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虹と翼と  作者: 零式章
2-3 紫龍 ユカリ
34/52

蒼龍討伐後編 リョクと祝福と防衛線

●村side


村長宅のハクオウが療養している部屋、リョクが何かに気づいたのか読んでいた本を閉じて雪山を見やる。


「どうかしましたか?」

「前言撤回、一日も掛からず、こっち向かってきた」

「向かってきたって……何がです?」

「サファイアドラゴン。走って、きてる、かな。コウ達とも、違う、感じ」

「じゃあ君の仲間はやら」

「あいつが逃げただけ!!」


顔を青くするハクオウの言葉を遮り机を叩いた。震える腕を上げてモノクルを掛け直し、彼女を睨む。何処か鬼気迫るリョクの迫力に気圧されて思わず退きベッドから落ちそうになった。


「え?」

「ツバサ達、負ける、ない。きっと、眼眩ましで、逃げた」


怒気を振りまきつつ扉を蹴破って外へ飛び出したリョクをハクオウは見送るしか出来なかった。



そして対峙する九十九(リョク)天然(ぬし)。ボロボロといえ一片たりとも気迫の衰えないドラゴンと、それに負けず劣らずの怒気を放つ小さな少年。吹雪すら止んだ静寂の中、先に口を開いたのはリョクだった。


「ツバサ達、どうした?」

「わしがここにおるのが答えになるであろ?」

「逃げたのか、ドラゴンの癖に」

「そう現実逃避をするのは小僧の勝手だがな、村の前にわしがいてあやつらがおらんのは事実」

「確かに、ツバサ達、いない。でも、僕がいる。……お前の好きにはさせない」

「やれるものなら、なぁ!!」


ドラゴンの撃ち出した氷のブレスが高速で飛来する中、リョクはつまらなそうに溜息をつくばかりだった。


●雪山side


―――クロガネに手を引かれつつ村を目指して疾走中の4人。


「急がねば、村が危ないのじゃ」

「村より先にリョクが心配っすよ!!」

「あぁー……悪いがあいつにそんな心配は必要ないぞ」

「さっきも村とドラゴンが心配だって言ってたけどどういうことなの?」


喚くユカリを一瞥してコウに視線をやる、九十九種ドラゴンに関しては呆れるほど心配性な彼が平然としているのだから問題は無さそうだがその理由がわからないとツバサ達も安心できない。


「まずはブレスの説明からじゃな、コウ」

「天然種のブレスは呪詛をこめて撃つ直接的な攻撃だが、俺達のブレスは破壊力はもたず何かを祝福して強化するんだ」

「あっしらを作ったのはもどきとはいえ神っすから、祝福効果も"一応"あるんっすよね」


コウが何処かから紙とペンを取り出し、箇条書きで九十九種のブレスを書き出した。

コウ『全ての害を打ち払う剣』武器に3時間あらゆる魔法と呪詛を祓う祝福をかける、一日一度のみ。

クロガネ『障壁を叩き割る拳』祝福した次の一撃だけあらゆる障壁を無条件で破壊する、一日一度のみ。

ユカリ『重力の帯』祝福された物体をぶつけることで対象の両手両足を重力で拘束する。

シロガネ『魔法服従弾』対象の魔法に祝福された銃弾を撃ち込む事で魔法の制御を奪い取る。

※ブレスは魔法の使えない一般人にもかけられる。


「十分過ぎるくらい反則なのはわかったけど、肝心のリョクのブレスは?」


ツバサの問いにクロガネは眼を細め、弟分のブレスが使われた光景を思い出す。ブレスだけで言うなら恐らく最強といえる彼のブレスはできるなら使うべきではないものであった。


「自分と相手がいる空間に魔力が満ち溢れていること前提じゃが……」

「『簒奪者の光刃』周囲の魔力を根こそぎ奪って放つレーザーみたいなもんだな。集中力によっては魔法耐性持ってても瞬間的に消滅させられる出鱈目な一撃だ」

「つまり食らえばジュッってことだね、というか魔砲?」

「表現はあれじゃが間違ってはおらんの」

「魔力増幅に目がいきがちっすけどそんな隠し玉までもってたんっすね、リョク」

「当然、そんなもん村で使ったらとんでもないことになる」

「無茶して無いといいけど……」


4人が村のほうへ向き直って見たのは、光の柱が暗雲を貫いて地上に降る光景だった。


「「「「あぁ、やっちゃった」」」」


●村side


舞台は戻って村の入り口、時はリョクが主のブレスを弾いた時まで撒き戻る。


「貴様もあのトカゲもどきと同じ技を使うか、忌々しい」

「馬鹿、言わないで、コウみたいな、呪詛払い、出来るわけ、ない」

「事実弾いたでは無いか!!」


つまらなそうに言う彼にイラついた声で叫び、今度は焔のブレスを浴びせかける。爆発的に膨れ上がる炎は吹き荒れる竜巻のようにリョクを取り囲み天高くまで巻き上がった。だが竜巻の中心にいる少年は眉一つ動かさずに平然としている。


「小賢しいマネをする、直撃はしておらんのだろ?」

「当然、この手の攻撃、効くわけが無い」


普通の防壁では最初の呪詛のブレスで叩き割られていただろう、喩えソレを耐えても続く焔のブレスでやけ死んでいただろう。しかし、リョクに言わせて見ればブレスなんて結局魔力で生み出された暴風に呪詛や炎などの付加魔法を足しただけの『魔力の流れ』でしかない。魔力の流れであるなら自らの能力で捕まえてしまえば後は意のままに操れる。


「僕、倒したいなら、もっと、強いブレス、じゃないと」

「今日はドラゴンを舐めた奴が多い日だ……それ相応の代価は覚悟するがいい」

「そっちこそ、少年に負けた、初めての、ドラゴンに、なる覚悟、しといて」

「このたわけものが!!」

「そっち、こそ!!」


異なる種類のブレスを乱射するドラゴンに対し、リョクは一歩も動かずにことごとく制御を奪い上空へと弾き出す。戦況は膠着したかに見えたがあまりの連射にゆっくりとリョクが押されだす、ブレスを逸らす見えない壁がじわじわとリョクに迫ってきたのだ。


「ほらどうした、もっとしっかり受けねば砕け散るぞ」

「もう、準備も、終わる。そろそろ、反撃タイム、僕のターン」

「この状況で強がるとは面白い、気に入ったぞ小僧」


リョクが両手を上げ3重になった強固な結界を展開する、もって30秒程度。だが準備が終わったリョクにはソレだけあれば十二分。自らの両手に軽く息を吹きかけ、いつものように切って話すのではなく滑らかに詠唱を開始した。


「もう魔力も残っておらんその体でどう足掻くというのだ」

「我が呼び声に応え来たれ天空の星、光刃となりて立ち塞がる者を撃ち滅ぼせ」

「……自棄にでもなったか」

「僕の力は、周囲の、魔力操作、少しの魔力を、元に、魔力、かき集める、役目。……でも、僕自身、応用くらい、できる」


太陽が顔を出したように上空から光が降り注ぐ、光源はリョクが上空に逸らしたブレスの魔力だった。乱射したドラゴンブレスが纏められ、一つの魔力塊として解き放たれるのを待っている。


「まさか、アレを制御しながらブレスを弾いていたのか……」

「同時に、操れる対象、一つじゃない、から、当然。相手の魔力、周辺の魔力、根こそぎ、奪うところから、この魔法は、簒奪者の光刃、呼ぶ。いくら、耐性ある、鱗でも、きついよ」


言って両手を振り下ろし、少しでも気を抜けば荒れ狂う魔力を制御から解き放った、魔力塊に呆然としてしまったドラゴンに、次の瞬間降った閃光の柱を避ける術などなかった。


「緑は自然、自然は力…これが僕の無敵の息吹(インビジブルブレス)だよ」

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