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虹と翼と  作者: 零式章
2-3 紫龍 ユカリ
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雪山の主 結界と留守番と魔王の鈴

ユカリの仲間入りが決まり、アリアの魔法で元の村に帰ってきたツバサ一行。ユカリのギルド登録を済ませ、ツバサ達もクエストの報酬を受け取る。……最短記録でポイントを稼ぐ彼らは周囲の傭兵からは恐怖の目で見られていた。別にとって食うわけじゃないのにねぇ、とはツバサの感想である。

そんな中受付嬢は初クエスト時から面識があるからか普通に業務をこなしている、初対面でコウが殺気を放ったり、次に来たときはギルドの一部を破壊したりしたのだが平然としてるあたり彼女らの精神は意外と図太いのかもしれない。まぁそうでなくては荒くれ共や傭兵の受付なんてできないか。

ふと、ギルドのカウンター奥が慌ただしくなった。


「どうしたんだろ?変なクエストでも出たのかな?」

「SSランクでも来たのかもよ」

「それでも慌て方が異常なのじゃ」


何事かと首をかしげる一行にアリアから回答が出された。


「たった今水晶通信機から緊急クエストの要請が入った。依頼者はこの付近、サファイアドラゴンがいる雪山の村だな。ドラゴンの呪詛で壊滅の危機なんだとさ」

「ドラゴン 倒す それか 呪詛 解く方法 渡す クエスト完了」

「ドラゴンって……コウ達みたいな?」

「や、多分サファイアドラゴンなら天然種っすね」

「わしらも人型をとるのじゃが、人が全てドラゴンではないじゃろ?人にオリジナルがおるようにドラゴンにも天然物のオリジナルがおるということじゃ」

「まぁ知能もあるし強すぎて人間に嫌われてるから俺達と見分けるのは相当難しいけどな」


年長組3人に説明されて納得するツバサとリョク。そして二人してにっこり笑う。


「じゃあ話も通じるかもしれないし助けにいこっか♪」「いこー♪」

「言うと思った。絶対言うと思った。魔界に来て片っ端から首突っ込んでるツバサなら絶対に言うと思った」

「耳に入った時点で休憩は諦めるしかないのじゃ、さっさと旅の支度じゃ。受付嬢、クエストの受注処理を頼むのじゃ」

「でもサファイアドラゴンだと厄介っすね。魔法攻撃無効、とまでは言わないっすけど直接打撃の方が効くタイプっすから」

「じゃあ俺とシロガネはパスだな、魔法しか役に立たんし……あと寒いとこ駄目なんだよ」

「同じく それに そろそろお城 戻る時間」


魔王組はあくまで息抜きということで出てきたのだ、ここでの離脱は当然と言えば当然か。というか後半が本音っぽい。あ、そうだといってアリアがコウに小さな鈴を渡して門を開く。


「お前らがくぐったの確認したらそのまま魔王城に帰るからそれやるわ」

「魔王の鈴 効能は ただのアリア用 呼び鈴」

「まぁ役に立ちそうなら呼んでくれ。急ぎの旅なら門を開くくらいはしてやるよ」

「わりぃな」

「気にすんな、お前らが気に入ったからすることだ」


アリアが送るなら防寒具は村で買った方がいいだろうと全員たいした用意もせずに門をくぐる。アリアのまたな、という言葉がどこか遠くに聞こえ景色が一変した。

一面が白銀で覆われた村、空を雲が覆ってさらに視界を白く染めていた。


「ここが件の村だな、つか雪激しすぎじゃねーか?」

「サファイアドラゴンのブレスは吹雪の効果も含まれとったかの」

「ついでに呪詛と氷を含んだ竜巻っす。あっしらよりも使い勝手がいいっすよ」

「あそこ、誰か、倒れてる」


ここは広場のようで大通りのほうに誰かが倒れていた。連れの男が抱えあげようとするが力及ばずふらついている。見ているこっちがひやひやするありさまだった。たまらずリョクが駆け出す。


「僕、手伝って、くる。僕、魔法、強化しか、できない、から」

「僕達は龍を倒してくるよ。話だけで解いてくれたらそれでいいけどね」

「龍ってのは人間嫌いだからどーなるかわかんねーぞ?」

「話がわかっても力比べで勝ったら、とか言い出すかもしれんしの」

「その時はその時っすよ!」


●村side


「大丈夫、ですか?」

「ん?あんたは……村の人じゃないな。どちらさんじゃね?わしはこの村の長じゃが」

「緊急クエスト、受けた、パーティ、僕、相性悪いから、お留守番、お手伝い」

「そうか、すまんがこの人を持つのを手伝っとくれ、村を結界で守ってくれたんじゃが呪詛にやられたらしい」

「わかり、ました」


リョクが軽々と倒れていた者を担ぎ上げ、村長は驚いたがすぐに自分の家へ案内した。ベッドに寝かせたところで詳しい事情を訊ねる。聞くところによると原因はわかっていないがこの山の主とも呼べるサファイアドラゴンが暴れだし、村に呪詛を含んだブレスを浴びせていたらしい。物理的なブレスは倒れた人が障壁で防いだが呪詛は防げなかったとのこと。


「つまり、ハクオウ、近距離から、まともに、呪詛、浴びた?」

「自分は人より抗魔力が高いからと……わしらの為に」

「勇気、ある」


呪詛で苦しいのか魘される声が聞こえてきた。それをやさしく撫でて微笑むリョク。その感触に気がついたのかハクオウが目を覚ました。


「君は、さっきの色とりどりの集団の」

「……突込みどころ、たくさん、ある、けど、まずは、ゆっくり、休んで」

「私は早く山の主を倒さないと!」

「呪詛に体、やられてる、休んで。主のところ、僕のパーティ、いった」

「いや、そんじょそこらのパーティじゃ危ないんです!!」

「ねてろ、いった」


起き上がろうとするハクオウをリョクが無理矢理ベッドに押し戻す。ついでにコウ譲りの威圧感を放って動きを封じた。ハクオウが大人しくベッドに戻ったのを見て満足そうに笑い、その薄い私服を指差す。


「そんな、格好、外出る、凍え死ぬ」

「これでも寒さには強いんですけど……」

「何か、文句、ある?」

「いえ、ありません。サー!!」


ほんわかと笑う彼の掌に集められた少量の魔力、それに連動するように強大な魔力が集まり、とてもじゃないが文句を言える状況ではなかった。物分りがいいとはなしが早くて助かる、と言う彼の、カルトに覚えなくていいことを吹き込まれた断片が見えた一幕である。

もちろん「呪詛を直接くらって平気でいられるわけがないから大人しく寝てなさい」と本来の優しい部分も顔を見せるが、インパクトの強さで前者に軍配が上がってしまうのは仕方ないことであった。


「おねーさん、相当、無理してる、魔力、乱れまくり」

「人の魔力の流れが見えるなんて、魔眼でも持ってるんですか君は」

「誰でも、わかるよ、僕の仲間、5人、皆見れる」

「……相当レベルの高いパーティですね。なら、任せても良いんでしょうか」

「ん、多分、一日、掛からない」


ぱらりとお気に入りの本を開いたリョクの言葉に村長とハクオウは固まるのであった。通常、龍は国軍ですら何度も繰り返し繰り返し攻撃し、バッドステータスを浴びせ、弱らせ、ようやく倒せるような化物である。それを数人で、しかも一日も掛からないとはどれだけの力を持っているのか。普通ならありえないと言っただろうが、微塵も疑わずに読書に没頭する少年を見ると疑う方が馬鹿らしくなってくる。


「信じてみるべきですかね」

「しんじるしかない、ともいえますのう」


二人に出来るのはただ祈ることだけだった。

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