予告2 青と賞品とトーナメント
ここは魔界のとある国、ある意味で特別な都市だ。と言うのも魔界に点在する都市は魔物と人間の交流が少なく、どうしても種族間の壁が目立つ部分がある。だがこの都市では人間と魔物はもちろん混血の子供でも受け入れられているという極めて稀な場所なのだ。
この都市には暫定的に国王と言われる長がいる。ざっくり言うと纏め役と魔王への繋ぎ程度の仕事だが。そして場面は国王の宝物庫へと移る。宝物庫をうろつく二人の男、別に彼らは怪しいものではない。今度開かれるトーナメントの優勝賞品を取りに来るよう命じられた、宝物庫担当の警備兵なのである。
「しかし、今度のトーナメントは誰が優勝するんだろうな?」
「さてな、俺はここから今回の賞品を引きずり出せば帰って良いって言われてるし興味ない。家族が待ってるしな」
「はいはい、マイホームパパな事で」
「それよりも気になるのはこの賞品の方じゃないか?こんな刀身が蒼いだけのナイフ、何の意味があるんだよ」
「国王が選んだんだから仕方ないだろ、なんでも魔王様が『こんな所にあったのかよ、譲ってもらうわけにはいかないよな』っていって今回の賞品としてだす事になったんだから」
「魔王が最強なんだから参加して堂々と持っていって欲しいってことか」
警備兵は首を傾げながら優勝賞品を宝物庫から運び出す。このあと、このナイフを巡ってトーナメントに旋風が巻き起こるのだがこの時は誰も予想できなかった。
そのナイフが九十九種ドラゴンであることはおろか、持った者を操る力があることすら知らないこの国では当然と言えば当然である。しかしアリアの耳に入った以上、ツバサ達の耳に届く日もそう遠くは無いだろう。
……あの魔王が素直にこの都市にあった、なんて教えるとは思いがたいが。