本当に女性受けするのかと、何でも屋は再び二手に分かれ、デートコースで立ち寄る場所の検証をするハメになったのであった。

 気の遠くなるような長い一日がようやく終わり、四人は何でも屋へと帰ってきた。


椎名「いやぁ、ご苦労様でした。それで、どうだった?」


修「そりゃもう、疲れましたよ…… 麻衣お姉さまには気を使うし、バカな(おとうと)には映画館で恥をかかされますし」


渡「面目ない……」


重「こっちは小春ちゃんに振り回されて大変だったよ……」


知哉「いやいやいや! 俺が一番大変だろ! 勝手の分からない八百屋で朝からずっと働いてたんだぞ!?」


重「でもさ、実家がお店で、しかも暗算とか得意なんだから、八百屋さんでもうまく働けたんじゃないの?」


知哉「…………すっごくうまく働けた。正直自分でも驚きだねあれは。小春の親父さんが舌巻いてたからな」


渡「じゃ、今日の結果をもとにしてデートコース完成させちゃおうか……」


 その後、何でも屋たちは再び話し合いして、納得のいくデートコースを完成させた。渡はすぐに杉田へ知らせてあげようと電話を掛けた。


渡「あ、もしもし。依頼のデートコースが完成したんですけど、詳細をですね……」


杉田『あの先輩!』


渡「はい?」


杉田『申し訳ないんですが、デートの日程が変わりまして明日ということになったんですけど……』


渡「明日!?」


杉田『大学で色々とありまして、まるまる一日時間が取れるのは明日なんです……』


渡「えーっと、それでは…… 明日の朝、駅前の広場に来ていただけますか? そこで詳細を説明いたしますので…… はい、それでは、失礼いたします」


修「よう、どうした?」


渡「急きょ明日に変更になった」


椎名「デートが?」


渡「えぇ。いやぁ、今日中に決めておいてよかった」


修「そうだな」


知哉「なぁ、明日は休みなんだし、皆でついていこうぜ?」


修「趣味わるくねぇか?」


重「でも、こんだけ苦労して、しかも赤字なんだから、デートが成功するかどうかは気になるよ」


椎名「僕も気になるねぇ」


渡「じゃあ、とりあえず皆で行ってみるか……」


 翌日。何でも屋一同は駅前の広場で杉田の事を待っていた。


渡「もうそろそろ来るかな?」


重「やっと? 修が早くしたほうがいいなんて言うから、だいぶ待っちゃったよ……」


修「依頼人との待ち合わせに遅れるなんて出来ないだろ!?」


重「それにしたって早すぎでしょうよ?」


知哉「朝からうるせぇよ。ほら、杉田君が来たぞ?」


 知哉の指さす方向に他の四人が視線を移すと、何でも屋たちに気づいた杉田が小走りをして何でも屋たちに向かっていた。


杉田「いやー、お待たせしちゃいまして……」


 少しだけ息を切らした杉田は笑顔で言った。しかし、何でも屋たちの表情は硬く、黙ったままだった。


杉田「あれ、皆さんどうしました?」


渡「どうしましたって…… そのワンちゃんは何!?」


 杉田の右手にはリードが握られ、そのリードの先には当然ことながら犬がいた。


杉田「あれ? 言ってませんでしたっけ?」


 すっとんきょうな杉田に修はたまらず口を開いた。


修「言ってねぇって! どうすんだよ杉田君、俺たちが作ったデートコースのほとんどの場所はペット禁止だぜ!?」


杉田「えぇっ!?」


修「えぇっ、じゃないんだよ杉田君!」


杉田「困りましたねぇ… どうするリーナ?」


 修は『二度見』の見本となるような動きを見せた。


修「あぁ?」


 杉田はしゃがんで犬の頭をなでる。嫌な予感しかしない何でも屋たち。


修「ちょっと杉田君? もしかして、その犬……」


杉田「えぇ、クライナー・ミュンスターレンダーです」


修「ちが‥ 犬種の話じゃねぇよ! 今リーナって言ったろ!」


杉田「あれ、言いませんでしたっけ?」


修「言ってねぇよ! あっ、ちが…… リーナとは言ったよ! そうじゃなくて彼女ってそのワンちゃんのことか!?」


杉田「えぇ、そうです。僕、いま親戚の家にホームステイしてるんですけど、リーナはそこで飼われてるんですよ」


一同『……………………………』


 何でも屋たちは黙って杉田のことを見つめ続ける。


杉田「おじさんとおばさんには娘さんがいるんですけど、今はドイツで働いているんですよ。それで、両親にもなかなか会えなくなるので、寂しくならないようにドイツの犬種のクライナー・ミュンスターレンダーをブリーダーから譲り受けたらしいんですよ」


 何でも屋の態度にお構いなくしゃべり続ける杉田。


杉田「それで、僕も日本人ですがアメリカ生まれアメリカ育ちなので、やっぱりホームシックになってしまいまして。そんなとき、リーナが元気づけてくれたんですよ。犬は人の気持ちを読み取るなんていうじゃないですか、家にいるといつもそばに居てくれるんです」


渡「………な、なるほどねぇ」


杉田「ですから、リーナに何かお返ししてあげ‥」


修「ようかなってデートコースを?」


杉田「はい!」


 屈託のない笑顔。杉田実。留学生。犬の名前、リーナ。


修「なーんだ、そういう事だったのかぁ、あはははは…… この野郎!」


 修は杉田の胸ぐらを掴むと揺らし続ける。


修「このこのこのこのこのっ!」


杉田「うわっ! ちょっと、どうしたんですか!?」


渡「ま、まぁ修、落ち着いて落ち着いて」


修「落ち着けって、最初から犬って言ってくれてりゃ、あんな思いしなくて済んだんだ!」


 文句を言っている修の頭の中に、麻衣との壮絶なデートの場面が巡る。


椎名「しょうがないよ修君。杉田君も別に悪気があったわけじゃないんだし、ちょっと、こう…… すれ違っちゃっただけだよ」


修「なんだとピエロ! 実際に反応見てさぁー、なんていうから余計にひどい目に遭ったんだぞ!」


椎名「えっ!? い、いや、でも、渡君が‥」


重「あ、それはそうですよ! 教授さんが詳しい話も聞かないで、お気楽に依頼を受けるから‥」


渡「仕方ないだろ! 杉田君は講義で帰らなきゃいけなかったんだから!」


知哉「つーかよぉ修、杉田君を大学まで送る間に何も聞かなかったのかよ?」


渡「そうだ! そのとき何の話をしてたんだよ!」


修「………ア、アメフト?」


渡「ア、アメフト? じゃないんだよ! またアメフトの話をしてたのか!」


修「うるせぇなぁ! 日本じゃあんまりアメフトの話をしてくれる人がいないんだよ! そんなとこにアメリカ人、しかも日本語がペラペラのアメリカ人が来たらアメフトの話するだろ!」


重「はぁー、情けない! 仕事の話をしなさいよ! そこで彼女の正体が犬ってわかってたらゲロを吐かずに済んだんだ!」


修「なにぃ!」


椎名「まぁまぁ、ちょっとみんな落ち着いてよ? 忙しい杉田君の貴重な休日なんだからさぁ。ねっ?」


修「……まぁ、確かに」


渡「……じゃあ、杉田君とリーナのリフレッシュ出来るところに行きますか?」


修「そうだな。それでいいかい杉田君?」


杉田「近くにあるんですか!?」


修「あぁ、あるよ。リーナちゃんも楽しめるところが」


杉田「本当ですか! よかったなリーナ」


 杉田がリーナに話しかけると、リーナはその場で二度三度回ると、横になって腹を見せた。


重「おっ、杉田君これは?」


杉田「お腹を撫でてほしいんですよ」


修「ったく可愛いやつだなぁ」


椎名「本当だねぇ」


 椎名と修は二人してリーナを撫でてやる。


知哉「よーし、それじゃ江戸川沿いの『プレイランド』だな。ドッグランもあるし、たしかトリミング? ってのもあったし」


修「よし、プレイランドに行くなら、そのトリミングやってる間は男だけのフラグフットボールだな! 女子がいないんじゃどうしようもないし」


杉田「アメフトはきついですけど、フラグフットボールは得意なんですよ僕!」


渡「そうと決まったら早速行こうか」


 苦労した赤字調査は無駄になった。が、その後、リーナはドッグランで楽しそうに走り回り、トリミングをしてもらったあと、ペットマッサージなるものまで受けてリフレッシュをしていた。その間、男どもは全身全霊でフラグフットボールに興じて、ストレスを発散させるのであった。

[次回予告]

何でも屋の事務所に突如あらわれた謎の人物。

ヘンテコ極まりない格好をした謎の人物の依頼、それは

「UFO研究の手伝い」だった。面倒に巻き込まれるのは火を見るより明らかだったが、

何でも屋たちは依頼を受けることに……

次回:第3章「さよなら未確認」。

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