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十七、『迷宮の心』

俺たちは、アリシアが『迷宮の心』と呼んでいた場所へ入った。そこはあまり広くない部屋だったが、中央にはひときわ目を引く魔法装置があった。高さは三メートルほどで、空中に魔法文字が連なって浮かび、装置の各所を流れるように移動していた。


「これ、何?」


「『迷宮の心』、またの名を『迷宮デザイナー』。迷宮の機能を維持するための神器よ。」


アリシアはそっと近づき、装置の構造をじっくりと観察する。


「維持ってことは、この迷宮の地形やモンスターの配置、階層主の設定まで全部こいつがやってるの!?」


ルミは目を見開き、驚きの声をあげた。


「その通り。これは貴族や学者たちの間では知られているけど、一般の人たちはそこまで知らないと思う。実は、あたしも今日が初めての実物なの。」


「こんなの……誰が作ったのよ?」


「あたしにもわからない。ただ、これは古代の技術で、目的は地脈の魔力を効率よく収穫すること。」


「そうか!前に言ってたやつだ!迷宮討伐って、伐採や農作業と同じように『大地の恵み』を集める手段のひとつってやつだね?」


「その通りよ!」アリシアは満足そうに頷く。「君たち、小型迷宮の存在も知ってるでしょ?」


「もちろん知ってる。」ルミがすぐに答える。「迷宮というより、魔物が集まってるだけの巣穴みたいなものでしょ?」


「正解!小型迷宮は、地脈から少量の魔力が漏れ出す場所に自然にできる魔物の巣穴。」


「でも、七大迷宮は違う。地脈から大量の魔力が溢れ出す地点に、この『迷宮の心』を設置して初めて成立するの。もし『迷宮の心』がなければ、宝物も転送門も階層主も、もちろん討伐の証も存在しないわ!」


「それで、何が起きるの?」


「天然の大型魔物の巣窟が形成されて、魔物たちがあちこちに出現して、災害を引き起こすのよ。」


「わぁ!すごい!じゃあ、これは地脈を制御して、冒険者が魔物を狩りやすくするために、昔の人たちが作った神器なんだね!?」


「その通り!ちなみに、かつて神魔戦争の際に魔族が『迷宮の心』の一つを奪って魔境へ持ち帰ったの。それが、後に出現した第七大迷宮『魔域』を生み出した元になったとされているわ。」


「え?ちょっと見せて……」


アリシアは『迷宮の心』のそばにある石碑に目を向けた。そこには魔法文字がいくつも並んでいた。


「やっぱりそうだった。ここに説明があるわ。あたしたちがこの迷宮を攻略してここにたどり着いたことで、『迷宮の心』の所有権を得られるの。深層は六ヶ月間閉鎖され、その間に迷宮が徐々に回復する。そしてあたしたちは転送門で直接ここへ来ることもできるし、『迷宮の心』を持ち帰って、自分のものにすることも可能よ。」


六ヶ月も深層が閉鎖されるのか?まぁ、さっきの高位魔物たちが数日で補充される方がよっぽどおかしいもんな。でもつまり、しばらくはここで高レベル魔物を狩るのはできないってことか。


「うわぁ!じゃあ、どうする?これ、持って帰るの?」


「ダメよ、持ち出すと迷宮が崩壊してしまうから。この場所は高位魔物の巣窟になって、制御不能の災厄になるわ。近隣の町が真っ先に被害を受けてしまうの。」


「それはマズいね、じゃあ触らない方がいいな。」


周囲を見回すと、金銀財宝らしいものは見当たらなかった──あれ?隅の方に装備らしきものがある?


「ん?あれは武器と鎧……?」


「アスランくん、それこそがあたしが言っていた宝物よ。」


「装備か!へぇ、じゃあこれも『迷宮の心』の産物?」


「そうよ。伝説によると、これらの装備は『迷宮の心』が魔物たちから回収させて、ここで長年に渡って魔力を蓄えさせているの。」


「すごい!じゃあ、アリネー、全部持って帰ろうよ!」


「全部はダメよ。『鑑定』魔法で調べて、今持ち帰る価値があるものと、まだ力が足りないからここでさらに魔力を吸収させて成長させるべきものを見極めるの。」


「『鑑定』魔法?」


「そう、ルミィ。『鑑定』魔法は基本的な魔法よ。魔法を学んでいれば誰でも習得できるわ。」


「え?『鑑定』?その仕組みってどうなってるの?使うだけで装備の名前とか、性能とか、レア度まで分かるの?」


「まさかそんなことあるわけないでしょ?」


アリシアはクスッと笑って首を振った。


「…どれだけ優れた魔法でも、無からそんな情報を出すことはできないわ。」


「じゃあ、どうやって分かるの?」


ルミが興味津々で尋ねた。


「『鑑定』には三つのステップがあるの。」


アリシアは長剣を一本手に取った。


「まずは、魔力を注いで反応を読み取ることで、素材や基本的な性質が分かる。例えばこの剣は『魔晶鉄』でできているわ。」


彼女の指先が優しく剣身をなぞると、魔力の流れに応じて淡い青の紋様が浮かび上がった。


「次に、物に残された魔力を読み取ることで、かつての使用者の職業や、鬪気や魔力の強さなどの特性が分かるの。」


「もし魔法の署名や名工のサインが刻まれていれば、装備の名称や追加効果も読み取れるわ。」


「それなら、どの装備がレアで価値があるか、すぐ分かるってことだね?」


「その通り!最後に、装備に刻まれている魔法術式を短時間だけ起動させて、機能を確かめるの。」


「すごいなぁ!じゃあアリネーは、ここで一つずつ調べていくんだ?」


「ええ、少し時間はかかるけど、そんなに長くはかからないと思うわ。」


アリシアはあたりを見回した。


「休んでてもいいし、気になるものがあれば持ってきて。優先して調べてあげるわよ。」


「うん!お兄ちゃん、一緒に……あれ!?ちょっと、お兄ちゃん、待ってよー!」


ルミの言葉が終わらないうちに、俺はもう部屋の片隅へと向かっていた。目を奪われたものがあったからだ。


壁に寄りかかるように静かに置かれていた大剣──その存在感は圧倒的で、言葉では言い表せない重圧を放っていた。自然と手が伸びて、柄を握り──


「この剣……」


試しに、溜め斬りのスキルを発動しようとすると──なんだこれは!?


「アリシア!これ見てくれ!なんだこれ!?」


「アスランくん、どうし──その両手剣?ちょっと、『鑑定』してみるわね……」


アリシアが剣に手を当てると、淡い青光が剣全体を貫いた。剣の各部に魔法文字が次々と浮かび上がる──


「こ、これは……!『征服王・オーガスティン』の剣よ!」


「な、なんだって!?」


「間違いないわ。魔法署名に、製作者の名前と『偉大なる征服王・オーガスティンに捧ぐ』って記されているの。」


俺は呆然とした。これが……あの人物のものだったのか!?


「じゃあ……これは十年前の大戦で使われていた武器なのか?」


「その可能性は高いわね。戦後に失われたか、誰かが『地下城』の攻略に使って、その後魔物に回収されたのかも……」


「この剣の素材は上質な魔晶ミスリルで、それも……ここで変化したものじゃない!最初から魔晶ミスリルで鍛えられた逸品よ!すごい宝剣!しかも……ここで約十年の時を経て、その性能がさらに強化されてるわ!」


「ぼ、俺がもらってもいいの!?」


「もちろんよ!」アリシアが笑って言った。「でも、他にも見てみたら?もっとお宝があるかもしれないわよ?」


「う、うん!でも、これだけでもう大満足だよ!」


俺はうなずいたが、それでも剣をしっかりと握りしめ、そのずっしりとした重みを感じていた。


「アリネー!これ、すごく面白いよ!これが何か見てくれない?」


ルミが興奮気味に叫んだ。


「ふふっ、いいわよ!」





「アリシア、ルミ、君たちが持ってるのは何?」


「わあっ、この二つの装備はすごいのよ!この真っ赤なセット、見て!」


アリシアが興奮しながら装備を持ち上げた。


「このセット装備の効果は、なんと魔法演算速度が二倍になるの!二倍よ!?どうやってそんなこと可能にしたの!?それに魔力消費の軽減、火属性ダメージが二倍になるという超強力な効果もついてるの!他にもいろんな機能があって……とにかく、これは超レア装備よ!」


「火属性ダメージが二倍?さっきの『手のひらの太陽』の威力が二倍になるってこと?」


「違うわよ、さっきのは火属性魔法じゃないもの。でも『煉獄・火球術』みたいな魔法なら効果あるわ!きゃー!早く試したい!」


「うん、わかった、それは確かにアリシアにぴったりの装備だな!で、もう一つのは?」


俺はルミに向き直った。


「お兄ちゃん!この装備も超すごいよ!」


ルミが淡い青い光を放つ装備を抱きかかえて興奮していた。


「魔法使いと聖職者、両方が使える装備なんだよ!見た目は水属性の魔法装備っぽいけど、実は精神力消費が半分になる効果があるの!しかも、主武器の『氷華王冠杖 (アイスフラワークラウンロッド)』は奇跡効果を増幅させる神聖鉱石で作られてて……しかも、アリネーが言うには、この神聖鉱石はもう『魔晶化』してるんだって!効果はまだ不明だけど、きっと強くなってるよ!」


精神力消費が半分!?それってつまり、ルミの弱点が完全に克服されたってこと!?これさえあれば、ルミの奇跡の使用回数が一気に倍増するじゃないか!


「わあ、君たち、すごいもの見つけたな!」


装備の性能は確かにすごそうだ……でも、俺の頭に浮かんでいるのは、その性能じゃなくて……


本当に……これは服なのか?


二人が手にしている装備、なんか、布の量が……少なすぎないか?ちゃんと覆えるのか???特にアリシアの装備、色も派手だし、なんか鎖みたいなのも混ざってるような……?そして、ルミの装備も……ちょっと涼しすぎないか?


ち、違う!考えすぎだ!?こんな高性能装備なんだから、デザインなんてどうでもいい!大事なのは性能だ!


「お兄ちゃん、なに考えてるの?」


ルミが突然ジッと俺を見てきた。その声は妙に鋭い。


「ぼ、俺はただ、君たちの見つけた装備がすごい性能だなって思ってただけだよ!」


「アスランくん、この装備……何か問題でも?」


アリシアが首をかしげて、困惑した表情を浮かべていた。


「い、いや、よくわからないけど、家に戻ってから試したら?さすがにここでは着替えられないよね?あっ!そうだ、他にもいいアイテムはあった?」


「この二つの他にも、いくつか良いアイテムがあったわ。あたしが選別しておいた。あっ、それと、高級な魔晶石もいっぱいあったわよ。」


「よし!それじゃ、この転送門から帰ろう!今日はしっかり祝わないと!」


うん、ちゃんと祝わないと……って、やっぱり俺も見たいな。この装備の「効果」、本当にこの目で確認したい……あれ?そういえば?


「アリシア?その装備、着てみるとして……どこでテストするつもり?さすがに屋敷の裏庭じゃ無理だよね?」


「それもそうね、誰も来ない広くて荒れ果てた場所がいいわね……」


「えっ?アリネー、それってさっきの王の部屋じゃない?」


「うん?本当だ!!!わあっ、急に試してみたくなってきた!どうする?ルミィも着てみる?」


「いいかもね!私が浄化するね、『聖霊浄化』!」


「わあっ!ルミィ、ありがと!それじゃあ……」


「それじゃあ俺は、先に部屋の外で見張ってるね!」


もちろん、俺は一秒も迷わず『迷宮の心』の部屋から出た!俺は正真正銘の紳士だからな。





「え、え──?」


「きゃははは──」


「アリネー!だ、だめだよ…」


「ルミィ!やめなさい…きゃっ、きゃあ!」


「わっ!なるほど!あ……だ、だめでしょ!?どうしよう!?」





『迷宮の心』の部屋からは、ずっとアリシアとルミの声が聞こえていた。大きくなったり小さくなったりで、何を話しているかまったく分からない。うん、うん、俺には本当に聞こえないし、想像なんて一切してない……そうだ、俺の新しい武器を見よう!彼女たちのことなんて気にしない!


「お兄ちゃん!もう着替えたよ!」


アリシアとルミが『迷宮の心』の部屋から出てきた。彼女たちの装備……え?これは嬉しいのか、それとも残念なのか?


彼女たちはそれぞれ魔法使いのローブを着ていて、体を完全に覆っていた。しかも袖付き!これなら動いても全く問題ない!


ああ、なるほど、あのセットには魔法使い用ローブも含まれていたのか……そうだよね!これが普通だよね!さっきの布の量はどう考えても少なすぎたよ!ははは!べ、別に期待してたわけじゃないよ!?


「お待たせ、アスランくん。」


アリシアはすごく落ち着いた様子だったけど、顔は真っ赤なトマトみたいになっていた。そして手はローブの裾をぎゅっと握っていて、まるでそれが突然消えてしまうのを恐れているかのようだった。


……な、何をそんなに緊張してるの???


「わあ、お兄ちゃん、見て!この『氷華王冠杖』!超精巧でしょ!すごくきれい!めちゃくちゃかわいいよね!」


「じゃあ、もう聖教会からもらった杖は使わないの?」


「この杖の効果を試してみたいの!うーん…広域でいこうかな…『聖霊浄化』!!!」


『聖霊浄化』の光が高速で周囲に広がり、ほんの一瞬で広大な部屋を完全に覆った。でもルミの動きは止まらない……


「よし!発動完了。うん……こ、これは……」


「ルミ、どうしたの?」


「こ、これ…アリネー!」


ルミが泣いた!?な、何が起きたんだ!?


「アリネー!!!さっきの、さっきの『聖霊浄化』!その範囲が!めっちゃ広かったの!自分でもどれくらいか分からない!」


「うんうん、ルミィ、よしよし、ゆっくり話してごらん?」


「さっきの『聖霊浄化』の範囲!すごく大きくなってた!もう、自分でもどこまで届いたか分からないよ!」


「ええと、あたしの観察によると……光の拡がるスピードと、あなたの発動時間から計算して、おそらく……」


おそらく?


「おそらく、『フローラ』の街全体をカバーしていたんじゃないかしら。」


『フローラ』の街全体!?!?ルミ!?君、一体どんな神器を手に入れたんだよ!?


「ま、街全体……?」


「しかも、あれは全て『氷華王冠杖』と装備の増幅効果によるものだから、ルミィの奇跡力の消耗は一切増えてないの。」


な、なにそれ!?さすがにチートすぎない!?これが『七大迷宮』を突破した報酬ってことか!?


「わあ───わ、私すごいっ!」


「そうよ!ルミィはすごいの!だってこれは効果を『増幅』するだけだから、元のルミィの奇跡自体がチートじゃなきゃ、ここまで強くなれないもの!」


「よし!じゃあ次はあたしの番ね!」


ルミのテスト結果を見て、アリシアももう我慢できない様子。興奮がダダ漏れだ!


アリシアは両手で半身ほどの長さの真っ赤な魔法杖──『巫皇魔杖』って言ってたっけ?──を持っていた。


「じゃあ、まずは基本の『煉獄・火球術』ね?魔力はそんなに入れずに、ちょっとだけでいいわ、そして……」


良かった、アリシアにも自制心はあるんだな。じゃないと、どんなに広い場所でも持たないよな?……え?いや待って、『手のひらの太陽』のときも部屋は無事だったし、大丈夫……だよね?


藍白い炎の小さな『煉獄・火球術』がアリシアの杖の先に現れた。そして、そのまま真っすぐ部屋の反対側の壁に向かって放たれた!


ドンッ!!!!!火球が壁に触れた瞬間……(以下省略)


…小型の『煉獄・火球術』が壁を蒸発させ、その後ろの岩までも大きくえぐり取った。


「わあっ!すごい!」


「アリネー、それ私のセリフだよ。」


「でも、でも、本当にすごいわ!!!アスランくん!ルミィ!あ、あたし、ほんのちょっとしか魔力使ってないのに!この装備の効果、強すぎじゃない!?もしも!もしもあたしが、あ、あたしが……」


やめて!それ以上はやめてくれ!!


アリシアは杖を高く掲げ、目の前には、さっき魔晶骸骨竜をほぼ倒しかけたあの大型の『煉獄・火球術』が現れた!


「やははっ、詠唱時間までこんなに早くなったの!?2倍って話じゃなかった!?これ、倍どころじゃないよ!わぁっ、やっ、ははははっ!」


だめだ!壊れた!お嬢様が壊れた!!


俺はアリシアの顔に浮かぶ、『魔法マニア』アリシア特有のあの狂気じみた笑顔を見ながら、空気が歪むほどの真っ白な火球に目をやる……やばい、これは本当にやばい!


「わっ、わわ、やっ、ははっ!はははっ!撃つの?撃っちゃうの?撃たないなんてもったいないよね!?」


い、いや!自問自答しないでくれ!!


「ここ、『手のひらの太陽』だって耐えたでしょ!?たかが『煉獄・火球術』くらい、大丈夫でしょ!?やっ、ははっ!ははははっ!じゃあ……!」


まずい!その『煉獄・火球術』はさっきのとレベルが違う!もう魔晶骸骨竜は消えたんだぞ!?今その火球、壁に撃つ気か!?見ろよ!その熱気、アリシアのローブすら燃えかけてるじゃないか!もうダメだ!見てられん!そうだ!『迷宮の心』の部屋へ!『闘気纏身』!!


「撃てっ!!!」


その『煉獄・火球術』は『地下城』の最終ボス部屋の壁……いや、もう壁がない岩盤に直撃した!爆風なんてもんじゃない!部屋全体が震えている!高すぎて見えない天井から石片が落ちてくる!まさか、崩壊するのか!?部屋ごと!?


「わああああああ──すごい……」


お嬢様!感動してる場合じゃない!!俺は即座に全速力で動いた!片腕でアリシアの腰を抱え、もう片方で固まったままのルミを掴み、『迷宮の心』の部屋まで全力疾走!頼む、この部屋の構造、耐えてくれよ!


部屋のドアを閉める。外からはまだ崩落する岩の音が聞こえる。部屋の中は……揺れはない、ふう、どうやら無事だ。


「アリシア、おまえ……」


その輝く瞳、満面の笑み……もういい、怪我もないし、もう好きにしてくれ。


「わあああ──この装備、すっごいよ!研究したい!仕組みを知りたい!魔法回路がどうなってるのかも!」


アリシアは地面から飛び起きて、なにやら呟きながら魔法用語を口にし続けている……え???


「魔力共鳴かな?それとも……?あれ?アスランくん?なんか、顔が変だよ?」


「お、俺、こ、これは……俺は……言わない!!!」


そう!沈黙こそ、『嘘を見破る』に対する最強の防御だ!


「うえぇ────アリネー!ひどいよ!まさか……先手を打ったのか?」


「先手を打ったのか?なにを……えっ!?な、なんで!?どうして!?」


さっき見た通り、アリシアのローブは確かに燃えていた。わかった、あのローブはセット装備の一部じゃなかったんだ──だから耐熱性もなかった。でも、問題はそこじゃない。問題は、すでにボロボロになったそのローブの下……


アリシアが装備していたその魔法装備の姿……もう、隠しきれていなかった。


紅蓮の炎を基調とし、ドラゴンの翼と爪をモチーフにした魔法セット;


胸……ドラゴンウィング型のブレストガードが、あの大きな……(以下略);


胸の下から骨盤まで一切覆われておらず、あのスラリとしたくびれ……そして下腹部までもが露出している;


燃えるような紅と黄の光沢を放つ胸当はまるで半分焼け焦げたようで、スカートの上部からは、あの場所から伸びた明らかな黒いストラップが見えていた;


右腕には黒いシルクのアームカバー、その上に絡まる深紅と金属色の鎖は……首元の……チョーカーにまで!?!?


レザー素材のチョーカーには、大きな橙色と小さな橙色の魔晶石が嵌め込まれており、先ほど見た真紅の巫皇冠とドラゴンウィングヒールと相まって、気高くも狂気的な印象を放っていた。


しかも……それを身に着けているのがアリシア……俺の心臓はもう爆発寸前だった。ああ……もう、我が生涯に一片の悔いなし!。


──以上、一秒で俺が動体視力で得た観察結果である。生き延びるため、俺の首はすでに反対側を向いていた。


そして……


「ひどいよぉー!アリネー!さっき、約束したでしょ!?お兄ちゃんに見せないって!ずるい!私も見せる!」


ルミ…ルミさん、何をするつもりだ?


ルミは迷いもなくローブの前を解き、一振りで背後へと投げた!


ま、待て!?その動き、違うだろ!?あれって、闘技場の決戦直前にやる「脱装」ポーズじゃないか!?違うだろおお!!あ、あああああ───


淡い青を基調とし、氷花と氷の蔦をモチーフにした魔法セット;


胸……氷の蔦と葉っぱを象った胸当、ルミだけど、ちゃんと……(以下略);


胸の下から骨盤まで同じく何も覆われておらず、あのスラリとしたくびれ……そして下腹部までもが露出している;


ミニスカートは虹色の輝きを放ち、スカートの上部からは、あの場所から伸びる白いストラップとリボンが……はっきりと見える;


右手には氷の蔦が絡まり、肩元まで伸びて氷塊のような袖を形成している;


水晶の氷花ネックレスには、黄色の魔晶石一つと青の魔晶石五つが嵌め込まれており、先ほど見た氷晶の花冠と水晶のハイヒールと完璧に調和し、優雅さと神聖さが共鳴していた。


しかも……それをルミの小柄で儚げな体が身に着けているなんて……俺はもう一度、死んだ。


以上も俺が動体視力で一秒以内に導き出した観察結果である。生き延びるために、俺は両目を完全に手で覆っていた。


「ふん!見てよ見てよ!見ないの?せっかくの機会を無駄にする気!?お兄ちゃんに私の実力を見せつけるんだから!」


やめてくれ、俺はまだ死にたくない。


「ふん!アリネー、あなたも一緒にやって!このスケベに見せつけて、その心臓を爆発させてやるの!」


「そ、そんな…あ、あたしは……そんなこと……」


そう、それでいい!アリシア、お前はいつも通りでいいんだ!叫び声を上げて、ルミの狂った行動を止めてくれ!俺はビンタの覚悟もできているぞ!さあ来い!


「そ、それで…アスランくん…」


「はいっ!どうぞ!」


「……手を……下ろしてくれない?」


はい!もちろんです!さあ、叩いてください!俺は防御しません!





え?動きがない?ゆっくりと目を開けると……そこには──アリシアが……


「見てくれないの?」


えええええええええええええ!?アリシア!キャラ設定と違うよ!?どうして!?


「見てよ……」アリシアは小さくささやいた──


なんでだ!なんでそんな犯罪……いや、愛しくなるような声でそんなセリフを言うんだ!その表情はズルいだろ!その格好で!可愛すぎる……いや、犯罪!いや、これはもはや犯罪級の誘惑だ!理性が……理性が消えそうだ!ここは俺たち三人しか入れない部屋だって分かってるのか!?何が起きてもおかしくないんだぞ!?


「お兄ちゃん!私のも見て!」


「アスランくん……」


お前ら……俺に何をさせる気だ!?本当に取り返しのつかないことになってしまうぞ!?くっ、もうどうにでもなれ!


ゴン!!!


命を守るため、俺は全力で地面に頭を打ちつけた!


「ふぅ、すっきりした……」


俺は意識を失った。





目を覚ますと、魔法使いの服装をしたアリシアと、神官の服装をしたルミが心配そうに俺の横に座っていた。


「お兄ちゃん、大丈夫?どうして寝ちゃったの?戦闘で疲れちゃったの?」


「アスランくん、目が覚めたのね。もう時間だから、戻りましょう。」


え?俺、寝てたの?……あれ、なんかアリシアの目線が少しおかしい気が……何かあった?さっき……いやいや、気のせいか……


「や、やあ、えっと?俺……どれくらい寝てた?」


「五分くらい?もう、話は後!帰るよ!」


おかしいな?なんだかルミが妙に急かしてるような……


「う、うん、帰ろう……」


俺は立ち上がって、軽く体を伸ばしながら部屋の出口に向かって歩いた……ん?開かない?


「アスランくん!そっちじゃないよ!こっちの転送門からだってば!」


「え!?あ、そう?わ、わかった!荷物は全部ある?あ、これは俺が持つよ……」


「やったぁ!七大迷宮の『地下城』を攻略できたお祝いしなきゃ!」


「ふぅ、そ、そうだね!ルミィの言う通りだよ!ありがとう、二人とも!君たちがいてくれたおかげで、この迷宮を攻略できたんだ!」


「うん!アリネー、お礼なんていいよ!」


アリシアとルミは目を合わせて、どこか気まずそうに笑った。


そしてそのまま転送門を通って屋敷へと戻り、俺たちの祝勝会が始まった。


挿絵(By みてみん)



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