旅の準備は大事です 魔界と情報と祭馬鹿
「ご名答じゃ、コウ」
がさりと近くの茂みから姿を現したのは黒目、黒髪、黒い着物の女。
纏う空気に敵意は無いが……なんというか眠そうな眼と地面に引きずりそうな長髪が印象的だ
「うわっ、びっくりしたぁ!コウの知り合い?……もしかして知り合いがいたからテンション上がってた?」
「あぁ、安心していい。久しぶりだな、クロガネ」
「ほんに久しいな。こんな魔界の辺境まで来るとは、わしに告白でもしにきたのかえ?」
「それでもいいが、俺達は人間界に帰るから今は無理だ」
軽く手を振ってツバサを見やる。クロガネも視線を移したのを確認してツバサを紹介する
「俺の今の使い手、親友のツバサだ。」
「よ、よろしくお願いします、お姉さんは……」
「わしはクロガネじゃ、そこの赤いのと同族……といえば解るかの?」
「つまり、黒龍?」
「そうじゃ、そして近接戦闘に特化したちーと武具でもある!」
拳をぐっと握って自信満々にいうのとケラケラと笑うのがコウによく似てた、とはツバサの感想である。
「さ、いつまでも濡れネズミのままでいても仕方あるまい?」
手招きして歩き出すクロガネ。多分すぐそこにある小屋が彼女の今の住居なのだろう。
「だな、風呂貸してくれ。ついでに服。」
「コウ、図々し過ぎ」
「ツバサ、きにするでない。わしとコウはそういう仲じゃ」
クロガネが微笑んで二人の手を取るとコウが笑って続ける。
「お互いの家にお互いの服がある不思議」
「そもそもドラゴンは人になる時、服も魔法で作るからいらないはずじゃ……」
「「食わなくても死なないからって飯を食わない悪魔はいないぞ」」
「嗜好品は嗜好品ってことね。僕は悪魔見たこと無いから喩えた方が解りにくいよ」
こうして、魔界の旅一日目は魔界の情報収集と旧友との思い出話に費やされていった。
・獲得した情報
1、前の魔王が人間達を客人として招待し、人間の村々が点在している事。
2、魔物による被害があった時は魔王が軍を派遣する事。
3、魔王の軍が来るにはタイムロスがある為、人間達の間でギルドが作られている事。
4、魔王が最近代替わりした事。(前の魔王以上に平和主義との噂)
5、現魔王は忌み子である。
「こいつは、面白いことが起きるかもな?」
「コウってお祭好きだよね……」
「魔王相手に腕試しも悪くないと思うがのう?」
「アンタも同類かぁあああああああああああ!!」