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虹と翼と  作者: 零式章
2-3 紫龍 ユカリ
32/52

蒼龍討伐前編 吹雪とブレスとツバサの本気

●雪山side


一方その頃雪山に向かったツバサ達4人は障壁を風除け代わりに猛吹雪の中を突き進んでいた。


「しっかし、あの種族にも困ったもんだよなー。多分自分の住処に入った人間を探して回ってるだけだろ今回」

「まあ滅多に人間が入れるものではないじゃ、偶然迷ってついたと考えるのが妥当じゃろ……ふぁあ……」

「めんどくさい奴っすねぇ……人間嫌いで有名なのも分かるっすよ」

「まぁとりあえず話してみて説得不能だったら力づくで呪詛を解いて貰おうか」


拳を打ち合わせてコレが漫画なら、『うぉっしゃあ!』とでもつきそうな程気合のこもったツバサ、俺の背中で寝かけているクロガネ、そのクロガネを羨ましそうに見ながらついてくるユカリ。

……緊張感無いなー。これから国軍ですら大量の犠牲を払いようやく倒す龍、しかもここらの主を倒すって言うのに。ま、がっちがちに緊張してるよりは良いか。ところでクロガネ、俺の背中で寝るのは良いが耳元で囁くな、くすぐったい。


「この吹雪で眠れるクロガネに脱帽するよ」

「まったくっすね……と、いたっすよ!」


能力の特性上、遠視に優れたユカリが吹雪の中に今回の標的を発見する。コウもいつでも防御魔法が放てるように構え、ツバサは寝こけているクロガネをハリセンで叩き起こす。(今回使用したのはきっちり折り目を付けていない威力重視タイプ)


「ちょっと待つのじゃツバサ、今何処から取り出したんじゃ!そして何処に閉まったのじゃ!?」

「コウのマント、クロガネのガントレット、ユカリのツバサ、人型で隠してるときと同じだよ」

「つまりは上手く説明できないってことか」

「お喋りはそこまでっすよ、相手もこっちに気づいたみたいっす」


ユカリと同じ方向を見ると大地を震わせながら龍が近づいてくるのが見えた。蒼い鱗を持つ龍はその色に似合わないほど真っ赤な怒気を放っており、その眼にはメラメラと火が燃えている。……あぁ、話し合う気皆無だなあれは。


「なんだろう、話が早いって言うより……相手からして長引かせる気は無いみたい」

「大方、話し合いを設けるくらいなら村をさっさと滅ぼした方が早いと思っとるんじゃろ、人嫌いも過ぎると愚かじゃな」

「手っ取り早くぶったおすぞ。今なら龍に戻っても誰も見る奴はいねぇしな!!」


そう叫んだ直後にはもう虹龍がサファイアドラゴンに突進していた。今回は蛇のような長い身体に手足をつけた龍。って、いくらなんでも気が早すぎじゃないかなコウ?!慌てて追いかけようとするツバサをクロガネが止めた。


「おそらくコウは呪詛(ブレス)が効かん自分を盾にしにいったのじゃ」

「兄さんのブレスは物理的なもの以外ならほぼ防げるっすからね。神様の奇跡だって無効化するさ、っていつも言ってたっすよ」


怪獣大決戦が始まる中、ツバサも戦闘に加わる為にクロガネを装備する。黒いガントレットを嵌めてユカリは下がらせた。彼女の力は強力だがツバサが戦闘に加わると、お互いがお互いの動きを制限するからだ。


「ユカリにはここぞという時の足止めをしてもらうと思うから、準備しといてね」

「わかったっす、兄さんに怪我させないように気を付けて欲しいっすよ」

『ツバサ、龍との戦いじゃぞ。気を緩めたら死ぬと思うのじゃ』

「OKOK、何とかするよ」


深呼吸してキッと激突した龍達に眼を向けると


「姿だけは立派な龍だが、人間共の味方をするとは、もはやトカゲだな」

「古臭い誇りに凝り固まって滅ぼされるのを待つよりはいいだろ?坊や」

「トカゲ如きが坊やとは舐めてるのか?」

「お前が生きたその3倍の時を俺達は過ごしてきたんだぞ?坊やを坊やと言って何が悪い」


睨みあう様に距離をとり罵りあいを始めていた。ツバサは呆れるように溜息をついて走り、サファイアドラゴンに向けて跳躍する。そして右足を天に向けて振り上げ……


「話し合う気が無いならぐだぐだ喋るな!!」


その頭蓋を砕かんと振り下ろした。ジャイアントの時から格段にレベルの上がった一撃が直撃し、ドラゴンの頭を揺らす。だがツバサの怪力でもってしてもドラゴンへの決定打には程遠く、ドラゴンは2,3度頭を振って、着地したツバサを睨んで咆えた。


「人間にしてはやる……だが邪魔をするなら容赦はせんぞ小僧!!」


今まで周囲を覆っていた吹雪すら吹き飛ばすような物理的な破壊力と呪詛を含んだ咆哮。大地に積もった雪まで撒き散らしながらツバサ達に迫るブレス。だがツバサがやれやれと首を振り、拳を振うとブレスが唐突に消滅した。


「……面白い技を使うな小僧」

「馬鹿やろう!!何かしたのはこっち、俺だっつの!!」


忌々しそうに睨み続けるサファイアドラゴンに尻尾を叩きつけることでツッコミとし、コウがツバサを守るように壁となる。……先ほどのサファイアドラゴンのブレスが掻き消えた原因は言葉にすればとても簡単だ。『コウがツバサに祝福(ブレス)をかけただけ』だから。相手に種を明かししてやるほど自慢癖も甘さも無いが。


「ふん、気に入らんが防御は一人前か。だが守ってばかりで倒れるほどわしは甘く無いぞ!!」

「じゃあ本気でいこうか、長引かせて死人が出ると僕も困る」

『ちょっと待つのじゃツバサぁ!?』


拳を鳴らして構えようとした所でクロガネの邪魔が入り、よろけたツバサは不機嫌さ全開のじと目でクロガネをみやった。


「クロガネ、流石に慣れてきたけどここからって時に止めるのは皆の悪い癖だよ」

「それはしょうがないと思うっすよ、ツバサの発言ツッコミどころ満載っすから」

「さっきのでも本気じゃなかったのかよ!!」

「本気出したら石榴みたいにはじけそうだし、さっきので3割かな」

「手加減していた?はったりを……そんな怪力な人間、とっくに死んでおるわ!」

「じゃあ試してみる?いっとくけど人間にドラゴンが殺せないなんて勘違いしちゃダメだよ?」


その言葉がサファイアドラゴンの耳に入った時には既にツバサが眼前で拳を振り被っていた。振り下ろすようなハンマーパンチがクリーンヒットし、ドラゴンの頭が地面に打ちつけられた。インパクトの瞬間に風の障壁を崩壊させ、生じた暴風でダメージを抑えたようだがさっきのように無傷とはいかないようだ。少し鱗が剥がれ、ふらついている。得意になって笑うでもなく、驚愕するでもなく、ただ淡々と当然のことが起きた、そんな無表情でツバサは言葉を続けた。


「体を守る硬い鱗を砕き、その身にダメージを溜めれば……龍は殺せるんだよ」

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