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三、少女夜話

静かな夜空に掛かる明るい月が、柔らかな月光を窓越しに邸宅の部屋へと注いでいた。

淡い銀色の輝きが部屋を満たし、どこか神秘的な雰囲気を醸し出している。


「う…う…いや!!!お兄ちゃん!やめて!そんなの嫌だ!」


少女の悲鳴が静寂を破った。


「大丈夫!?ルミちゃん!」


数秒の間に、部屋の扉が勢いよく開けられた。そこには寝間着姿の若い女性二人が立っていた。一人はこの邸宅の主人…の娘であるアリシア。そしてもう一人はここで働くメイド長のヴェルマだ。

部屋を見渡すが、特に異変は感じられない。邸宅の防御結界にも侵入の反応はなかった。ただ聞こえるのは少女の荒い息遣いと途切れ途切れの低いすすり泣き。


「う…」


少女神官は起き上がり、赤く充血した目と涙の痕が残る頬が目に入った。


「悪い夢でも見た?さっきものすごい声で叫んでたから、びっくりしたわ。」


私は客室のベッドのそばに歩み寄り、腰をかがめて優しく尋ねた。


「う…う?お姉さま…あれ…?」


「大丈夫よ。ただの悪夢だっただけ。あたしたちがそばにいるから安心して。」


ルミちゃんをなだめようとする。彼女は徐々に半分夢の中から現実に戻ってきたようだ。


「う…ごめんなさい、みんなを起こしちゃって。」


「ううん、大丈夫よ。ルミちゃんはお客様なんだから気にしないで。それに悪夢なんて誰でも見るものだわ。」


あたしはルミちゃんの頬に残った涙の痕をそっと拭い、その頭を優しく撫でた。うん、この子はなんて愛らしいんだろう。


「もう大丈夫みたいね。ヴェルマさん、先にお休みください。あたしがルミちゃんのそばにいますから。」


「かしこまりました。それではお先に失礼いたします。」


ヴェルマおばさんは毎朝早起きするから、ちゃんと休んでもらわないとね。


「ふふ、さてルミちゃん、もう一度眠れそう?」


「私…」


ルミちゃんは不安そうな表情を浮かべ、まだ夢の余韻から抜け出せていない様子だ。


「それなら、少しお話ししましょうか?ルミちゃんのこと、もっと知りたいわ。」


「うん…?いいよ、お姉さま!」


あはは、その


「お姉さま」という呼び方を聞くと、彼女がもう元気を取り戻している感じがする。本当にあたしはそんなに影響力があるのかしら?


「うーん…この部屋ちょっと狭いかもね……あたしの部屋に移動しない?」


「いいよ!お姉さま!」


あたしはルミちゃんを自分の部屋へ連れて行った。ルミちゃんは自然と枕を抱えてついてきた。うん…まあいいか。枕を抱えていると安心感がある…そんな感じかな?別に問題はないよね?ははは…と思ったら…。


「わぁ~!ここがお姉さまの部屋なんだ!私、隣で寝てもいい?」


ルミちゃんはあたしのベッドのそばに歩み寄り、そう言った。


「そ、そんなの大丈夫よ…」


彼女の言葉は少し唐突だったけど、断るのも難しいよね?正直、あたしも年の近い女の子と一緒に寝るのは初めてだし、ちょっと試してみたい気持ちもある!これってなんだろう?親友になるための第一歩かな?!それなら、あたしにも年の近い友達ができる!冒険者くん!これを後悔しなさい!

あたしはベッドに戻り、ベッドの頭に寄りかかるように座った。そしてルミちゃんを隣に座るよう招いた。


「うん!幸せ~!お姉さまのベッドで寝られるなんて!」


「そうね、たとえ女の子同士でも、あたしは誰とでも簡単に一緒に寝るわけじゃないのよ~。」


「じゃあ、どうして私と寝てくれるの?私たち、知り合ってまだ二日目くらいだよね?」


ルミちゃんは少し恥ずかしそうに顔を伏せたが、頬を赤らめたままじっとあたしを見つめている。


「どうしてかしら?あたしの直感かも。ルミちゃん、あなたはとてもいい子だもの。だって昨日、あなたは自分の身を顧みず、全隊の四人を救うために行動したでしょう?その勇気にあたしは本当に感動したのよ。」


「それは当然じゃない?あまり深く考えなかったけど、オリシウスの意志でもあり、自分の内なる声でもある。ただそれが私にとって当たり前のことだっただけ。」


「だからこそ、あなたはいい子なのよ!」


あたしは嘘を見抜く力を持っている。この目の前の子は、たとえ少し頑固なところがあったとしても、間違いなく純粋で素直な、心からいい子だ。


「よかった、お姉さま。」


柔らかな銀色の月光が彼女の銀髪を照らし、幸福そうな笑顔がその美しさをさらに引き立てている。この子、本当に可愛い小さな美人ね。


「じゃあ、何から話そうか?そうだ、さっき悪夢で『お兄ちゃん』って言ってたみたいだけど、それはどんな夢だったの?」


「えっ!そ、そんなこと言った!?恥ずかしい…」


「ふふっ、大丈夫よ。話したくなければ無理に言わなくてもいいからね。それじゃあ…」


「いえ!私はお姉さまにわかってほしいの!」


「えっ?!そ、それなら、ゆっくりでいいから話してね。あたしはちゃんと聞くわ。」


なんだろう?すごく親近感が湧く…彼女はどうしてこんなにあたしのことを好きでいてくれるのかしら?


「私は十年前の戦争で孤児になり、その後、聖教会が運営する孤児院で育てられました。その頃、私はまだ4歳半で、自分のことさえ満足にできない子供でした。」


「また孤児院…やっぱり十年前の戦争は多くの家族を壊してしまったのね…」


十年前の


「神魔戦争」。冒険者くんが話していたあの戦争のことね。当時私はまだ幼くて詳しい状況はわからなかった。ただ、文献や父から聞いた話でその恐ろしさを知っただけだった。


「えっ?お姉さま、どういう意味?」


「なんでもないわ。それで、そこから神官になる道を歩み始めたの?」


「そうじゃないの。あの頃、孤児院では年上の子が年下の子の世話をする、そんな風にみんなで支え合いながら生活してたの。まるで家族みたいにね。」


「なるほど。それじゃあ、あなたが言ってた『お兄ちゃん』って、その頃あなたを世話してくれた男の子なのね?」


「そうよ。お兄ちゃんは私より3~4歳くらい年上で、兄弟姉妹の中でも特に私に優しくしてくれてたの。読み書きを教えてくれたり、近所の悪ガキから私を守ってくれたり、たくさん助けてくれたわ。」


「本当に素敵な男の子ね。」


うん…3~4歳年上か。その男の子はきっとルミちゃんだけじゃなく、孤児院のすべての子供たちを守っていたんじゃないかな?もしルミちゃんだけに特別な感情を抱いてたら、それはそれで問題よね?


「一番大切なのは…」


「…何が?」


ルミちゃんは少し恥ずかしそうに頬を染め、まるで恋する少女のような表情をしていた。ちょっと待って、それってどういうこと!?その男の子、何をしたの!?これは…子供同士の婚約とか!?いやいや、それはないよね!?


「私が、パパとママの記憶がだんだん薄れてしまったことに気づいて、どうしようもなく泣きじゃくっていた時があったの。」


「うん…」


「その時、お兄ちゃんが『強くなって、パパとママのために必死に生きるんだ』って教えてくれたの。」


「『必死に生きる』!?ちょ、ちょっと待って!その時あなたは何歳だったの?」


「確か6歳くらいだったと思う。」


6歳!?そんな年の子供にそんなこと言う!?ひどすぎるよ!?でも…私も6歳の頃には、父に貴族の義務を叩き込まれてたな…そう考えると、6歳はもう物事を理解する年齢かもね。まあ、ちょっと驚きだけど…理解できる気がする。


「それで、その後はどうなったの?お兄ちゃんに何かあったの?」


「何もなかったと思う。ただ、私が6歳半くらいの時、ある日、お兄ちゃんたち男の子が畑仕事をしている間に、中央教会の神官が突然孤児院を訪ねてきて、私に神官の素質があると言って私を連れて行くことになったの。」


「突然そんなことが?」


「そうなの。その日の午後にはもう馬車で孤児院を出発することになったの。お兄ちゃんにちゃんとお礼を言う時間もなくて、私は行きたくなかったけど、孤児院の神官が代わりにみんなに挨拶すると言って私を連れ出したの。でも…」


「でも、何があったの?」


「それでもお兄ちゃんは山道を駆け上がってきて、馬車の私に向かって大声でエールを送ってくれたの。『頑張れ』って。」


「うん…そんなのひどい!その後は?」


「それから、私は中央教会で修行を始めたの。断食に耐えたり、冬の湖で寒さに耐えたりする修行の中で、お兄ちゃんとお兄ちゃんの教えが私の心の支えだったの。」


ルミちゃんは微笑みながら語った。それは彼女にとって美しい思い出のようだった…いや、そんなことある!?


「ちょっと待って!今何を普通に言ってるの?昨日から気になってたんだけど、『外で野宿するのなんて修行に比べたら全然大したことない!』って言ってた時、すごく引っかかってたのよ!教会はどんな修行をさせてたの!?まだ子供だったんでしょ!?」


これが彼女の強い意志力の源なの?確かに奇跡力を高める訓練は厳しいと聞いたけど、それでもこんなに過酷なことをするのは…。聖教会の神官たち、やりすぎじゃない!?


「そうでもないよ。神官様たちは私たちにすごく優しかったの。修行中に倒れてもすぐに奇跡を使って治してくれたし。修行の過程がちょっと辛いだけで、みんな元気に成長してたよ。」


あたしは言葉を失った。倒れたら治すから問題ないって!?それって…。いや、待って。あたしが冒険者くんを鍛えた時も…えっと…治療したよね?あたしがちゃんと治療したはずだよね!?うん、多分…あれは過去のこと、考えすぎるのはやめよう。


「まあ…とにかく、それはもう終わったこととして、その後、その男の子はどうなったの?」


「私はずっと孤児院に手紙を送ってたんだけど、一通も返事が来なかったの…。2年前になってやっと、大神官様から聞いたの。どうやら私が孤児院の住所を間違えてたらしいって。」


「嘘でしょ!?」


「その時は、基本修行を終えて、正式な神官になったところだったから、久しぶりに孤児院を訪ねてみたの。」


「それで?何かあったの?」


くそっ!孤児院の住所を間違えた!?そんな馬鹿げた理由があるかよ!こんなの、人間じゃないだろ!?うぅ…ルミちゃん、なんて可哀想なんだ…。


「お兄ちゃんのことを聞いたら、2年前に孤児院を出て剣術を学びに行ったって。それから冒険者になりたいと言って出て行ったそうで、それ以降は連絡がないんだって。」


「…」


彼女の言葉を聞いて胸が痛む。もう可哀想すぎる…信じてた相手に誤解されて恨まれるなんて最悪の事態よ!


「その話を聞いた時、すごく怖くなったの。もし私の手紙が全部届いてなかったなら、お兄ちゃんはずっと私のことを知らないままだよね?それどころか、私が彼を忘れてしまったって思ってるかもしれない。お兄ちゃんが私を恨んでたらどうしようって…。そんなの嫌だ!お兄ちゃんだけにはそんな風に思われたくない!」


ルミちゃんはそう言いながら再び泣き出してしまった。かわいそうすぎる…。あたしは思わず彼女を抱きしめた。


「大丈夫よ。あなたが冒険者になったなら、いつか必ずお兄ちゃんに再会できるはずよ。」


あたしは彼女の頭を優しく撫でながら、穏やかに彼女を慰めた。もしそのお兄ちゃんも冒険者なら、いつかこの街に来る可能性もある。最悪のケースを考えたくはないけど…。


「うん!お姉さまがそう言うなら、私も自信が湧いてきた!」


「それはよかったわ。」


そう、悲観しないで、希望を持つのが一番。けど…正直なところ、あたしは心配だった。ルミちゃんの6歳の記憶にあるその男の子の顔をちゃんと思い出せるのか?それが8年前の話って…。まあ、今はとりあえず前向きに考えるべきよね。


「ありがとう、お姉さま。話してたら気持ちが楽になった。それで、私からも聞いていい?」


「ちょっと待って。その前にあたしが一つ聞きたいことがあるわ。あなた、なんでずっとあたしのことを『お姉さま』って呼ぶの?」


「お姉さまはお姉さまだよ?何か問題でも?」


「うーん…ちょっと言い方を変えるわね。あたしがあなたの『お姉さま』になった理由って何?あたしのどこが好きなの?」


「理由?昨日助けてもらった時から、もう『一目惚れ』って感じだったかな。」


「『一目惚れ』!?」


まずい、この子、その言葉の意味をちゃんと理解してるの!?いや、きっと違う意味で使ってるんだよね?きっとそうだよね!?


「そうなの。昨日、もうダメだって諦めかけてた時に、お姉さまの勇姿を目にして、その瞬間、まるでオリシウス女神が降臨したみたいに思えたの!」


「ちょ、ちょっと待って!その言い方、ちょっと大げさすぎない!?」


オリシウス聖教会の教義では、オリシウスは女性の神格とされているのは知ってるけど、あたしを創造神みたいに例えるのは変でしょ!?


「ふふっ、とにかく、私、お姉さまのことが大好き!」


「そ、そう…別にそれは問題ない…かな…は、はは…」


あたしにはこの子の「好き」がどの種類の「好き」なのか、ちょっと判断がつかないけど、ルミちゃんがあたしに夢中になるのは彼女の自由だし、あたしがそれを止める理由もないわよね。


「あの…ちょっと聞きたいことがあるんですけど…」


「ん?」


「お姉さまと、今日の“冒険者くん”って、どんな関係なんですか?」


「えっ…?あたしと冒険者くんの関係?うーん…あたしにもよく説明できないけど…雇い主と雇われる側かな?それだけじゃなくて…冒険仲間?友達?みたいな感じかな?」


冒険者くんとの関係か…。突然そんなこと聞かれて、どこから話せばいいのかな?いろんな場面が頭の中を駆け巡る…湖のほとりでのあの出来事とか…あれは恥ずかしすぎるから、ルミちゃんには絶対言えないけどね!


「へえー、二人とも同じような答えですね!もしかして、事前に打ち合わせでもしたんですか?」


「な、何言ってるの!?答えが同じなら、それが事実だってことでし!?」


「私には分かりません。どうしてお姉さまみたいに優秀な方が、あんな人と関わるんですか?それに、なんで雇ったんですか?」


「あんな人って、どういうこと?」


また冒険者くん、何か失礼なことでも言ったのかな?


「お姉さま、ご存じないんですか?公会の冒険者たちが彼のことをどう言ってるか!」


「うーん、知らないふりをしてることにしようかな。ルミちゃん、彼の正体を教えてよ?」


なるほど、公会の冒険者たちの噂ね。それなら、最新バージョンを聞いてみようかな?冒険者くん、また新しい伝説を作ったのかしら?


「これは昨日聞いた話ですが、彼と組んだことがある人が言ってました。彼は戦闘中、全体の状況を全く考えず、自分の戦いだけに集中する人だって。しかもアドバイスも聞かないし、撤退もしないんです。全身傷だらけでも痛みを感じず、ただ戦い続ける狂人だそうです。」


「ふむふむ、それで?」


これ、前にも聞いたことあるわね。ちょっと古い話だけど。


「最近の話ですが、彼はここ数か月、他の冒険者と組まなくなったそうです。」


「ふむふむ、それはどうして?」


新しい情報ね。さて、何があるのかしら?


「彼があるスタイル抜群で背が高くて、華やかで美しい長髪の少女とずっと迷宮を回っているからだそうです。」


「華やかで美しい少女…冒険者かもしれないわね?」


スタイル抜群で背が高くて、華やかで美しい少女…!?迷宮を回る…冒険者くん、暇そうね…。


「私も聞いたんです!でも公会にはそんな可愛い子なんていないって言われました。それに、その少女は武器を持たず、華やかなドレスみたいな服を着てたそうで、冒険者らしい格好じゃなかったって!」


そんな可愛い子…?武器を持たない…華やかなドレス…。あたしの口元がピクッと引きつるのを感じたわ。


「それで、たぶん女の子に格好つけて好かれたいんじゃないかとか、二人で迷宮の人気のないところで何かやましいことをしてるんじゃないかって言われてます!」


「な、な、何をしてるって…!?やましいこと!?それって、どういう意味よ!?」


やましいこと!?


「言うのが恥ずかしいんですけど…その…エ、エチなこと…です。」


エチなこと!?冒険者くんとエチなことを…いやいやいや!何を考えてるの、あたし!?冒険者くんとそんなことなんてありえないでしょ!?その少女!?


「とにかく、悪名高い人だそうです!しかも、それを目撃したっていう人が何人もいるんです。ただの噂じゃないんですよ!」


「目、目撃した!?エチなことを!?嘘でしょ!?嘘よね!?そんなこと、冒険者くんとその少女が、やるわけないじゃない!だって、やってないなら?見られるわけがないじゃない?!」


「いやいや、それは推測ですよ。みんな『たぶん』って言ってましたから。」


「ふう…」


頭に血が上ってしまったわ。この公会の冒険者たち、何てひどいことを言うの!?どうやって罰を与えるべきかしら?公会への税金を引き上げる?それともランクアップの基準を厳しくする?試験用のゴーレムのレベルを上げる?いやいや、それじゃ無実の人まで巻き込んじゃうわね…。よく考えなきゃ。


「お姉さま、どう思います?あいつって本当にひどい人ですよね?完全にモラルが崩壊してますよ!今日一緒に組んでみて、確かに実力はあると認めますけど、それでもあんな人と関わるなんて、お姉さまの名声に傷がつきますよ!」


「うーん…でも、ルミちゃんも彼の実力を認めてるのね。見る目があるわね?」


「認めざるを得ませんよ。実力もあるし、今日の指導も的確でした。だから戦闘に関する噂の一部は嘘だと思います。でも、モラルが崩壊してる部分だけは受け入れられません!」


実は彼の戦闘の噂の部分は事実なんだけどね…。でもそれも過去のこと。ルミちゃん、冷静に物事を判断できるみたいね。さて、どうやって真実を伝えようか。


「うーん…ルミちゃん、ヒントを出すから、自分で考えてみて?」


「何ですか?お姉さま、教えてください!」


「まず、迷宮ってエチなことをするのに安全な場所だと思う?」


「え…?」


「次に、その少女の特徴は?」


「え…?」


「最後に、冒険者くんとあたしの関係について、さっき言った答えは?」


「え…あっ!?」


少女神官は何かを悟ったようで、顔が真っ赤になり始めた。


「最後に、その『少女』が外で簡単にそんなことをすると思う?」


「思いません!絶対ありえません!わ、私…私が悪かったです…」


ルミちゃんが慌てふためいている。


「それじゃあ、冒険者くんは本当にそんなモラルのない人?」


「絶対そんなはずない!ありえません!ごめんなさい、お姉さま!私、何をしたら償えるでしょうか!?今すぐ湖に入って一晩反省します!」


「そんなのしなくていいわ!あたしはあなたの教会の神官じゃないの。ただ分かればそれでいいのよ。」


「本当ですか?」


「もちろんよ。ルミちゃんが悪いわけじゃないの。悪いのは、いい加減なことを言う公会の冒険者たちだけ。罰を受けるべきなのは彼らよ。後でその『目撃した』っていう人たちの名前を教えてね。」


「分かりました!」


「それとね、ただルミちゃんがあたしの冒険者姿を見たことがないだけ。そのドレスみたいな装備は、あたしが設計した機能的で可愛くて上品な魔法装備なの。確かに可愛いけど、可愛いのが悪いこと?」


「そんなことないです!分かりました!きっとその人たちはお姉さまの美しさに嫉妬して、あんな酷いことを言ったんです!許せません!嫉妬から人を中傷するなんて、オリシウスが許しませんよ!」


オリシウスを巻き込まなくていいわよ。明日、あたしが彼らにどう罰を与えるか考えるわ。


「さて、誤解が解けたみたいだけど、それでもまだ冒険者くんが嫌いなの?」


「うーん…ちょっとだけまだ嫌いかも?」


「まだ?彼、何か失礼なことでもしたの?」


そういえば、冒険者くんの性格には少し問題があるかもしれないわね。言葉遣いが時々イラッとさせるし…。


「違います。私は、あの人が嫌いというより…」


「何?」


「私は、あの人がお姉さまと親しすぎるのが嫌なんです!お二人の息の合い方が異常ですよ!だからこそ聞きたくなったんです。本当に“そういう関係”じゃないんですか?まさか、お姉さまがあの“モラル崩壊男”の次のターゲットになるんじゃないかって思っちゃいました!」


…息が合いすぎる?そんなに分かりやすかったの?


「そ、そんなことないわよ。“そういう関係”だなんてありえないでしょ!」


今のところ“そういう関係”じゃないわよね?だから問題ないはずよね?


「本当ですか?」


「本当よ。」


本当だってば!少なくとも今は…。

その後もルミちゃんと色々なお話をして、気づいたら寝落ちしてしまった。

コン、コンコン、コンコンコン。

部屋の扉をノックする音が聞こえてきた。


「お嬢様、※─◎※●┼…」


「うん…うん…(あくび)……ヴィルマさんですか?すみません、よく聞き取れなかったので、ドアを開けて入ってきてください。」


「では、失礼します。」


扉を開ける音がした。

あたしは上半身を起こし、眠い目をこすりながら窓の外を見る。ん?もうこんな時間?空がすっかり明るい。もしかして、そろそろ冒険者くんが来る時間?あれ?


「えっ、ええええええ────────!?」


な、なんと、冒険者くんがあたしの部屋の扉の外に立ってる!しかもあたしの寝間着姿を見て、目が合った瞬間に慌てて顔を背けた!


「この、モラル崩壊男!」


あたしはとっさに“闘気纏身”を発動し、枕を強化して彼に投げつけた。


「ふふっ、お姉さま…」


少女神官が気持ちよさそうに寝ながら、夢の中で呟いていた。






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