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ガラスの金魚鉢 〜机の上の小さな銀河〜

掲載日:2026/06/03

スバルはお祭りで金魚すくいをしました。

その頬は赤々と輝いて、とても誇らしげでした。


小ぶりな和金が泳いでいる中、ひときわ立派な尾を揺らしていた金魚が欲しくて、何度も失敗しながら、なんとかすくい上げた一匹。

スバルは金魚を入れてもらった小さな袋に何回も顔を近づけて、わたあめにも射的にも目もくれず、まっすぐに家に帰りました。


「お母さん、金魚鉢出して!」


スバルは靴を脱ぐのももどかしく、玄関で大声を出しました。


「あら、スバル、おかえり。金魚すくいをしたの?」

「うん。ねぇ、お母さん、金魚鉢どこ?」

「出しといてあげるから、手を洗っていらっしゃい」

「はぁい」


スバルが急いで手を洗ってくると、お母さんが納戸から金魚鉢を出してくれました。

前に金魚を飼っていた時に使っていた、ガラスの金魚鉢です。


スバルは金魚鉢を洗って、水をなじませてから、ようやく金魚鉢の中にそっと金魚を泳がせました。

金魚が身をひるがえす度に、大きな尾がひらり、ひらり、と揺れるのが楽しくて、いつまでも見ていられます。


スバルは、ふと思い立って部屋の電気を消し、窓辺に置いてある机の上のスタンドをつけて、さぁっとカーテンを開けました。


「ここに置いたら、もっと綺麗だろうな」


黄色い灯りの下で、赤いうろこがキラッ、キラッと光ります。

ガラスの金魚鉢の向こうは暗い夜の空。

ぷくぷくと浮かぶ水の泡が、まるで銀河の星のようです。


またたく銀の星の間を、ひらり、ひらり、と尾を揺らしながら、赤い金魚が泳いでいきます。

アリオトを過ぎ、メグレズをひらりと曲がって・・・


いつの間にか、金魚鉢の中には北斗七星が浮かんでいるのでありました。

金魚鉢の中は、すっかり星空になっています。


フェクダをひらりとかわして、メラクの辺りで金魚はクルリと回りました。

赤い尾が、ゆらりと円を描きました。

そして、ドゥベの先で金魚はピョンと跳ねました。


水の粒がキラキラと舞って、スバルの周りにも星がまたたき始めました。

スバルと金魚は、銀河の星々の間を一緒にすいすいと泳ぎました。

時折、金魚の尾がスバルの頬をなでます。

優しい風がスバルの髪と金魚の尾を揺らしていました。


「スバル!ごはんよ!早くいらっしゃい!」


お母さんの声がしました。

スバルがハッとして振り返ると、またたく星たちは跡形もなく姿を消してしまいました。


「ちぇっ、せっかく星空を泳いでいたのになぁ」


スバルは、ぶつぶつ言いながら、もう一度金魚鉢を置いた机の方を見ました。

黄色い灯りの下で、赤い金魚は、ひらり、ひらり、と尾を揺らしながら、ゆらゆらと泳いでいるのでありました。

窓の外の夜空には、星がまたたいておりました。

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― 新着の感想 ―
ツバキさんの投稿が毎週のお楽しみになっています。いつもありがとうございます。 今回のお話も素敵でした。たくさんのカタカナは北斗七星の名前なんですね。知らなくてググってしまいましたが、神秘的で印象に残り…
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