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二、管理者インターフェース

「まあ、もう少しこのままでいいんじゃない?今を楽しむのも悪くないでしょ。」


「うん、賛成。」


うん、これが今の彼女たち二人の考え方だ。


なら、しばらくこのままでいこうか?


このパーティーは、アリシアとルミという規格外の存在がいるおかげで、三人だけで七大迷宮の一つである『地下城』を攻略できてしまった。


アリシアの破壊力満点の魔法と、ルミのほぼ制限なしのあらゆる支援系の奇蹟。これにちょっとマシな前衛がいれば、どんな大迷宮でも攻略は問題ないだろう。


このままいけば……うーん、魔法完全無効の『迷宮の王』でも出てこない限り、七大(六大)迷宮すべての攻略だって不可能じゃない。いや、むしろ時間の問題かもしれない。


もしそれがアリシアの今の目標なら、しばらく彼女のそばにいて手助けするのも悪くはない。それに、あの約束がまだ有効である限り、俺が彼女のそばを離れる理由はない。


『今のあなたは、冒険者として黄金期なんですよ!もっとも成長できる、大事な時期なんです!本当に……ずっと彼女の後ろに立って、彼女の輝きを見上げるだけで、一度も本物の試練を経験しなくていいんですか?』


また、あの時の彼女──シャーロットの言葉が、ふと脳裏をよぎった。くそっ、あの女……その洞察力は認めざるを得ない。見事に痛いところを突いてくる。


今の俺は、安全圏にとどまり、ルミの支援奇蹟で本来の自分の力ではない強さを得て、そしてアリシアという存在のおかげで、心の底から無敵になったような錯覚に陥っている。


もし彼女たちがいなければ、俺はどうなる?深層の迷宮を毎日自由に歩けるような男でいられるか?


もしそれだけなら、アリシアに少しだけ休暇をもらって、一人で他の迷宮の中層や深層を試してみるのもありかもしれない、でも……もし「例の計画」に関わるのなら……。





ともかく、このままではいけないよな?俺は後ろに両手を伸ばし、二人の頭を撫でた。


「そろそろ起きよっか~俺もちょっと体を動かしたいし。」


「ん…」


「ん…」


「二人同時に顔を上げてきた。俺はゆっくり立ち上がり、二歩ほど前へ進む。」


「まずは体を慣らすか。」


彼女たちの方は見ずに、体を伸ばしながら部屋の道具置き場の方へ歩き、何本かの武器を手に取って弄ぶ。


「じゃあ、あたしは迷宮の核の研究を続けるね。」


「私も~、アリネー、そばで見ててもいい?手伝いが必要なら声かけてね?」


「ふふ、いいわよ。研究しながら説明してあげる。」


アリシアは装置の前に正座で腰を下ろした。


「いいなあ。私もちょうど魔法文字と魔法を学んでみようかなって思ってたところなの。」


ルミも隣にちょこんと座る。


「ん?どうして?」


アリシアは『迷宮の心』を操作しながら問いかけた。


「ねぇ、ちょっと耳貸してくれる?」


ん?ルミ、秘密話?安心して、盗み聞きなんてしないさ。


「うんうん、いいよ。」


「実はね………………」


「え~~~!?そんなわけないでしょ!!」


「違うの?!だってアリネーもそうだし、大広間の絵もちゃんと見てたんだから、アリネーのお母様もそうだったでしょ!?彼女も高位魔法使いなんでしょ?!それに……あの『大嘘つき』シャーロットだってそうだったでしょ!?共通点って言ったら、全員高位魔法使いで、あそこが……でしょ!?」


「しーっ!声が大きいってば!アスランくんに聞かれたくないんでしょ?」


「そ、そうだった……」


ルミはまたひそひそ声に戻る……


「それに……サラ……あの『大嘘つき』の妹、私と同じくらいの年なのに、もうすっごくポテンシャルあるじゃん!まだ中級魔法使いだからあれだけど、でも……」


「えぇ~!?サラ!?誰それ?ああ!あの子か!彼女も……そうみたいね……」


「だからね、あそこって魔力を蓄える場所なのかなって思って。魔力が多ければ自然と……」


「そ、そんなことないからね!?」


「本当に?検証したことあるの?」


「そ、それはないけどさ。でもそもそもどうやって検証するのよ!?」


「つまり、可能性はゼロじゃないってことよね?」


「ルミィ、想像力たくましすぎるからっ!!」


「お兄ちゃんのためなら、私はなんでも試してみせるよ!だって、彼って本当にスケベだし!でしょ!?」


おいおい……ルミさん、それはさすがに聞こえてるぞ……はぁ、結局何を話してたんだか。


「うーん……ルミィがそう思うなら、別に教えてあげてもいいわよ……その、時間があるときに魔法の授業でもしましょうか。」


「やったー!~」


「どうしたの?ルミ、魔法を勉強するの?」


俺は声をかけた。


「そうだよ、私ってすっごく勉強熱心なんだから。あれ?お兄ちゃん、盗み聞きはダメだよ?」


「いや、ちょうど聞こえただけだって。それで、なんで学びたいの?」


「ふんっ、だってアリネーが言ってたじゃん。魔法って、力のない人が学ぶことで力を得る手段なんでしょ?」


「その通り。厳しい戦士の訓練と比べたら、体が強くなくても、頭が良ければ魔法を学ぶことで冒険者としての基本的な戦闘力を得られる。そうやってこの世界に飛び込んでくるのよ。」


「そうなんだ?」


「お兄ちゃんも一緒に学んでみる?」


「いや、俺にはすでに『ロウ・ヒール』があるし。それに俺、魔法使いじゃないからさ。スキルの組み合わせで戦術を組むのが俺のスタイルなんだよ。」


「でもさ、魔法文字読めないのに魔法使えるって、ずるすぎじゃない?」


「それはアスランくんの『血統魔法』でしょ。祖先から受け継いだやつ。」


「え~~~ずるい~。でも理解しないと魔法は使えないって聞いたけど?」


「彼は理解してるわ。」「俺、理解してるよ。」


二人同時に口をそろえて言った──


「どういう意味よ?」


「アスランくん、ルミィに『ロウ・ヒール』の原理を説明してくれない?」


「いいよ。『ロウ・ヒール』は、魔力を第一魔法式でエネルギーに変換して、体の■■に○○○を注入し、第二魔法式で●●●●の現象を引き起こすことで、再生能力を急速に高めて、体を素早く回復させるんだ。」


「お兄ちゃん、今なんて言ったの?」


「え?『ロウ・ヒール』の原理を説明しただけだけど?」


「ほんとに?!自分が何を言ってるかわかってるの?じゃあ、その■■って何!?●●○○とか◇◇¤¤って何よ!?」


「●●○○と◇◇¤¤じゃなくて、○○○と●●●●だよ~」


「知らないよ!あんたが●■●○って言ってるのか■●○●って言ってるのか、誰がわかるの!?そもそも自分で意味わかってるの!?ちゃんと説明してよ!」


「知らないよ。だってさ、誰にでも“頭”はあるけど、その“頭”って何か説明できる?」


「はあ──ちょっと!それってスキルと同じじゃない!?使えるけど、原理はわかってないってやつでしょ?」


「違うんじゃない?」


「じゃあ一体……!」


「ふふふ、ルミィ、アスランくんをあまり困らせないであげて。彼は『ロウ・ヒール』が使えるだけで、あんな専門用語まで理解してるわけないじゃない?もし理解してたら、もっと上位の治癒魔法が使えるはずよ。」


「えっ!?それってどういう意味?」


「つまりね、魔法の熟練度って理解の深さと関係してるの。基礎的な理解しかなければ、使えるのは初級魔法だけなのよ。同じように、彼が覚醒したのは初級レベルの治癒魔法だから、その程度の中途半端な知識しか持ってないの。」


「なるほど、つまり『血統魔法』を覚醒しても、関連知識は限定的にしか理解できない……ってことは、『血統魔法』の覚醒って、そこまで万能じゃないってことね。」


「そうよ。『血統魔法』の“覚醒”は、特定の魔法知識を一気に理解できるっていう利点はあるけど、たとえ同じ血統を持っていたとしても、親子や兄弟姉妹、双子ですら、“いつ覚醒するか”とか、“そもそも覚醒するかどうか”とか、“どれだけ覚醒するか”は全く違ってくるのよ。」


「じゃあ、覚醒を促す方法ってあるの?やっぱり戦闘経験とか?」


「違うのよ。『血統魔法』の覚醒って、かなりランダムなの。『血統スキル』みたいに、戦闘経験や本能を刺激すればいいってわけにはいかないのよ。」


「ええ?じゃあ、あまり実用的じゃないってこと?」


「そうね。普通の魔法を使いたいなら、ちゃんと魔法文字と魔法式を勉強する方がいいわよ。」


ガチャッ!


「やったー!」


迷宮の心の前にあるパネルが中央から左右に開き、中の魔法回路が露わになった。


「えっ?アリネー!これ、なに?」


「慌てないで。これは『迷宮の心』のコア部分……ちょっと見せて……」


「これ!?これは……!!!」


「どうしたの、アリシア?」


「好奇心でちょっと覗きに来ただけよ。」


「これ……うーん……そうね……あ、アスランくん、ルミィ、これは『迷宮の心』のコア部分で、魔法式の他に暗号化されたメッセージもたくさんあるの。」


「暗号化?じゃあ、読めないんじゃ……?」


「違うの。これは……ヒントがあるのよ……」


「ヒント?どんなヒントなの?」


「うーん……どう説明したらいいかしら……あっ!ちょっと待ってて。」


アリシアは紙とペンを取り出し、『超自己加速』を発動した状態で、手を走らせながら百以上のマスがある表を素早く描き上げた……


「これは元素周期表……じゃなくて、解読用の対応表よ。これを使って文字を変換していけば暗号が読めるの。あなたたちも手伝ってくれない?この表を参考にして文字を変換して、それぞれが別に作業して、あとで照らし合わせて確認してほしいの。」


「いいよ!丁寧にやるね!お兄ちゃん、足引っ張らないでよね!」


「何言ってんだ、お前より字は下手でも、慎重さでは俺が有名なんだぞ!」


「じゃあ、あたしが元の文字を書き写すから、その後はそれぞれ分担してお願いね……」


こうして、俺たちは解読作業を始めた……作業中、ずっとアリシアの驚きの声が聞こえてきたが……内容はうまく説明してくれなかった……


「とにかく、まずは全部解読しよう!内容のことは……後でゆっくり教えるね。」


解読後の文字も魔法文字なので、俺やルミには内容を理解できない。だから、アリシアの言う通りにやるしかなかった。


…………


「アスランくん──このページの5行目、ちょっと変じゃない?もう一度確認してくれる?」


「う、うん!あれ?ルミ、お前のは?」


「え?見せて?……私も同じだよ?」


「おかしいな、原文見てみようか……」


「ええっ!?」


結果、同じところで俺たちは同時に間違っていた。どうしてだ?変だな……


「アリシア!ごめん!二人とも同じミスしてたから、照合しても気づけなかったんだ……」


「本当にごめんなさい!私たち、全然ダメで!」


「ん?直せば大丈夫よ、問題ないわ~。こういうこともあるわ。だって二人とも同じ解読作業をしてたんだもの、暗号データの流れに引っ張られて、同じ間違いをしちゃったのね。……うん、今後は気をつければいいわ。」


データの流れ?引っ張られ?まったく意味がわからない。でも、もう聞き返すのも気が引ける。とにかく気をつけよう。でも、逆に不思議だったのは──なんでアリシアには俺たちの間違いがわかったんだ?





俺たちは集中して解読作業を続けていた……時折、ルミがくだらないことを喋って気を紛らわせたり、適度な休憩を挟んだりしながら、気づけばもう5時間近くが経過していた。


アリシアはというと、俺たちが解読した内容をずっと後処理していた……どうやら、これらの情報は多重暗号化されているようだ。


「──あ、完成したわ。」


アリシアが最後の1ページを回収すると、ついにその言葉を口にした。


「本当に?」


「うん!」


「やったーーー!!!」


「ここで必要な作業はもう終わったわ。あとは家に帰って、ゆっくり処理できる。」


「じゃあ、今のところはまだ成果らしい成果は出てないってこと?」


俺は少し気になって尋ねてみた。


「そうでもないけど……うん、じゃあこれでちょっと遊んでみましょうか!」


『遊ぶ』。うん、そうだ、これがアリシアだ。


「えーっと……こうして……こうして……よし!アスランくん!向こうに転がってる魔晶骨を集めてくれる?できれば全部位揃えてほしいの。」


「了解!」


俺はアリシアの指示通りに、部屋の片隅に散らばっていた様々な部位の魔晶骨を拾い集めた……頭蓋骨も一つ含まれていた。幸いなことに、それはすでに魔晶化しており、淡い青色の光を放ち、滑らかで硬質な表面を持っていたため、人骨らしさはあまりなく、手に取っても不快感はなかった。集めた魔晶骨を指定の場所に置くと、アリシアは『迷宮の心』の操作を始めた。


「こんな感じ?わっはは、面白いわね。」


アリシアは魔晶骨をある程度配置し、どこからか取り出した高級魔晶石をその中央に置いた。


「楽しみ!」


ルミは目を輝かせていて、なんだかとてもワクワクしている様子だった。……いやいや、君たち女の子二人とも、この人骨の山を前にして、なんでそんなに平然としてるんだ?


「よし、術式発動!」


魔晶骨の下に不思議な魔法陣が浮かび上がり、空中にはいくつもの魔法式が絡み合って現れる。そして、中央の高級魔晶石を核に、魔晶骨がゆっくりと組み上がっていく。そして──


「お孃さま!小僧!神官の小娘!お久しぶりでございます!!!!!!!!」


「うわっ!!」


ルミと俺は同時に声を上げた。こ、これは!?あいつじゃないか!?


今、目の前に現れたばかりの魔晶骷髏士兵……いや、これは死霊魔法使いか? それが自分の身体をまじまじと見つめている。そして、なんと手足をぶんぶん振り回していた。


「わっはは!また生き返ったぞ!でもこの身体……不合格だな?もっと良いのにできなかったのか?」


「ほう?ご主人様に文句でもあるのかしら?別の死霊を副階層主にしてあげようか?」


「いえっ!とんでもない!ご主人様には絶対服従でございます!ましてやあなた様に対しては!生前、あなたのご一族には大変お世話になりましたから!!!」


一族?つまり家系のこと?もしかしてこのお喋り骷髏は、生前『エレナガード』家と関わりがあった人物だったのか?


「へえ?そうなの?じゃあ、言っていいことと悪いことの区別くらいは、分かってるわよね?」


「承知しております!心得ております!」


「じゃあ、少し黙ってて。今は邪魔しないで。」


「ははっ!仰せのままに、お孃さま!」


一体何が起きているんだ……?


「アスランくん、ルミィ、これが今日の成果の一つよ。あの情報群の中に、『迷宮の心』の操作マニュアルがあったの。」


「わあっ!アリネー、すごい!それで魔物が作れるようになったの?」


「そうよ。正確に言えば、『迷宮の心』を使って、あらかじめ定義された魔物を作り出せるの。ただし、死霊系と魔導系だけ。生物系はダメね。うーん、ちょっとゴーレムを作るのに似てるかも。」


「でも、あの骷髏、君を“ご主人様”って呼んでたよ?どういうこと?」


「あたしだけじゃないわ。あなたたちもあの子のご主人様よ。」


「えっ?俺たちも?じゃあ、『迷宮の王』を一緒に倒した者なら、皆ご主人様になれるってこと?」


「そうよ、それが『討伐の証』なの。あたし、言ったでしょ?『迷宮の心』の所有権を手に入れたって。」


ああ!そういう意味だったのか。ならば──


「つまり、次の冒険者たちが新しい『迷宮の王』を倒すまでは、『迷宮の心』の所有権はずっとあたしたちにあるってことか?」


「ふふ〜ん、そうだよ!アスランくん、本当に賢いね!」


「わあ〜、じゃあ私もこのヤツのご主人様ってことね?」


ルミはそのヤツの前へ駆け寄った。そのヤツはルミの敵意を感じ取ったのか、すぐに顔を背けた。


「ねぇ、ジジイ、踊ってみせてくれない?」


「ふん、わしは立派な大魔導士だぞ。神官の小娘の命令なんぞ聞いて、こんな馬鹿げたことを──」


……そのヤツは本当に踊り始めた。


「わ、わしは…ふん!そうだ!わしはお嬢様の仲間ということで、お前に顔を立ててやっただけじゃ!決して命令に従ったわけではないからな!」


この反応……


「わあ!!!アリネー!このヤツもツンデレだよ!まるであなたみたい!性格まで影響を受けるの?」


「ツンデレって言わないでよ!全然似てないからね!?」


「はは、俺もけっこう似てると思うけど!」


「うう〜〜アスランくん〜!あなたたち、ひどすぎるよ!」


「ははっ、冗談だって!それはそうと、魔物を作るのは分かるけど、どうしてまたあのヤツなの?」


「『迷宮の心』があいつの『擬似魂核』を回収したからだよ。なにしろ、生前は超一流の魔法使いだったんだし、活用しないともったいないでしょ?むしろ、あの『擬似魂核』をうっかり壊さなくて良かったわ。」


「さすがはお嬢様の目利き!わしは超超一流の魔導士じゃからな!もっとも、お若いのに自立しているお嬢様には到底敵わんがな。それにお前、浮気者の坊主よ、運がいいのぉ!お嬢様に加えて、このロリ神官の小娘まで連れて…羨ましいのぉ!」


このヤツ……踊ってるくせにまだ喋ってるのか?


「うぐっ!黙ってろって言ったでしょ?」


「は、はい、承知しました……」


「『擬似魂核』?それって何?」


「あたしたち魔法使いが自律行動する魔導具──つまり『ゴーレム』に組み込むための装置だよ。行動パターンを『擬似魂核』に設定して、それをゴーレムに組み込めば、命令に従って動いてくれるの。」


「なるほど、そういえば冒険者の能力試験で出てきた『ゴーレム』、あれがどうして自律的に動けるのか不思議だったけど、『擬似魂核』のおかげだったんだね。」


「それと、このジジイ──いや、普通の死霊系魔物が自律行動できるのは、死体に残った魔力記憶のおかげなの。本能的に動くだけで、自我はないわ。」


「記憶?魂じゃないの?」


「違うの。死霊系魔物ってみんな、死体に残った魔力の記憶で本能的に行動してるだけで、魂なんてもうとっくに消えてるのよ。死後しばらくすると、魂は自然に散ってしまうから。」


「えっ?じゃあ、このジジイがなんで違うの?生前の記憶まで持ってるじゃん?」


「少なくとも、その記憶の一部は『迷宮の心』にコピーされて、『擬似魂核』が作られたってのは確かね。このヤツが戦闘で負けて『擬似魂核』が壊れても、『迷宮の心』のバックアップから再構成できるはずよ。」


「わっ!?そんなことまでできるの?アリネー、これって『魔王覚醒』みたいなものじゃない?」


「えっ!?確かに……」


「でも、それってどうやってるの?アリシア、何か分かる?」


「そこが問題なのよね。『迷宮の心』を調べたとき、確かにこのジジイの『擬似魂核』のデータバックアップは見つかった。そこには行動パターンや性格、生前の一部記憶が含まれてたわ。でも、肝心の『どうやって抽出するか』は記録されてなかったの!」


「じゃあ……ジジイ、お前は知ってるか?正直に答えろ。」


「知らんわい、その部分の記憶は無い。」


このヤツ、踊りながら答えてる……


「うーん、これは気になるけど……今のところは解明できそうにないね。『迷宮の心』と同じく、古代の技術ってことにしておこうか。」


ジジイはまだ踊っている……ルミはもう飽きてきたようだ。


「よしよし、もう踊らなくていいよ。あ、そうだ、ここに紙と筆記具があるから、お前の最強魔法の術式を書いてみてよ。」


「ルミ?また変なこと言ってる?どんな命令を出したの?」


「うーん、だって、超一流の魔導士なんでしょ?だったら、秘伝の魔法を書かせて、アリネーの参考にしてもらえばいいかなって!」


……紙と筆の音がした。本当に書き始めたのか!?


「ふむふむ……わしの輝かしい功績をしっかり記しておかねば……」


「いやはは、まあいいか。どうせ暇なんだし。失われた魔法でも持ってるかもってちょっと興味あるし。ジジイ、ゆっくり書いてな。あたしたちはそろそろ帰るから。明日…いや、もしかしたら数日後にまた来るね。アスランくん、ルミィ、片付けて帰りましょう。」


「了解!」


……


こうして、俺たちは邸宅への帰路についた。その道すがら──


「アリシア、よく分からないんだけど、さっき作った魔物が俺たちを主人として認識するなら、今『地下城』の迷宮全体が俺たちのものってことになるんじゃないの?」


「そうよ。『迷宮の心』を操作すれば、『地下城』内の魔物をすべて使役できるの。」


「なにそれ!?そんなことできるの!?なんで今まで聞いたことないの!?冒険者の間でもそんな話聞いたことないよ?」


「そうだよ、ルミだけじゃなくて、俺も聞いたことない。」


「うーん…それはきっと、これまでの攻略者たちが大迷宮を制覇しても、『迷宮の心』の管理者インターフェースを開くことができなかったからだと思う……つまり、今日あたしたちが解読したあの部分ね。」


「えっ?つまり、暗号を解けた者だけが本当に大迷宮を支配できるってこと?」


「その通り。」


「うそっ!?じゃあ、俺たちって今日、ものすごいことしちゃったの!?」


「うん!すごく面白かったよ!あなたたちのおかげで、今日中に解読を終えられたんだからね!本当に助かったわ!……まあ、これから家で処理する情報が山ほどあるけど!」


「いや、そこが問題なんだけど!!」


もう抵抗するのはやめた。お嬢様は本当に自分が何をしているか、分かっていないのかもしれない……。



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