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一、誕生日パーティー

「ルミィ~♪」


「ん? どうしたの、アリネー?」


「今日、何か予定はあるかしら?」


それは二月の最初の休日での出来事だった。


「特にないよ~、何か用事?」


「ええ、あなたの誕生日プレゼントのことなの。」


「ああっ! そうだ! アリネー、準備できたの!? 今日? 今から? いいよ!」


「ふふっ、そんなに興奮しないで。そうなのだけれど、心の準備をしておいたほうがいいかしらね、あたしとしては。」


「心の準備!? 大丈夫だよ、私のメンタルは超──強いんだから! 楽しみすぎる! 行こう! 行こう!」


「はいはい。い、今行くわね……」


私の誕生日プレゼントについて。


数日前に15歳の誕生日を迎えた私は、伯爵夫人が邸宅で誕生会を開いてくれたことがとても嬉しかった。──といっても身内だけの小さなパーティーだったけれど、アリネー、伯爵夫婦、ヴィルマさん、それに親しいメイドのお姉ちゃんたちと一緒に誕生日を過ごせて、私は本当に心の底から感動した。





「ルミちゃん~」


「はーい、お母様~!」


「これは私たちからの誕生日プレゼントよ! 15歳のお誕生日おめでとう!!!」


宴が始まる前、お母様が先にプレゼントをくれた。


「わぁぁぁ~!!! た、誕生日プレゼント!!! こ、これ、物心がついてから、初めてもらう誕生日プレゼントだよ!!! ありがとうございます、お母様! ありがとうございます、伯爵様!」


「喜んでくれてよかったわ! 開けてみてくれるかしら?」


それは大きな白い箱で、精緻なロイヤルブルーのリボンが結ばれていた。この箱、この重さ……服かな? ふふっ、開けてみよう……。


「えええっ! 本当に服だぁ!!! すごく綺麗!!! これってイブニングドレス!?!?」


「着てみてくれるかしら?」


「えっ~、今から?」


「今日の宴会のためのドレスとして贈ったのだもの! さあ、試着してみましょう! みんな!」


「御意、奥様!」





それは白を基調とし、ロイヤルブルーの花柄生地と装飾があしらわれたイブニングドレスだった。メイドのお姉ちゃんたちは私の淡いブルーの銀髪に合わせて、気を利かせて私の好きなレモンイエローのアクセサリーを選んでくれた。本当に気に入った──もちろん、一番お気に入りの『あの』ネックレスも身に着けた。


「わぁ~、ルミちゃん、本当に可愛いわ!」


「そうそう、ちょっと回ってみてくださる?」


「あぁ~」


アリネーのメイドさんたちはみんなすごく情熱的で、私は彼女たちのことが大好きだ。


「ルミィ! その服、とっても似合っているわ! 可愛い!」


「ありがとう、アリネー! ありがとう、お母様、伯爵様!」


……お母様。初めて会ったあの日から、私はずっと伯爵夫人のことをお母様と呼んでいる。


『ルミ、あなたはアリシアと姉妹のような仲なのだから、アリシアと同じように私のこともお母様と呼んでいいのよ。』


あの日、伯爵夫婦が王都から帰ってきたその日に、伯爵夫人はそう言ってくれたのだ。


もちろん、そのお言葉に甘えさせてもらうことにした。


「あなた、そろそろ正式にルミちゃんを義女として迎え入れてもいいのではないかしら。」


そして今日、思いがけず伯爵夫人がそんな提案をした。


「えっ? アンジェ? そ、そうなのか?」


「ええ。あなたはルミちゃんが嫌いなの?」


「嫌いなわけないだろう!? もちろん大好きだ! だが、ルミちゃんももも、もうこの年頃だ。我々が、いや私が勝手に義女にするなんて、そんな厚かましい真似ができるだろうか?」


「それなら問題ないわね。ルミちゃん、あなたはどうかしら?」


「義女……ですか? ど、どういう意味?」


「義理の娘になる、という意味よ。何か変かしら?」


「い、いえ、呼び方ののの問題じゃなくて……! つ、つまり私が二人の義理の娘になるってこと? 伯爵様と夫人が、私のお父様とお母様になるの? そ、それって……どういうこと!?!??」


「ふふっ、ルミィ。つまりね、あなたが望むなら、あたしたちはあなたの家族になるということよ。本当の家族にね。」


「家族!? アリネーに続いて、わ、私にお父さんとお母さんまでできるの!?!?」


「ええ! ルミちゃん! 私たちはみんなあなたのことが大好きなの!!! もしあなたが嫌でないなら、私たちをママとパパにしてちょうだい!」


「うっ……私、わ、私でいいの……?」


涙腺がいつの間にか崩壊していた。


この何年もの間……十年前から……。いや、たぶん物心がついてからずっと、私にはお父さんとお母さんがいないのだと分かっていたから……。


不思議なことに、大人は子供の頃の記憶を忘れてしまうものだというけれど、私は少し違っていた。あの頃……四歳半から六歳半までの記憶は、まるで昨日のことのように鮮明に焼き付いている。……逆に、それ以降から十代になるまでの記憶のほうが、かえって少しぼんやりしているくらいだ。


あの頃……孤児院に送られたばかりの時期、私は毎日ひたすら隠れて泣き、誰とも関わろうとしなかった。孤児院の神官様がどんなになだめても、ご飯を食べさせようとしても、他の子を遊び相手に連れてきても……。


私はただ、目的もなく抜け殻のような日々を過ごしていた。あの、気持ち悪くてやたらと馴れ馴れしい男が、一日中私を追いかけ回し、まとわりついてくるまでは。彼のおかげで、私は無理やりにでも少しはまともな生活を送らざるを得なくなったのだ。


そして、ある日気づいた。私に殴られたり蹴られたり、お腹に頭突きを食らわされたりしても、全く怯まずに冗談を言って私をからかってくるあの気持ち悪い男が、あの日、私を背負って村から逃げ出してくれたお兄ちゃんだったのだと。


わ、私ったら彼にあんなことを!? このお兄ちゃん……どうして? 命の恩人なのに、感謝を求めるどころか、私の前で自慢することもなく、一度だって口にしなかった! そのせいでずっと気づけなくて、自分の勘違いかと思ってしまったじゃない! この人は一体、何を考えているの!?


ところが、本人に直接問い詰めると、彼は平然と認め、それどころか細部まで全部話し始めたのだ!


その時、初めて知った。彼は私の幼い頃から私のことを知っていた……同じ村で暮らしていた子供だったのだから。ただ、私はまだ幼すぎて、彼のことを全く覚えていなかっただけだった。


あの日を境に、私はようやく現実から逃げ続ける孤独な生活に別れを告げ……孤児院という大家族の一員になった……。


その後も、ふとした拍子に両親を思い出して、泣くのを我慢できないこともあったけれど……。


そんな時は、お兄ちゃんが彼なりのやり方で私をあやしてくれた……。


レモン……レモンの葉……。


いいえ……本当は方法なんてどうでもよかった。大切なのは「彼」自身であり、「彼」の優しさと、見捨てずにいてくれるその存在があったからこそ、私はこれ以上一人で塞ぎ込んでいるのが申し訳なくなったのだ。


もちろん、大小さまざまな事件もあった。近所のガキ大将たちにからかわれてはお兄ちゃんが一日中喧嘩をしていたし、一度なんて一人で泣きながら孤児院を飛び出して故郷へ帰ろうとして、彼を半日も走らせ、遠くまで探しに来させたこともあった……。


この人は本当に……。もちろん、孤児院の神官様やみんなにも感謝しているけれど……。


でも、本当の意味で家族と言えるのは、私にとってお兄ちゃんただ一人だった。


あの頃の私にとっては。


その後、中央聖教会へ神官の修行に出され、お兄ちゃんとは音信不通になった……。もちろん、彼を探し出すことを諦めたことは一度もない。けれど、あの修行の日々、私には家族と思える相手がいなかった。中央聖教会で修行を指導していた大神官……については、触れないでおこう。まだマシだったのは、身の回りの世話をしてくれた神官のお姉ちゃんくらいだろうか。同期とは普通の交流こそあれ、心を通わせられる相手だとは思えなかった。


私があまりにマイペースすぎたせいで、みんなも接し方が分からなかったのかもしれないけれど。


だから、今思い返しても、私の心の中に家族としていたのはずっとお兄ちゃんだけだった。アリネーに出会うまでは。


あの日の邂逅、女神が降臨したかのようなその姿に、私は一目惚れした。それから、アリネーと夜に語り合い、私の身の上を話した時。彼女が思わず私を抱きしめて「私があなたの家族になる」と言ってくれたあの瞬間から、私は彼女を本当の姉だと思っている。


正直に言って、アリネーがいて、お兄ちゃんとも再会できた。それだけで十分に幸せだったのに、まさか今日……。


「いいのよ? 受けてくれるかしら、ルミちゃん?」


はっ!? 思わず過去の回想に浸ってしまっていた。


「はい!!! 喜んでお受けします!」


うぅ……私のお父さんとお母さん……本当に感動して、自分を抑えきれない。


「それじゃあ、ルミちゃん。一度『ママ』って呼んでみてくれないかしら?」


「えっ、そ、それはお母様と呼ぶべきではないのですか? アリネーみたいに……」


「ママって呼んでくれるほうが嬉しいわ! アリシアも小さい頃はずっとママって呼んでいたのに、いつの間にかお母様なんて他人行儀な呼び方に変えちゃって。ねえ、アリシア。あなたもママに戻ったらどう?」


「お母様、あたしとしては貴族としての礼儀も重んじたいのですわ~」


「ちぇー。でもルミちゃんは別よ。ママがいいかしら、それともお母様?」


「私……アリネー……いいのかな?」


「いいわよ、ただの呼び方だもの」


「私……分かりました! アンジェママ!!! よろしくお願いします!!!」


「ああ~、可愛い~! 今日から我が家に正式に娘が増えたわ!」


「それで、あなたはどうするの? あなた。なんて呼ばれたい?」


「私!? わ、私か?」


「パパって呼んでもらう? あなた」


「パパ……ふふっ……それは、その……」


「お父様。やっぱりお父様とお呼びします! そうしないと、お父様の伯爵としての威厳に差し障るかもしれませんから!」


「えっ!? ああ……そうか! そうだな、ルミちゃんの言う通りだ!!!」


「ありがとうございます、お父様! これからよろしくお願いします。」


「うむ!」


お父様の顔、やっぱり少し残念そう。どうやら期待していたみたい。うーん……でもやっぱり良くないよね。何と言っても伯爵様なんだし。もし私にパパなんて呼ばれるのが癖になったら、彼のメンツが丸潰れになっちゃうのは確定だもの。


「何と言えばいいのかしら。お父様、お母様、実はルミィとあたしたちの縁は、決して浅いものではないのですよ~」


「ん? アリシア、それはどういう意味だい?」


「ええ、お母様。ルミィは最近ここへ来てあたしの妹になっただけではなく、実はずっと前……十年前にはすでに、お父様とお会いしていたかもしれないのです。」


「十年前? 私がか?」


「あらあら? あなた、本当に自分でも気づいていなかったの?」


「わ、わ、私に分かるはずがないだろう! ルミさん……ルミちゃんは十年前といえばまだ四、五歳のはずだ。たとえ会っていたとしても、覚えているわけがないじゃないか!?」


「それで、アリシア、それはどういうことなの?」


「お母様、ルミィが十年前の神魔戦争による戦争孤児であることはご存知ですよね?」


「ええ、知っているわ。だからこそ、彼女を義理の娘に迎えたいと思ったのだもの。」


「彼女の故郷は、『バルス』草原周辺の村だったのです。」


「ふむ……『バルス』草原の周辺か……」


「どうしたの? あなた?」


「確か……当時、魔族が新戦線を展開しようと遊撃隊を送り込み、王都を側面から侵攻しようとしていた場所だ……。私の騎兵隊がいち早く応戦に向かったのだが……。無念なことに外縁の村々は全滅に近く、生存者はいないと思われた。だが、その中の一つの村で二人の子供を救助したことがあったな……。それが、ルミだったのか?」


「お父様! それは、男の子が女の子を背負っていませんでしたか!?」


「……ああ、そうだ。特によく覚えている……。その男の子に尋ねたのだ。わずか八歳の少年が妹を背負って村の入り口の道に立っていた。私たちは皆驚いたものだよ。その後、補給のために彼らを『バルス』へ連れて行き、そのままあそこの……オリシウス聖教会の支部に二人を託したのだ。」


「それは私です! そして私を背負っていたのが、お兄ちゃんなんです!!!」


「お兄ちゃん? アシランのことか?」


「そうです!」


「あら? そうなんですの? アシランくんの故郷はあちらだったのですわね。」


「そうなんです! アンジェママ! お兄ちゃんが私を助けてくれたんです! お兄ちゃんが私を背負って、ずっと村から歩いて……そして村の外で伯爵様……お父様の騎兵隊に出会ったんです!!!」


「えっ? それって、すごく格好いいじゃない!」


「はい! お兄ちゃんは格好いいです! 最高に格好いいんです! その後も、孤児院でずっと私の面倒を見てくれて!」


「……」


「どうなさいました? お父様?」


「いや……何でもない。ただ、もしあの時、我々がもう少し早く到着していれば……あるいは、私が自ら村の中に入って状況を確認していれば、ウィリアムとエリザベス……つまりアシランの両親の最期に立ち会えたのではないかと思ってな。」


「そうだったのですね……。ですが、それはお父様のせいではありませんわ。」


「お父様。」


「なんだい、アリシア?」


「ルミィたちの村で、魔族と戦闘はあったのですか?」


「いや、我々が到着した時、村の中に生きている魔族はいなかった……。それがどうかしたのか?」


「それじゃあ……村の魔族はみんな、アシランくんのお父様が倒したんですか?」


「そういうことね。その点については私もアシランと話したことがあるわ。ウィリアムはたった一人で、十数人の魔族の小隊を壊滅させたのよ……。でも、その話は今は置いておきましょう。ええと、どこまで話したかしら? 孤児院であなたの面倒を見ていた時のことね、ルミちゃん?」


「はい! 孤児院です! お兄ちゃんは孤児院でずっと私を支えてくれた、私の救いなんです! 中央聖教会に修行に出されてからも、彼は私の心の支柱でした!!!」


「あらあら? アリシア? もしかしてルミちゃんとアシランくんはそういう関係なの? あなたは知っていたの?」


「あたしは当然、全部知っていますわ。」


「へぇー、ふむ……なるほど、そういうことか。やはりルミちゃんと私たちの一家は本当に縁が深いのだな! すべては運命の導きだ!」


「はい!!! 本当に! オリシウスの奇跡です!」


「ええ! ルミィは本当に敬虔なオリシウスの信徒ね! さすがはあたしたちの『フローラの聖女』様だわ!」


「ああっ! アリネー! その呼び方はやめてください! そんな噂が広まったら、私、中央聖教会の大神官様たちに絶対に叱られちゃいます!」


「それっておかしくない? あなたのいた聖教会から民に愛される神官が出たのなら、喜ぶべきことでしょう? 何を叱ることがあるの? それに、あの日以来、あたしは知っているわよ。あなたが張り切ってたくさんの病人を治療していたことを。」


あの日。アリネーが一人で領民たちの請願に向き合った、あの日のことだ。私はアリネーが間違っていないことを証明するために、群衆の前で『神聖治療』の奇跡を召喚し、十数人の負傷者を治したのだ。


「分かってます、分かってますってば! 私が悪かったです! もうむやみやたらに治療なんてしません! 本当にお医者様でもお手上げの重症の外傷や、原因不明の中毒患者さん以外は!」


その後、多くの領民たちが邸宅の門の外で待つようになってしまった。「治療してほしい」と言われれば、もちろん私は構わないのだけれ止……。


「あはは、ルミィのその気持ちは立派だけれど、甘やかしすぎるのも良くないわよ。ちょっとした怪我で一日中あなたを頼るようになるのは、みんなのためにもならないもの。」


「うぅ……分かりました。ありがとう、アリネー。」


それから、アリネーはみんなの前でちゃんと説明してくれた。仕事には細心の注意を払って、むやみに怪我をしないこと。もし軽い怪我なら、正当に医者を頼ること。どうしても必要な時だけ、私を頼るようにと。一つは私のプライベートを守るため、二つ目は本当に助けが必要な重症の患者が私を見つけやすくするため、そして三つ目は、みんなが生活の中の危機感を失わないため。それは時に命取りになるから。


「私はむしろ、みんなルミちゃんを一目見たくて、わざわざ外で待っているんだと思うわ。だって、ルミちゃんってばあまりにも可愛いもの~」


「お母様の言う通りね。ルミィの容姿はこれほどまでに清純で愛らしいのだもの、みんなが争って見に来るのも無理はないわ」


「人気者って言うなら、アリネーこそ一番の人気者でしょう? 『みんなのアリシアちゃん』?」


「その名前は出さないで! 恥ずかしすぎるわ!」


えへへ、反撃成功。


「ちゃん!? どういうことだ!?」


「何でもありません! お父様は余計なこと言わないで!」


「えぇ!?」


あはは。こういうところを見ると、お父様もちょっと可哀想かも。普通の女の子はこのくらいの年齢になれば、子供の頃みたいにお父さんにべったりとはいかなくなるし、ましてや照れ屋なアリネーだもの。私はよく知らないけれど。お父様はこの場で唯一の男性だし、のけ者にされるのも仕方ないのかな?





「我が家の新しい娘、ルミちゃんの15歳の誕生日──そして成人を祝して、乾杯!!!」


「乾杯!!!」


「おめでとうございます、ルミ嬢! さあ、乾杯しましょう!」


メイドのお姉ちゃんたちが熱心に寄ってきて、みんな私と乾杯してくれる。──私が飲んでいるのはアルコール度数の低いシャンパンだけれど。


「ルミ嬢、正式に伯爵家の一員となられたこと、そして本日成人を迎えられたこと、お祝い申し上げます」


「うんうん! ありがとう、ヴィルマさん!」


「ふふ、ですがルミ嬢はとっくにこの家の一員ですもの。皆様、これまで通りで構いませんわ。分かっていますわね?」


「もちろんです! 分かっています!」


さすがヴィルマさん。仕事の段取りを伝えることも忘れない。


「ルミ嬢……」


ヴィルマさんが耳元に寄ってきた。


(少し残念ではありますが、気を落とさずに。チャンスはいくらでもあります。自信を持って頑張ってください。あなたなら、きっと大丈夫でしょう?)


ん? んん……。ええと……やっぱり私たちのメイドさん長、ヴィルマさんだ。


彼女は一体どう考えているんだろう? 私たちのこと。表向きは一日中アリネーをからかっているけれど、実はそれって高度なアシストなんじゃないかな? この数日一緒に過ごして、彼女の考えが分かってきた気がする。……要するに、アリネーに自分の本心と向き合わせたいだけなのだ。その結果がどうなろうと、彼女は気にしていないみたい。一種の、『みんなが本心に従って行動したら、一体どんな結果が出るのかしら? 面白いわ』っていう、高みの見物を楽しんでいる感じ。


(うん! 分かってる! 大丈夫、頑張るよ! 私に任せて!)


(ふふ、やはりルミ嬢は聡明で可愛らしいお方ですね)


(あはは……)


うん……そう。ヴィルマさんと付き合うコツは、あまりはっきりと言葉にしすぎないこと。全部暴いちゃったら面白くないものね。


「ルミちゃん! ちょっとこっちへ来てくれる?」


「はい! アンジェママ!」


「さあ! ここに立って! それで、あっちの魔道具を見ていてちょうだい」


ん? ここかな? 魔道具の後ろに立っているアリネーが見える。


「そう! ルミィ! こっちを見て! 笑って!」


ん? 笑うの?


「いいよ! こんな感じ?」


「カシャッ!」


ん? どうしたんだろう? 今の魔道具、一瞬作動したみたいだけど?


「アリシア、いけたかしら? 私が代わりましょうか?」


「大丈夫よ~、お母様。見て!」


「あら、もう出来たのね~、へぇ~、いい映りじゃない~! ルミちゃん、こっちに来て見てごらんなさい」


「ん? 何何? えっ?!」


アンジェママの手には手のひらサイズの紙片が……。そこには、そこには私の姿が映っている? しかも……これ、見たことある!


「えっ!? アリネー!? これ、絵じゃない! お兄ちゃんのペンダントの中に入っていたのと同じもの!?」


「ルミィ、あの時ペンダントを見て、これが絵じゃないって気づいていたの?」


「当たり前だよ! こんなに精巧な絵があるわけないもん! 見た瞬間に気づいたけど、あの時はそんな話をしてる場合じゃなかったし! それで……」


「それで?」


「忘れちゃってた、あはは! ……そうだ! これってどんな技術なの? おうちの秘密の魔法? なんて呼ぶの?」


「ふふ~、ルミちゃんが気に入ってくれたなら嬉しいわ! これは我が家秘伝の魔法技術よ。正式には『映写』と言って、これは映写された『写真フォト』と呼ぶの」


「わぁぁ~すごい! これ! これ、もらってもいいの?」


「もちろんでしょう! さあ、次は私。ルミちゃんと一緒に映りたいわ! アリシア、お願いね~!」


「了解よ、お母様!」


「あなた~! あなたも来なさい。新しい娘と一緒に映るわよ!」


「おお、分かった分かった!」


それからアリネーとも一緒に映写したし、それから四人で……あら? あの魔道具ってアリネーが手で操作しなくても大丈夫なのね?


その後はメイドさんたちまで全員集まってきて、すごく賑やかな雰囲気になった。


お兄ちゃん、もしあなたもここにいたら、私はどれほど幸せだっただろう。



まったく。



勝手なヤツ。



どうやって仕返ししてやろうかな。

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