親愛なるマリーへ
1. マリーの記憶
僕はマリーを見るたび、いつも猫みたいだと思った。
自由で、気ままで、でもどこか愛らしい。
声をかけるとすぐに隠れるその無邪気さが、たまらなく愛おしかった。
僕はマリーの真似をしてみたり、ただそばにいる時間を楽しんだりした。
明日や過去のことなどどうでもよく、僕らだけの世界を描き、手を繋ぎ、笑い合った。
猫を撫でるマリーを見ては、僕はその小さな仕草に見惚れた。
何気ない言葉に感化され、僕は知らず知らずのうちに彼女の世界に染まっていた。
でもマリーはどこか遠くを見ていた。自由に世界を描くその姿は、僕には掴めないものだった。
それでも、僕はその世界に少しだけでも触れられたことを、心から嬉しく思った。
2. マリーの死前
曇った街で、マリーは息が詰まるような日々を過ごしていた。
幻聴に囁かれ、プロザックに頼りながらも、心の影は彼女を見つめ続ける。
「このまま飛んでいたい」――誰にも理解されない孤独の中、マリーは静かに終わりを想う。
キリスト教の教えでは自殺はタブー。だからこそ彼女は“異端者”だった。
独りよがりの詩に囁かれる「bonne nuit マリー」は、甘く、幻の慰めの声だった。
3. マリーの死後
マリーがいなくなった後、僕はまだ胸の奥に彼女の声を抱えている。
傷ついた心で叫んでも届かず、笑っても晴れない日々。
死にたいのに死ねない、死にたくないのに生きられない――その揺れる心の中で、僕はマリーの存在を再び求める。
「マリー…」
僕は夜の闇の中でつぶやく。
生きていた頃の光と、死後の影が混ざる中で、僕は気づく。
心の中で僕らはつながっていることを。
悲しみも苦しみも、孤独も希望も、すべてを共有したい…
春風と木漏れ日が夢に差し込み、二人の歌う声が空に届く。
花びらの中に、僕の胸を晴らす光がある。
泣かず聴いてね、マリー。
僕らは、ひとつさ。
短編小説を書いてみました。読んでいただけると嬉しいです。感想などいただけると、もっと嬉しいです。




