敗北 死と精神と解放
一応今回残酷|(と思われる描写)が含まれます。
苦手な方は下をみずにスキップで。
結論から言うならば、二人はかなり善戦したといえよう。
ジャイアントを相手に怯みもせず、コウが喉笛に喰らいついて息の根を止めたのだから。
――はじめの一人までは。
何処から湧いたのか、何処かに隠れていたのか、一人、二人、と参戦してきたのだ。
ツバサがジャイアントの身体に登って渾身の一撃を与え、コウが出来た隙を突いて確実にダメージを与えていく。
だが、大きさの差は覆しがたく、2対1の形となったコウは取り押さえられてしまう。
必死にもがいてもびくともせず、振りかぶられたジャイアントの鉈が、ギロチンのようにドラゴンの首を刎ねた。村人の悲鳴が聞こえる。
振り向いたツバサも動きを止めてしまい、ジャイアントに払い落とされる。
ツバサを叩き潰すかのようにジャイアントの平手が振り下ろされた。
地面に叩き付けられた衝撃に震える腕を伸ばし、落ちていたマントを拾い上げて、小さく呟いた
「……僕は、負けない。コウと一緒なら!!」
直後、平手を叩きつけられた大地が悲鳴を上げるように振動した。
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何処が上で何処が下か、そんなこともわからないところ。
これはきっと精神の世界。今度こそ僕は死んだのだろうか。
もっと、力が欲しかった……誰にも負けない力が
コウに守られてばかりの不甲斐ない自分が、コウを守れるだけの力が。
歯を食いしばって頭を振ると、何処かから声が響いてくる事に気づく。
「選ばれたものよ」
選ばれた者、つまり、人に忌み子と呼ばれ疎まれた者達。
――『古代の神々の持つ武具が精霊化した者』……『ドラゴン』の鱗と同じ色の瞳を持った者。
自分が持つべき武具と心を通わせた者だけがその武器を振るう事が出来る
ナツが、僕が、コウが懐かしいと言った曲は武具を使うための歌唱詠唱。
少しだけ表に出始めた力が忌み子に教える、ドラゴンが武具としての時代を懐かしむ契約の歌。
何度も僕はコウに歌って聞かせていた。無意識のうちの契約。
コウが首を捻った僕の「人間にしては異常な怪力」は、契約が進んだことによる力の解放。
言うなれば僕とコウは――
「君は君の鍵を手に入れた。君を解放し敵を滅ぼす強大な力を授けよう」
「……滅ぼす力なんていらない」
「力はいらないんだ?力が欲しかったんじゃないの?なら何を望むのさ」
「滅ぼす『だけ』の力なら最初から僕達は持っていた。
それを使わなかったのは、いつだって守る為に力を使ってきたからだ。
だから、守りたいものも壊し、滅ぼす力なんていらない。欲しいのは守る為の力だ」
「ふふっ、ツバサならそういうと思ったぜ。」
「強き力は時に己をも滅ぼす、君らはちゃんとそれを理解しているんだね」
「当たり前だろ?さぁ、行こうぜツバサ。」
「いこう、やられっぱなしじゃ終われない」
「虹は見えども捕らえられぬ、無敵の守護。ここからが俺達の舞台だ!」
そして視界が、光に包まれた。