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虹と翼と  作者: 零式章
2-3 紫龍 ユカリ
30/52

そして雪山へ 魔王の判決と呪詛と緊急クエスト

そして日が昇り、アリアも目を覚ましたので宿屋で朝食にする。周囲は昨夜の騒ぎでてんやわんやだが割れ関せずと食事をすすめる一行。ツバサが食べ終わる頃に躾、もとい教育を済ませたユカリが姿を現した。


「おはよう、ユリは?」

「おはようっす。出すとこに出してきたっすよ、罪には罰っす」

「ユカリの教育の時点で十分罰な気もするじゃが」

「私刑じゃたりないっすよ。今まで奪ってきた村も許さないとおもうっす。だからあっしも、あんたらに挨拶と、いくつか聞きたい事済ませたら牢に入るつもりっすよ」

「……そうか」


やれやれと肩をすくめ、何か吹っ切れたように微笑むユカリ。対照的に兄であるコウは俯いてしまう。と、そこにまだ本調子ではないのかようやく食べ終わったアリアが口を挟んできた。なんだろう、あの悪戯小僧のようなニヤニヤ笑い。


「じゃあ魔王様から実刑判決。罰としてツバサ達の手助けを命じる」

「「「「「はい?」」」」」

「アリア 魔王。魔王 決めた事 魔界で文句 言わせない」


ニヤニヤ笑ったままアリアが告げ、呆然とする一同にシロガネが付け加える。そんな二人に明らかにうろたえた反論しようとしたユカリを、机を叩いて笑い出したコウが止めた。


「いや、あっしは……!」

「ユカリ、諦めろ。自分の意にそわないからこその罰なんだろ、アリア」

「そういうこと。まぁ多分牢にいるより過酷だとおもうぞ?なんせこいつらだし」

「だね。まだ、少ししか、一緒、いない、けど、牢屋より、よっぽど過酷、でも、凄く楽しい」

「わしがクエストを選んでも一番張り切るのはツバサじゃからのう」


ひとしきり皆が笑った後、ツバサがユカリに向き直る。その顔はにこやかなままだが、まとった空気は真面目なもので全員が口を閉じた。


「アリアはあぁ言ったけど、結局最後は君に決めて欲しい。僕達と共に行くか、ユリと共に牢で償うか」

「まぁ牢に入ったところでぬしは騙されておっただけじゃ。すぐに出てこられるじゃろ」

「あ、あっしは……」

「ユカリ、可愛い子には旅をさせろとか獅子は我が子を千尋の谷へ突き落とすとか言うだろ。俺達と行こうぜ?」


しばらくあうあうあうと迷った末、ユカリは差し出されたツバサの手を取った。


「それじゃあ、よろしくね」

「あれ、そう言えば聞きたい事ってなんだったんだ?」

「それは……ツバサはなんでドラゴン3人を同時に使って走れたんっすか?あの時は状況が状況だったから流しちゃったっすけど。あとなんであっしのとどめを刺さなかったんっす?」

「解除した時は疲れてたけど普通に走れたよ?」


何を言ってるんだというような顔で告げるツバサにアリア、シロガネ、ユカリがありえないと驚愕する。


「普通一つでも疲れるんだぞ、俺だって昨日シロガネ使って倒れたろ!?」

「確かに ツバサ 身体 強くなってる でも 普通 無茶!」

「人間じゃなくなるとか散々脅しといて今更だろ。ツバサだってジャイアントを倒した時はしばらく目を覚まさなかったぞ?今回はステータスの上昇が半端なくて既に人間越えてるから平気なだけだ、ほら」


苦笑しながらコウが取説をめくる。そこには事細かにツバサのステータスが書いてあった。握力、体力、攻撃力、防御力などなどが一般的な人間のデータからはかけ離れている。


「数値にすると改めて人間やめておるの、ツバサ」

「僕もまさかここまでとは思わなかった」

「まぁそういうことだ。多分虹の忌み子はドラゴンとの相性が良いんだろう。今まで多色の忌み子が一人もいなかったから断定は無理だが、何色にも変わるって事は赤と青と緑の忌み子みたいな考え方も出来るしな?」

「そう言われればそうなのか……で、ユカリのとどめを刺さなかったのは?」


アリアが先を促すと今度はリョクがにぱーっと笑って答える。


「ユカリ、主犯じゃない、黒幕、絶対いる、コウがそういった。だから、迂闊な事、喋ったら、消しに来るはず、それにユリ、共犯の可能性、あった」

「だから、死んだ振りして本音を出させた訳じゃ。死体の前では口が緩むのが奴らじゃからな」

「そして失敗したとしてもハンニバルは退治してるから僕達に損は無いしね」


良い笑顔で言う彼らは何処か悪魔のようだった、と後にユカリは語る。



一方その頃、とある雪山の村にて


「おい、武器屋のおやっさんが倒れたぞ!!」

「ちくしょうまた一人追加だ、一体何が原因で俺達の村が!!」


広場の方が騒がしい、また誰か倒れたようだ。くそ、頭がくらくらする。天然種ドラゴン(この付近の主)の呪詛(ブレス)で抵抗の無い者から倒れているようだ。同じドラゴンと言っても九十九神として一点特化な自分達とは違い、天然種ドラゴンは野生を生き残ってきた強さがあり、ブレスの汎用性も高い。防御特化(コウ)のブレスなら対抗できたかもしれないが空気を固める程度の能力ではいくら特化しても呪詛までは止められなかった。一体何を怒り狂っていたのか、山の主が直々に村まで来るなんて普通なら考えられない。ちょうど村長がこちらに相談しに駆けつけてきたようだ。


「緊急クエストを頼むべきですよ村長」

「ハクオウさんがそう言うなら頼むべきなんじゃろうが……」

「報酬なら私が用意します、ついでに山の主からいろいろ剥ぎ取らせれば良いでしょう。サファイアドラゴン自体がそれなりの報酬になるはずですから」

「そうか……わかった。じゃがギルドが来るまで村が持つかどうか」

「だからこそ、一刻も早く緊急クエストが必要なんです」


村長から通信用の水晶を借り、付近にある水晶全てに連絡を送る。


「緊急クエストをお願いします、内容は村の救済、サファイアドラゴンを倒すかその呪詛を解く方法を持ってくることでクエスト完了とします。繰り返します…………」


ギルドからのクエスト手配の知らせとすぐさま受注された知らせを受け、安心から気が緩んだハクオウの意識は闇に落ちた。最後に見えた色とりどりの集団はきっと疲労から来る錯覚に違いない。先ほどまでここには自分と村長しかいなかったのだから。

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