療養中 家族と詫びと意識の底
「…………ということがあったのさ」
「あぁそっかー、なんていうとおもったか?」
対面に座ったドヤ顔の九十九種金龍をひっ捕まえてヘッドロックをかけるコウ兄さん。
「いだ、いだだっ!痛いってコウちゃん!!」
「知るか、勝手にいなくなったと思ったらいきなり出てきて『実は傍にいたんだよ、てへ』みたいなこと言われたらそりゃ誰だって怒るわ」
あっしはその騒がしさに頭を振ってベッドから騒ぐ二人を見る、まだ頭がはっきりしないっすね…。
「目を覚ましたかえ?ユカリ」
「クロ姉さん……ここどこっすか?」
「ここはコタロウの住んでおる村じゃ、リョク達がおぬしを背負って帰ってきたときは心臓が止まるかと思ったのじゃぞ」
あまり心配さけるでない、と安堵したようにぎゅっと抱きしめてくるクロ姉さん、心配かけちゃったみたいっすね。流石に飛龍相手とはいえ油断しすぎたっす。軽く部屋を見回し彼らの姿がないことに気づく。…ツバサ達はどこっすか?
「ツバサは概念毒の傷が酷かったのじゃ、サキを背負って帰ってきたときには血塗れで意識も飛んでおったからの」
「そう…っすか」
「気にするな、とは言いません。ですがツバサはきっと貴方を責めないでしょう。だから必要以上に気にするほうが心配をかけますよ」
そういって暖かい紅茶を持ってきてくれたハク姉さん、とても甘いそれは気を失っている間に冷えた体をじんわりと温めてくれた。…でも今回ツバサが死にかけたのはあっしが油断して飛龍にやられたせいっす、あっしを気にしなければリョクを使って殲滅するなりハク姉さんを使って蹴散らすなりできたっすよ
「貴方が何を考えてるかなんて私にはわかりませんが、呼ばれといて結局初め以外何の役にも立ってない人だっているんですからね?」
ハク姉さん、顔が怖いっす!でもあれは絶体絶命なのを救ったナイスな登場だったと思うっすよ?
『きゃー!?空を見て!!』
「もしお主を気にしなければ、等と考えておるのならわしも本気で怒るぞい?」
「ツバサなら手段を選ばなければ私の力で皆殺しにできましたよ。相手の周囲の空気全てを固めればそれで終わり。時間さえあれば一方的な殲滅です」
『うわっ!!なんでこんなところに?!皆、避難しろー!!』
「そんなこと、ツバサがするわけないじゃないっすか。虐殺がしたいんじゃないっすよ、まがった性根を殴って修正してやるのがツバサっす」
「えぇ、だから」
「殺す事、力を振るう事を一番に置かないツバサじゃからこそ、わし等も、最強の盾も奴についていくんじゃろ?」
その時、姉さん達は二人して微笑んで頭を撫でてくれたっす。……やっぱりちゃんと相手を見てる「家族」っていうのはいいものっすね。
『飛龍がきたぞー!!』
…それにしてもさっきから表がきゃーきゃー騒がしくなってきたっすね?
「飛龍じゃと?」
「はて、あの状況でここに襲撃できるほど無事な者がいるんでしょうか?」+
と首をかしげているとサキが扉を開いて駆け込んできた。息を切らせてるっすけどそんなに焦る事でもあったんっすかね?さっきまでバタバタしてた兄さん達も何事かとよってくる。
「皆さん、フレアさんが面会を求めてます!」
「飛龍王が?なんでまたそんなことを」
「まぁ、一度会ってみるといいんじゃないかな?たぶん今僕らに必要なものが手にはいるよ」
「それは勘か?それとも『能力』か」
「勘だけどはずれないよ。だってそうじゃないとフレアが来る意味がないもの」
まぁたしかにあのちっこい飛龍達ならともかくあのフレアが逆恨みして寝込んだツバサを襲いに来るなんておかしいっすからね。でもいったい何を手に入れるのやら、っす。
●
村の広場で待っていたフレアが、走ってきた僕達に気づくとなんと地面につかんばかりに頭を下げた。
「待て待て待て、フレア仮にも飛龍の王がいきなり頭を下げるな。今以上に俺達とか、他の奴らから軽くみられるぞ」
「構わん、簡単に頭をさげる腰抜けと言われる程度何も思わんわ」
その姿を見たコウが慌てて頭を上げさせるが、フレアの顔に浮かぶのは苦笑だった。フレアは翼をたたみ、敵意の欠片も見られなかったがこれだけは譲れないという強い信念の光が籠った目をしていた。そういわれても俺が気になるんだよなー…、ってコウちゃん、そんな事いわないの。変わってツバサを治療していたリョクがフレアの前に立つ。困ったように曖昧に笑って
「僕ら、飛龍、あんまり、好きじゃない。でも、フレア、他の飛龍、違う。簡単に、頭下げる、ダメ」
「リョク…といったか。その評価には礼をいう。しかし分かっておくれ、負けを認めぬ愚者と言われるのは耐えられんのだよ」
「別に僕ら言いふらす気はないんだけどねー?でも別に言いふらされるかもーって思ってここに来たんじゃないでしょ?」
「無論だ金龍殿。確かに全員が降参か死亡で負けだといった勝負に容姿のよく似た替え玉が乱入しておった。わしが倒れた時点でお主らは勝ちだった」
清々しいほど潔く負けを認めるフレアの言に、ハクオウがなるほど、と呟けば、ユカリが言わなければ気付かなかったことっすよね?と首をかしげる。
きっと、気づくはずがなくとも乱入者がいた、つまり元々3対3ではなかったと言いたいのだろう。なんとも、律義な人(?)だねこりゃ。
「うちの小童がいらぬ迷惑をかけた。あれもわしを思っての事というのはわかるがやり方が悪かった。何か此度の詫びに必要なものはないか?」
「ならツバサに食らいついたワイバーンを連れてくるのじゃ」
今まで黙って見ていたクロガネがフレアに指を突き付け、有無を言わせない覇気を纏いながらそれだけ言い放つ。何を言い出すのかと咎めようとしたユカリやシロガネもクロガネに睨まれた途端に金縛りにあったように動きを止める。リョクとコウは振り返ろうともしない。二人はクロガネの目的が分かってるみたいだね。治療に立った本人と長年連れ添った相手ならそれも当然かな?
「あいつを連れて来いと……理由を聞かせてもらえんか」
「おぬしが詫びに必要なものはないか、と言ったのじゃ。だからツバサに毒を流し込んだ張本人を連れてこい、そういっておる。…まさかぬしが詫びただけで済むと、そんなことを考えておるまいな?
わしらの家族を奪われかけた恨み、例え王であろうと代わりの者が頭を下げて済ませようとは片腹痛い!!その非礼も含め、詫びとしてそやつを差し出せ、それで今回は手打ちじゃ」
広場どころか周辺の家々まで震わせるような大声でフレアを一喝するクロガネを止めるものは誰もいなかった。止めようとした二人は未だ身動きできず、残りは止める必要がないことが分かっている。…んだけどクロちゃん?連れてこいから差し出せになってるよ?
「…非礼を重ねて悪いがあれもわしの家族の一人。それを奪うというならばそれなりに覚悟してもらおうぞ」
「戯けが。わしは首を持ってこいとも、殺せとも、言うておらん。おぬしが頭を下げても毒を使った張本人を連れてこんとツバサの傷が治らんと言っておるのじゃ」
「…………は?」
毒気と一緒に間も抜かれたフレアの様子にリョクとコウが肩を震わせて笑いをこらえていた。こらこら、笑っちゃ失礼でしょ。
「す、すまんフレア、くっ、くくくっ…。クロガネもちょっと言葉が足りなかったな」
「あ…あぁ、わしも早合点しておった。毒の治療の為なら急ぎ連れてこよう」
●
光も届かない水の底、そう言い表すのが妥当だろう場所で僕は漂っていた。
また誰かが僕を呼ぶ。ねぇ、どうせ呼ぶならこの手を引いて君の前へ連れて行ってよ。
え?それはできないから自分で来い?…けち。
しかたない、なら誰がよんでるのか確かめてこよう。そう決めた僕は漂うことをやめ、声に向かって泳ぎ始めた。
コ「あぁもう、何が何やら」
ク「大丈夫じゃ、筆者も混乱しておる」
リ「だめ、じゃん…。サキ、なんで、フレア、さん付け?」
ユ「ツバサが起きた時に纏めるらしいっすけどいつになるやら、っす」




