表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
12/82

五、能力檢定測試

朝食(尋問)時間は、少し気まずい雰囲気の中、どうにか終了した。


「あーん、さて、さっきの出来事は一旦置いといて。今日の予定について話し合いましょうか。」


「うん、分かりました。今日はどうするんですか、お姉さま。」


「ちょっと申し訳ないんだけど、今日は寝坊しちゃったから、迷宮での訓練はお休みにしましょう。うーん、この機会に、ルミちゃんの状況を確認してみるのはどうかしら。ルミちゃん、気にしない?」


「全然大丈夫です!むしろお姉さまに気にかけてもらえて嬉しいです。」


え、俺もいるんだけど?無視されているのか、それとももう気にされていないのか?良いことなのか悪いことなのか、判断がつかないな。


「分かったわ。冒険者くん、まずいい知らせがあるのよ。ルミちゃんは昨夜、眠りに落ちることはなかったわ。」


「え?ということは、彼女……ルミナスさんの眠気は消耗と関連しているのか。昨日の訓練では限界まで消耗していなかったってこと?」


「ルミでいいよ。これは全部──いや、ただお姉さまのおかげなんだから、変に勘違いしないでね。」


え~!?一体何が起こったんだ?態度が普通になった!?


「分かった、ルミさん。」


「まだ仮説の段階だけど、ルミちゃんの眠気が現れるのは私たちが一度だけ目にした現象なの。ルミちゃん、自分が突然眠りに落ちる原因について何か知ってる?」


「うん、たまにそういうことがあるけど、聖教会の他の見習い神官たちでもよく見かけるわ。」


「じゃあ、聖教会ではその状況について何か説明してるの?」


「説明?何を説明するの?ただ単に疲れたら眠くなる、そんな感じでしょ?」


「ふむ……そういうことなら、それが偶発的なものでも個人特有のものでもないってことね。私の考えを話すけど、普通、魔法や身体強化、それに奇跡の召喚を行うには、二つの身体的要素が関わるのよ。ルミちゃん、聖教会で教わらなかった?」


「教わらなかったわ。その二つの要素って何?」


「うーん、例えば奇跡の召喚には、どんな条件が必要?」


「条件?まず信仰心が必要で、あとは神託を受けることかな。」


「そうよ。神託を受けることは基本条件ね。でも奇跡を召喚する際に消耗するのは奇跡力なの。」


「うんうん。」


「こういうのは冒険者の基礎知識よ。ギルドの新人マニュアルにも載ってることだもの。」


おいおい、こっちを見て言わないでくれ、お嬢様。ギルドの新人マニュアルならちゃんと読んでるよ……たぶん。


「でも、もう一つ身体的な条件があってね。あまり言及されないのは、それが当たり前すぎて問題になることがほとんどないから。精神力ってやつよ。」


「精神力?」


そりゃ、当然のことだな。


「そう、たとえば『闘気強化』や魔法、奇跡の使用では、脳内の対応する演算領域を使う必要があるの。それを大量に使うと精神力が消耗して疲れを感じるのよ。ただし、それは体の疲労ではなく、精神的な疲労ね。」


「疲れる?そんな感じしないけど。」


ルミさんって、全然疲れを感じないタイプなのか?


「そうね、普通は感じないわ。それは読書なんかと同じくらいの消耗だから。でもルミちゃんみたいに奇跡力が非常に大きい場合、長時間にわたって強力な奇跡を召喚すると、精神力が限界を超えてしまうの。」


「それって魔法使いが経験する”精神力低下”(マインドダウン)と何が違うの?」


「魔法使いは短時間に大量の複雑な魔法を使うことで精神力が急激に消耗されるけど、それは完全に消耗するわけじゃなくて、オーバーロード状態になるの。それで演算領域が機能不全を起こし、魔法が使えなくなったり、目眩や体温上昇、思考の消極的な副作用が出るわ。一方で、短時間の休憩で回復することもできる。でも、ルミちゃんの場合は精神力が過度に消耗されるのよ。」


それなら理解できる。本を読んでいるときに知らず知らずのうちに眠り込んでしまうあの感じ、精神力の消耗が甚大だってことだな。


「じゃあ、私の精神力が弱いってこと?お姉さま。」


「ううん、弱いんじゃなくて、ルミちゃんの奇跡力に比べると相対的に足りないだけだと思うわ。ねえ、冒険者登録したときに能力測定の結果ってもらった?」


「それ何?測定なんてするの?」


「え~!?冒険者登録するときに必ずやる測定だよ!?」


合格しなければ登録できないし、料金も取られる!若者たちが不合格で検査費を無駄にする例がどれだけあることか。


「そんなのやってないよ。大神官の紹介状を渡したらそれで登録完了だったわ。ほら、B級冒険者の証明。」


「B、B級?アリシア!それどういうこと?」


「えっと……それはその……紹介状の力ね……」


お嬢様は目をそらして俺の視線を避けた。


「分かるでしょ?オリシウスの神官なんて貴重な戦力なんだから、ここで働いてもらうにはそれ相応の優遇が必要なのよ……慣例じゃなくて、交渉と妥協の結果ってことなの。」


「B級……普通の冒険者ならC級に上がるだけでも数年かかる。B級なんて優秀な能力を持つか、チームでの協力が必要なレベルだ。それが今や紹介状一枚で!?」


「えへへ…」


ルミはB級冒険者の証を軽く揺らしながら、満足げな微笑みを俺に向けた。


「まあ、そういうこと。」


ブラックボックスの仕組みだな!ギルドの裏のボスめ!


「じゃあ、その能力検定テストって何なの、お姉さま?」


「うん!それなら、冒険者くん、前にテストをやったって言ってたよね?この機会にその過程を話してみてよ。あたしもその時のことを知りたいし。」


「え?ああ、それなら簡単に話すけど。」


これは二日前のこと。ギルドで能力検定テストを予約した。冒険者の評価は以下の三つの側面に分かれている:


『個人総合評価』

能力検定テストを通じて、冒険者の様々な能力を評価する。体力、耐久力、精神力、闘気、魔力、奇跡力、力量、敏捷、意志力などを数値化し、E-級からSS+級までのランク付けを行う。


『職業総合評価』

同じく能力検定テストを通じて、特定の職業ロールへの適性を評価する。複数の職業検定を同時に受けることも可能で、適性に応じてギルドから職業方向の提案もされる。基本的には、スキルと身体能力が適合すれば、誰でも自分の職業を決められる。こちらもE-級からSS+級まで。


『冒険者ランク』

ギルドクエストを遂行してギルドポイント(GP)を蓄積することで一定のポイントに到達すると、個人総合評価と職業総合評価がギルドの基準を満たしている場合にランクが上昇する。例えば、C級に上がるためには、両方の評価がD+以上であることが必要。同じくランクはE-級からSS+級まで。


誰でもギルドで能力検定テストを予約できる。以前からアリシアと探索任務を続けていたおかげで、いつの間にかGPを結構稼いでいたが、能力検定を受けていなかったため、ずっとE級のままだった。アリシアに「そろそろ記録を更新したらどうか」と言われたのだ。


まあ、「領主クエスト」を受ける分には冒険者ランクはそれほど重要ではないし、中層をソロで探索するときもクエストを受ける必要はなく、魔晶石や魔物の素材を換金するだけでも十分だったから、ずっと放置していた。それに能力検定テストはお金がかかる。ランクが上がるほど高額になるので、もう少し実力を上げてから受けたほうが割に合うと思っていた。


「えーと、前回の検定結果は……E級ですね。E級冒険者の能力検定テストは……料金が銀貨50枚です。」


受付嬢に銀貨50枚を渡した――だいたい城東の宿屋の2か月分の家賃くらいだ。ちなみに能力検定テストは冒険者ランクに応じた料金がかかる。D級なら銀貨100枚(金貨1枚)、C級なら金貨5枚、B級だと金貨20枚、A級以上は金貨100枚を超えることもあるとか……。ランクが上がるほど準備する魔導具の品質が高くなるのが理由らしい。その代わり、高ランク冒険者は待遇も格段に良くなる。


「それでは、能力検定テストを始めますね。」


検定テストの内容は結構多岐にわたる。個人総合評価の部分は比較的シンプルで、闘気、魔力、奇跡力の測定は魔法道具を使って行う。一方で、スキル使用によって変動する数値は特定のアクションテストが必要だ。例えば、敏捷性を測定するにはスキル使用が可能な状態でランダムに出現する魔法の投石(おそらく無害?)を回避するテストを行う。また、力の測定では、全力で巨石ゴーレムを攻撃し、強化スキルの有無で最大値と基本値を測定する。


「それでは、冒険者さん。あなたは現在E級なので、このレベル10の巨石ゴーレムから始めてください。破壊できなければ剣技を使い、それでもダメなら強化スキルを使ってください。」


「了解です。前回の検定の手順は覚えていますから。」


レベル10の巨石ゴーレムね。まずは通常攻撃だな。


「バキンッ!」


「いいですね、冒険者さん!この巨石ゴーレムは1体ごとに10レベルずつ上がりますので、順番に攻撃してください。」


「分かりました。」


順番に攻撃し、レベル50で破壊できなくなった。


「なかなかですね、E級検定としては優秀ですよ。それでは次のテストに……」


「まだ強化スキルを使っていませんけど。」


「あ!?そうでしたね。それでは続けてください。」


全力一撃でレベル50のゴーレムに挑んだ。


「バキンッ!」


「ひゃあ!?」


受付嬢が悲鳴を上げた。


LV50のゴーレムが吹き飛ばされ、粉々になって訓練場の壁に激突した……幸いゴーレムは既に砕け散っていたので、壁への被害はそれほど大きくなかったようだ。


「ヘレンさん!?ゴーレムのレベルを間違えたんですか!?」


「そんなことありません!ラベルにちゃんと書いてあるし、さっきまでは確かに壊れませんでしたよね!?」


「じゃあどういうことだ?彼、Eランクなんですよね!?」


「ええ、記録によれば……半年前のテスト結果ではそうです。」


「半年でここまで強くなるものなのか?それなら……次はLV100のゴーレムを試してみよう!」


(中略)……粉砕。


「次はLV125だ!」


(中略)……粉砕。


「試験官!どうしますか?予算オーバーです!」


試験官と受付嬢が小声で相談している。


「予算オーバー!?100級のゴーレムを壊された時点で赤字ですよ!これ以上壊させられませんよ!」


「でも評価はどうするんです?Bランクを与えるには150級のゴーレムを壊さないと基準に達しません!150級を試させますか?」


「もう一段飛ばして200級にしますか?それでダメなら逆に下げて調整してみます。」


「200級!?それはAランクの基準だぞ。倉庫には200級が1体しかないし、それ以上のものはない。」


200級ゴーレム。(中略)……粉砕。


やはり高ランクゴーレムの耐久性は高く、吹き飛ばすことはできなかったが、その場で粉々に砕けた。


「…………。」


試験官たちはもう驚きすらしない様子だ。


「どうする?倉庫にはこれ以上のゴーレムはないぞ!」


「Aランク以上、いやA+ランクでいいんじゃないか?これ以上はテストしなくても。」


結果、俺の力量(最大値)はA+ランクと評価された。


職業総合評価の方はさらに複雑だ。まずスキルに関する質問に答えることから始まり、これにより個人の能力値やスキルを基に職業適性が分析される。俺の場合は比較的単純で、主に戦士スキル、いくつかの斥候スキル、そして唯一の魔法スキル「低級回復」のみ。結果として戦士としての適性が判断され、戦士の総合評価テストに進むこととなった。


戦士の総合評価テストは模擬戦が含まれる。対戦相手はギルドが準備したゴーレムで、複数の試験官が審査を行う形式だ。


「それでは冒険者さん、あなたの能力を考慮し、これから150級の異なる属性を持つゴーレム3体との模擬戦を行います。全力を発揮して戦い、我々に実力を見せてください。」


「了解しました。」


要は倒せばいいんだな?それなら全力で挑むまでだ。


「では、開始!」


戦闘が始まると、雷光ゴーレムは雷光魔法を駆使して瞬間移動し、視界をかく乱してきた。火焰ゴーレムは背後から多数の火球を生成し、周囲に漂わせている。毒霧ゴーレムは毒霧を撒き散らし、俺の移動を制限しようとする作戦のようだ。


だが問題ない。この程度なら速度で突き抜けられる。

俺は軽く溜めを作り、両手剣を一振り。剣先が床をかすめ、地面を砕いて小規模な砂塵嵐を巻き起こし、同時に剣気で毒霧を吹き飛ばす。


火焰ゴーレムをロックオンし、一直線に突進する。その間、砂塵を抜けて飛んでくる火球がいくつも見えたが、問題ない。両手剣を軽く振り、火球を次々と斬り裂いて進む。


すると、雷光ゴーレムが左前方に瞬間移動して奇襲を仕掛けてきた。しかし、感知拡張と思考加速のスキルを発動中の俺にとって、それはまるでスローモーションのようだった。一撃で粉砕。


次に毒霧ゴーレムが防御態勢に入り、高濃度の毒霧を身にまとい接近戦を封じるつもりらしい。だがそんなことは気にしない。


俺は突進を続けながら、火焰ゴーレムの攻撃を左右に回避しつつ接近。両手剣を腰の中央に突き刺し、剣身をねじり込んだ後、前方に一歩踏み出して剣を上方向に振り抜く。火焰ゴーレムは瞬時に三つの破片となった。


その右上半身を左手で掴み、毒霧ゴーレムに向けて全力で投げつける。破片は砂塵を突き抜け、毒霧ゴーレムの右側を直撃したが、どうやらダメージが足りないらしい。もう一度、左上半身を手に取り、闘気で強化して再び投げつける。今度は直撃で粉砕。


約30秒ほどで戦闘は終了。うん、150級ゴーレムの耐久力は中層にいる普通の魔物と同じくらいだな。3体でもそこまで苦労しなかった。


外で観戦している試験官たちを見ると、みんな呆然としたままだった。……採点中か?次は何をするのか指示を待つしかないな。


「えっ!?」


突然、一人の試験官が驚きの声を上げた。


「おい、声を抑えろ!失礼だろ!」


「だって、これは今日のE級検定じゃないですよね?A級のつもりで来たなんて話、聞いてませんよ!?」


その試験官は声を抑えたつもりだろうが、感知スキルを発動中の俺には聞こえていた。


「落ち着けって!お前一人で評価するんじゃないんだから、俺たち全員で採点してるだろう!」


「どうやって採点するんだ?150級ゴーレムとの1対3模擬戦が30秒だぞ!?『闘気纏身』た!あの速度と反応、英雄級戦士として評価するしかないだろう!」


「ギルド会長を呼ぶか?」


「待て、少し考えさせろ!」


「もう一戦やらせるか?難易度を上げて、一気に10体とかどうだ?」


10体?いいな、体をほぐすにはちょうどいい数だ。


「だから落ち着けって!そんなことしたら予算オーバーだ!それに、今日の試験はE級用の準備しかしてないんだぞ!」


「でもあの結果、S級相当だろう?A級超えの評価を出す準備がいるぞ!」


「だからこそ予算が足りないって言ってるんだ!これ以上試験は無理だ!」


小声で何やら相談が続く。


「冒険者さん、申し訳ありませんが、我々は少し会議をする必要がありますので、しばらくお待ちください。」


試験官の一人がそう言って場を離れた。……150級ゴーレムがそんなに高価なものだったのか?

……


「それで、その結果はどうなったの?」


アリシアは興味津々の様子で目を輝かせながら尋ねてきた。


「ああ、その後はもう追加のテストをせず、結果を直接出されたよ。」


「その検定記録カード、見せて!ねえ、見せて!」


俺はアリシアに検定記録カードを渡した。


「ええっ!?全部Aランクじゃない!」


「えっ?それってどういうことですか?私も見たい!」


ルミナスも身を乗り出してカードを覗き込む。


検定記録カードは能力検定の結果を記録したもので、触れる位置によって詳細情報が表示される。能力ランクや冒険者ランクはもちろん、名前や性別といった基本情報も記載されている。左上には小さな魔晶石が埋め込まれており、これがカードの魔力源らしい。


個人総合評価: A-

職業総合評価: A+(戦士)、A(斥候)

冒険者ランク: A


「えっ!?冒険者ランクがA!?」


「そうだよ。」


俺は新しいA級冒険者の証を取り出して軽く揺らしてみせた。


「くっ、悔しい……!」


「ふふっ!面白いわ!結局どれだけギルドに損をさせたの?儲けものじゃない!」


アリシアは笑い転げ、目に涙まで浮かべていた。


「いや、ゴーレムの値段なんて知らないけど。」


冷静に考えると、E級の受験料50銀貨でD、C、Bのテストを全て飛ばしてA級に直接到達したわけだ。つまり……どれだけの金貨を節約したんだ?


「はは、また金の計算かよ。節約しただけで儲けたわけじゃないでしょ?」


アリシアが俺の考えを遮る。


「お前と違って、俺は生活費を稼いでるんだぞ。節約するのも立派な収入なんだ!」


「でもさ、冒険者さん、前はE級って言ってなかった?それも半年前の結果だったよね?そんな短期間でどうやってここまで強くなったの?まさか、テストにミスがあったとか?」


「違うわよ、ルミちゃん。冒険者くんは実力があるんだから。」


「まあ、それは見てわかるけど……どうやって?秘訣でもあるの?それともオリシウスの奇跡とか?」


「ふふん、ふふん。」


アリシアは得意げに微笑み、俺の答えを待っているようだった。ならば正直に話すしかないだろう──そう、正直に。


「それは3か月間、ある”鬼教官”による地獄の特訓を受けたからだ!」


「えっ!?」


ルミナスとアリシアが同時に驚きの声を上げた。ルミナスが驚くのは当然として、アリシアまで驚いているのはどういうことだ?


「その”鬼教官”は、戦闘中に俺の技術を指導し、魔物に囲まれても解決策を教えてくれたんだ。ただし、ほとんどの戦闘は格上の敵との一対多数の状況で、しかも負傷しても自分で”低級回復”を使って治療しろと言われてな。」


「えっ?自分で治療?その教官は治療魔法を使えなかったの?」


「いや、むしろ高級治療魔法が使える人だった。」


「じゃあ、なんで治してくれなかったの?」


「ちょっと、もうその”鬼教官”とか”地獄の特訓”とか言わないでよ!結果としてすごく強くなったんだから、それでいいじゃない!」


「もちろん感謝してるよ。この先生に出会えたのは俺にとって幸運だった。」


「やめてよ、そういうの。」


アリシアの頬が少し赤らみ、気恥ずかしそうに微笑むのが見えた。


「えっ?」


ルミナスがアリシアをじっと見つめた。


「えっ?」


ルミナスが今度は俺の方を見た。


「えっ?お姉さま、あなたがあの鬼教官なの?」


「うぅっ!もうその呼び方やめてよ~!私が厳しすぎたのは認めるけどさ!」


わあ、なんか可愛いな。


「じゃあ、特訓だけで短期間でこんなに強くなれるの?それってすごいことだよね。」


「違うよ。」


「どういうこと?お姉さま?」


「極限環境での戦闘特訓は、戦闘感覚を鍛えたり、経験を積んでスキルのレベルを上げたりすることはできるけど、それだけでは冒険者くんがA級を超えるほど強くなることはできない。彼がここまで強くなったのは、戦士系の秘技《闘気纏身》を習得したからなんだ。」


「《闘気纏身》?」


「そう、それは闘気を操る技の一つで、近接系スキルの効果を大幅に向上させるもの。あれは私が教えたんじゃないよ!冒険者くんが自力で習得したの。だから、彼が強くなったのは完全に彼自身の努力の賜物なんだよ。」


「え?そうなの?《闘気纏身》ってそんなに難しいの?」


「うん!あれはスキルじゃなくて、一種の精神状態だからね。普通は何年もの瞑想修行を積まないと習得できないの!」


「えぇ!?じゃあ、あの人って実はすごい人なの?…なんか受け入れがたいな…。お姉さま、ところであなたは?認定試験とか受けたことあるの?」


「私?あるわよ。一度だけ、ギルド関係者に協力して”謎のテスター”としてこっそり受けたことがあるわ。」


「謎のテスター?どういうこと?」


「王都から派遣されたギルド業務評価のための英雄級冒険者って設定で、身元を隠して受けたのよ。もちろん、せっかくだから一番高級なゴーレムを用意してもらったわ。」


「結果はどうだったの?」


「もちろん、S級よ~。総合評価S級、職業適性も戦士、魔法使い、ヒーラー、斥候、魔剣士、指揮官、そして”オールラウンダー”として全部S級!たぶん、SSをどう評価するか分からなかったから、全部Sで止めたんじゃない?」


なにその完璧な結果!?絶対に裏があるだろう。きっと「王都から派遣」と聞いて試験官が手を抜いたに違いない。


「さすがお姉さま!いつかお姉さまが本気で戦う姿を見てみたいな~。」


「ふふ、焦らないで。そのうち一緒に高難易度の迷宮を探索するときに見せてあげるわ。」


「やった~!じゃあ、私もその能力検定ってやつを受けてみたいな!」


「B級の検定は20金貨かかるぞ?」


俺がその問題を指摘すると、ルミナスは驚愕の表情を浮かべる。


「えっ!?お姉さま、本当ですか?」


「うぅ、たしかに……でも、ルミちゃんはやらなくてもいいわよ!神官としての能力は間違いなく本物だもの。私はS級意志のS級神官として認めてあげる!」


「本当!?ありがとう、お姉さま!A級冒険者さん、私はS級神官なんだからね!」


ルミナスは得意げに微笑んで見せる。


「えっ!?」


おいアリシア、お前、そんな簡単に適当に決めていいのか?しかも俺より上のランク……いや、S級!?


「そうよ~。」


アリシアはウインクしながら「ごめんなさいね~」という仕草をしてみせた。


「さて、話を戻すけど、もし私たちの推測が正しくて、耐久力が鍵だとすれば、ルミちゃんの奇跡使用と過眠(突然の眠り)の関係を調べるために、いくつかのテストが必要ね。」


「ちょっと待って。なんでルミナスさんは突然眠っちゃうんだ?その前に兆候とかないのか?」


「どう思う?ルミちゃん?」


「オリシュスの神官は眠くなりません。倒れるまでは、ずっと働けます。」


「そういうことよ。」


なにが「そういうことよ」だ!?お前ら人間か?それとも魔導具か!?


アリシアは、昨日ルミナスが使用した奇跡の回数と種類を記録し、それに基づいて何か書き留めている。


「よし、冒険者くん。今日の任務はこの内容に沿って、ルミちゃんの奇跡使用の状況を観察して記録してもらうわ。外に出なくてもいいわよ。うちの裏庭でやりましょう。昼食後に開始ね。専用の計測魔導具も用意してあげる。」


アリシアは俺に奇跡使用のリストと記録表を渡してきた。その中には、発動時間や持続時間など詳細な指示が書かれていた。正直なところ、こういう書類仕事には慣れていないし、表の意味もあまりよく分からない……だが、アリシアの頼みであり、ルミナスや俺たちのパーティーの発展にも関わることだ。しっかりやるしかない。後で表の内容を詳しく聞こう。そして最後の項目には「過眠発生時間」と書かれている。


「これはどうする?お前たちが記録するのか?」


「その通り。テスト中に発生しなければ、私たちがその部分を観察するわ。昨日、私はすでにメイド長のヴィルマさんに頼んでおいたの。特にお風呂の時は注意してって。」


「お風呂の時?な、なんでだ?」


俺はただの好奇心だ!別にやましい意味はない!


「何考えてるのよ!もちろん溺れないようにするためよ!」


「あ、ああ、なるほど!」


こうして、俺の「少女神官観察日誌」は三日間にわたる記録をスタートさせた。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ