ある朝起きたら、母が敬語になっていた。
朝起きたら、母が敬語になっていた。
嫌な予感しかしない。
ミシミシと音を立てる階段を降りながら、寝癖の着いた髪を手で梳かす。
「やっぱり髪切ったの失敗かなぁ」
とかなんとかブツブツ言いながら、リビングの扉を開ける。
目の前に母が立っていて少し驚いてしまう。
「おはようございます。お嬢様。朝食の準備ができておりますのでどうぞおかけになって。」
と言いながら、椅子を引いてきた。
お礼を言って椅子に座り、朝の情報番組を眺めながら目玉焼きトーストを齧る。
今日は大学が昼からだから、家で少しゆっくり出来るなと思いながら母を見る。
……え?この人さっきなんつった?
少し咳払いをし、
「ねぇ、おかしくない?」
そう聞く。
「どうされましたか?」
「いや、どうされましたじゃなくてさ、なんで敬語なのさ」
思ったままの疑問を母にぶつける。
「あら、言ってませんでしたか?1週間あなたに敬語だけを使って生活できたら1億円ゲットですのよ。おほほほ」
きいてねーよ。あと、お嬢様かあなた様じゃねぇのかよ。
結構ルールガバガバじゃねぇか。
そう思いながら、変な親に育てられたものだと呟く。身支度をして家を出る。
すると家の外が見たことの無い風景になっていた。
広大な草原。龍のようなモンスター。空を飛ぶ大きなペンギン。角の生えた赤目の兎。
「異世界じゃねぇか」
そうつぶやいた後ろから、
「え??なんで??この場合1億はどうなるの??」
そう、母が動転する。
さぁ?どうなるんだろうか。
そもそも大学はどこにあるのだろうか。
なんですかこれは。




