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虹と翼と  作者: 零式章
2-?一時の平和 
37/52

ドラゴン会議 天使と人形と忌み子の生まれ

●黒月村にて


ユカリの契約時に身体に負荷が掛かったのか絶叫し膝を付いたツバサ。心配性なコウがゆっくり帰ろうと馬車を使う事を提案し、一行が黒月村(初めの村)に帰りついたのはサファイアドラゴンを倒してから5日後のことだった。

そして夜、ツバサはリョクの背に乗って帰る道中はしゃぎすぎたのか既に自分の部屋に戻り、ドラゴン達が残された。


「それにしてもツバサの頑丈さには呆れるしかないっすね、ホントならあっし達の契約は2つでも厳しいんっすよ?」

「人ならって注釈がつくけどな。ツバサの頑丈さは人間の枠を飛び越えてるから」

「コウの、契約者、皆、頑丈に、なる?」

「怪力になることはあったのじゃがあくまで人間の枠内……ここまで顕著な怪力と強度の変化は見たこと無いのじゃ」

「ツバサ、混じってる血、問題なのかも?ヴァンパイア、スプリガン……」

「かもしれない、本来頑丈さは金龍の領域なんだが魔物の血が代わりを担ってるのかもな」


そう応えながらもコウは考えていた。いくつもの契約に耐えうるだけの素質、頑丈さ、ドラゴンとの相性のよさ、まるでドラゴンを集めて『恐ろしい力を持つ何か』を作る為に生み出された様なツバサ。昔神種族の研究員てんし達が神種族の犠牲を恐れ、量産計画の練られた『天使の血から生まれるホムンクルス(にんぎょう)』に酷似した特性を持っている彼。だが天使達の実験は一度も成功せず、『人形』は人にすらなることなく死んでしまう儚い存在で全て廃棄処分されたはずなのだ。


「そういえば昔、天使、人間に、ドラゴン、使わせようとして、『人形』の核、移植したって」

「あっしもそれは聞いたことあるっすけど……拒絶反応が酷くて使い物にならなかったらしいっすよ?」

「たとえ使いものになったとしても人間の脆さから3度ドラゴンを使うだけで身体が耐えられん者ばかりじゃった」


クロガネはその光景を思い出したのか、陰鬱な表情で膝を抱えて蹲ってしまう。慰めるように撫でながらコウはふと、取説の白紙部分を開く。神種族は人間を実験動物のように扱っていた、なら何故神種族の血が混じる人間、忌み子が生まれたのかと言う疑問が湧いたのだ。ツバサに関しての情報は出なかったが忌み子の発端についてなら……何処かに無いかとページをまくり続け、最後のページに目的のものを見つける。


「3度しか使えない人間が子をなすことで神種族の遺伝子を内包した血筋が生まれ、ゆっくりと順応していった、だがやはり人間の血が濃く10回以上ドラゴンを振るえた者はいない。そんな中で先祖返りの様に神種族の血が色濃く出た者、契約に完全な耐性を持つ人間が現れた。それが神人……今の忌み子と呼ばれる存在である、か」

「つまり忌み子は意図せずして生まれた実験の副産物、と言う事かえ?」

「そう言う事だ。金龍ひーちゃんがいないのが痛いな、あいつに直接聞けばツバサの頑丈さも解ると思うんだが」

「ツバサ、聞いて、みたら?九十九種、ドラゴン、武装か装飾品、でしょ?」

「ぁーひーちゃんだけは特別なんだ、あいつが元の姿でいたら一発でわかるし」

「金龍だけいつも特別ってきくっすけどどういう事なんっす?それに、取説に金龍の居場所は出ないんっすか?」


手を上げて質問するユカリにあるページを開いて見せる。そこには簡潔に『灯台下暗し』の文字。

コレではさすがにわからないだろ?と苦笑して取説を閉じた。


「俺達が武器や装飾品、加工された人工物が核であるのに対し、ひーちゃんは天然種ドラゴンの「「「九十九種じゃ(ないのかえ・ないんすか・ないの)!?」」」…言葉の途中で突っ込むな。金龍の屍骸を核に生まれた九十九種だ」

「あっしらのように武装は出来ないって事っすか?」

「いや、ひーちゃんは義肢の形態をとって使われるんだ。ツバサの体を見たときは特にそれらしき跡はなかったからツバサが持ってるわけでもなさそうだし……ひーちゃんが化けてるって可能性もない、ドラゴンはドラゴンを使っても契約効果は現れないからな」

「接合部が滑らか過ぎて、ということはないのじゃろうな?」

「無いな、傷跡は龍の涙で消えちまったから何処にも傷跡すらない、それにあいつが今まで喋らないわけがない」

「ひーちゃんも、気になる、けど、あとの2人も、早めに、見つけないと」


リョクが言う二人、セイロウとアカトラの行方は現状魔界にいるとしか手がかりがない。ドラゴン達の本当のオリジナル、ある意味俺達の親ともいえるひーちゃんは人間界に「心配性な息子に顔を見せに行った」とシロガネから聞かされた。

そうこうしてるうちに考えるより行動派なクロガネがこれ以上は無理だと諦め、不貞腐れたように頬杖をつく。


「呆れるほどにわからんことだらけじゃな。ひーちゃんの行方、赤と青のドラゴンの行方、ツバサの謎、肝心なときに取説も役立たずなのじゃ」

「もしかして金龍の息子ってツバサじゃ、ないっすかね」

「ツバサ、金龍の関係者、なら、頑丈でも、おかしくない。人間でもあるから、ドラゴンの契約効果、でる」

「まぁ正解だったらこいつも諦めて記述してくれるだろうが……」


開いたページには「二人に血縁関係はない」という簡単な回答が書かれているだけだった。……いや、うっすらと続きがある。

――「あたらずとも遠からず。ツバサはたしかに金龍の関係者である」


「…今はこれだけ分かれば上出来か。アカトラとセイロウはアリアにでも聞いてみればいいだろ」

「なら今日のところはもう寝ておくがいい、リョクとユカリはツバサの部屋じゃ」

「「それじゃ、おやすみ(っす)」」


コウとクロガネは微笑んで年少組を見送り、自分達もベッドに入った。明日はまた少し忙しいことになりそうだ、と笑って部屋の電気を消す。

「そういえばツバサと出会って10年たつが、あんまり成長してねぇな」というコウの呟きは夜の空に吸い込まれていった。

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