最期の場所での最初の出会い
死ぬことを決断した千隼。すると後ろから誰かの呼ぶ声がする。
声のする方を振り返ると、1人の少女が立っていた。学生だろう。制服に身を包み、時々吹く風に美しいアイボリーの長髪をなびかせている。 そしてどこか懐かしかった。
(後少しで死ねるとこだったのに…)
そう心の中で思いつつも、一度首にかけた縄を解き、彼女に話しかける。
「ここにいるっていうことは、君も自殺しにきたの?」
僕の問いに彼女は黙り込んでしまう。
(まずいこと聞いちゃったかな…)
数分の沈黙が続いた。何を言おうか迷って、謝ろうと「ごめn…」と言いかけた時、彼女がついに口を開いた。
「…そう。私もあなたと一緒。」
彼女の口から出た言葉は簡潔で短かったが、とても重い響きが込められていた。
(これじゃ1人で静かに死ねないな)
そう思った僕は、死ぬ前に少女と話をすることにした。
「死ぬ前に少し話さない?」
僕がそう提案すると、彼女は少し考えた後に首を小さく縦に振った。
彼女が話した内容、それは目を背けたくなるような過去だった。
彼女の名前は東雲渚というらしい。私立××学園に通う高校3年生。いや、通っていたという方が正しいだろう。
彼女は1年前に学校を辞めた。辞めた理由、それは同級生からの嫌がらせだ。きっかけは些細なことだった。彼女が廊下を歩いている時、同じクラスの女子達とすれ違いざまにぶつかってしまった。その時彼女は確かに謝った。謝ったはずなのに、その女子達は「は?何コイツ」「マジうざいんですけど〜」などと喚き散らかしたらしい。そこまではただの小さな揉め事だった。
しかし、ここからが問題だったのだ。あろうことかその女子達は、彼女に対する嫌がらせを始めたのだ。 最初は落書きから始まった。彼女に対する罵詈雑言が、彼女に関するほとんどのものに書かれていたらしい。
そして次は物が無くなり始めた。ある時は教科書、ある時は靴が無くなっていたらしい。しまいには、SNSに個人情報や顔写真、嘘の噂などを流された。
親は母親が幼い頃に他界してしまい父親のみ、その父親も海外への出張で家にいない。つまり頼れる親がいない。だから彼女はどんどんエスカレートするいじめを受け、彼女は先生に相談せざるを得なかった。しかし、彼女の担任もグルだった。後から発覚したことなのだが、担任はいじめの主犯格の女子達と肉体関係を持っていたらしい。そのせいで女子達に
「このことを他にばらされたくなければ私たちの言うことを聞け」と弱みを握られていたようだ。このため担任も当てにならず、最後の望みとして教育委員会を頼った。
しかしここもダメだった。彼女が通っていた××学園、この学園を運営している××財閥は、持ち前の財力で教育委員会さえもグループに引き入れていたのだ。つまり彼女にはどこにも味方がいなくなった。彼女は絶望して引きこもるようになった。そのせいで彼女は「場面緘黙症」という病気を発症してしまった。この病気は簡単にいうと「リラックスした状態では普通に話せるが、環境が変わったりすると途端に話せなくなる」ような病気だ。この病気のせいで社会への復帰が難しくなり、彼女は完全に孤立してしまった。その結果、彼女は自殺を決断したらしい。
一通り話が終わった。
「今まで大変だったんだな。」
「…はい。では私はこれで…」
そう言うと彼女は踵を返して別方向へ向かう。彼女もおそらくこれからだろう。僕は彼女の背中を見送る。しかしなんだこの気持ちは。何かが心の奥につっかえて取れない。
(何を考えているんだ僕は…)
(人に構ってる暇はい。僕も今から死ぬんだろ…)
彼女の背中がだんだん遠くなってゆく。その時、自分の意思とは反対に、声が飛び出た。
「ねっ…ねぇ!!」
何をやっているんだ僕は。僕の呼びかけに反応して彼女の足が止まる。
「…何ですか」
「僕と一緒に生きてみないか!!」
マジ何言ってんの僕…
「…あなたは何を言っているんですか?あなたも死にに来たんでしょう?」
ド正論。だがそのド正論に対抗するように口からくさいセリフが紡がれる。
「僕は君を幸せにしたい…君が死にたく無いって思うくらい幸せにしてあげたい!」
週一投稿よりも不定期の方が楽だと気づいた今日この頃。描き終わり次第投稿したいです!投稿1週間以内には次のエピソードを投稿したいと思います!幸せになる…はず?




