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24話 危険なお茶会

 犯人を捕まえていないのに、お茶会を開くことになった。そうギルバートから手紙で知らされ、協力してほしいと頼まれたレオディーナは迷った。

 ガラテア達の事情も分かる。複雑な立場にあるが、彼女も貴族だ。回復したのにいつまでも社交を全くしない訳にはいかない。彼女が呪われたことを知っているのは、ギルバートたちと自分だけだから猶更だ。


 呪いは解いたし、物証は存在しない。魔眼を持つギルバートの証言があれば、何とかなるかもしれないが――。

(それを公にすると呪いを解いた方法、つまりあたしのことを公にしないといけないんだよね)

 そうなるとレオディーナは神殿に目を付けられ、最悪の場合聖女として祭り上げられてしまう。それはとても名誉なことだが、彼女が人生をかけてやりたいことではない。


(つまり、坊ちゃんたちはあたしを庇っているせいで、公に捜査が出来ない)

事件を大っぴらにしたくない事情もあるかもしれないが、一因がレオディーナにあるのは変わらない。それに、また犯人がガラテアやギル、テッド達に害を及ぼしたら嫌だ。


 だから、協力するのに異議は無い。望むところだ。協力の内容も、犯人を取り押さえることではなく、再び呪いを放ってきたときに『解呪』してほしいということだから、そこまで危険はないはずだ。しかし、彼女が迷った理由は……開かれるお茶会の招待客にあった。


(招待客に会ったことがある人がいたらどうしよう)

 ガラテアと個人的に親しい人物しか招待されていないそうだが、パウル率いるピッタリア商会も彼女の故郷の花、マリンローズを納めている。それに、治めている領地は離れていても社交シーズンの王都でルクレツィア・ラング子爵夫人と出会っていてもおかしくない。


 『変色』で変装しても、パウルとルクレツィアならすぐに見破りそうだ。もしそうなったら、かなり困ることになる。


 そう数分悩んでから――

(でもまあ、そうなったらそうなった時に考えるしかないよね)

 そう開き直ることにした。


 そしてスケジュールやアリバイ工作を工夫して、三度ルーセント辺境伯家のタウンハウスを訪れたレオディーナ。打ち合わせのために集まったガラテアの私室で、彼女は初めてグレンと話した。

「小娘、お前がガラテア様にかけられていた呪いを解いた魔道士か」

「はい。でも『レオナ』……じゃなくて、『レオ』です」

「そうかすまん、小娘ではなく小僧だったか。ややこしいな」


 グレンは初めてレオディーナが彼を見た時と同じ袖の無い服に毛皮のマントを羽織り、こん棒のような杖を携えていた。面と向かっていても魔道士ではなく狩人か傭兵のような出で立ちで、貴婦人の私室にいるのがとても場違いだ。


「グレン、こいつの実力が信じられないのか?」

「いいえ、ギルバート坊ちゃんとガラテア様の言葉を疑っている訳ではありません」

 ギルバートが話しかけると、グレンは粗暴な口調ではなく家臣としての態度で答えた。


「先ほど張った結界の手並みも見事でした。とても子供が唱えた魔法とは思えない」

 ガラテアの私室には、彼女の指示でレオディーナが『防音』の結界を張っていた。グレンはそれを見て、レオディーナに聞いていた通りの実力があると認めたようだ。


「それが約一年前までスラムで暮らしていたとは、凄まじい才能の持ち主が在野に埋もれていたことに、ただただ驚くばかりでございます」

 そう語るグレンは、首から上だけ見れば貴族のお抱え魔道士らしい理知的な人物に見えた。古文書から回復魔法を習得したことから考えても、知識や技量も優れているはずだ。


 そして、口にしている言葉にも嘘はないだろう。嘘を見抜くことが出来る『魔眼』を持つギルバートを、正面から見つめて語っているのだから。

「ですが――ガラテア様、そしてギルバート坊ちゃんっ! やはり私はこの者を加えるのは反対です!」

 そのグレンは、レオディーナに背を向けて力強く言い切った。


「なんで、そんないきなり?」

 突然のことに、反発よりも困惑を浮かべたレオディーナが尋ねる。それにもグレンはきっぱりと答えた。

「お前が幼子、未成年だからだ!」

「あ、はい」

「それは、そうね」

 ぐうの音も出ない事実に、レオディーナとガラテアは思わず頷いた。


「あー、僕と姉さんも未成年ですが?」

「テッド! たしかにその通りだが、お前とクロエは親の代からガラテア様の家臣だろう! 多少の身の危険を冒しても、ガラテア様と坊ちゃんに尽くす道理があるはずだ」

 テッドは十一歳、その姉のクロエは十三歳。しかし、二人はガラテアの侍女であるタニアと執事である父の間に生まれ、今も見習いだがそれぞれ使用人として働いている。

 なので、主人の為なら危険を冒す義務があるとグレンは主張した。


「まあ、そうですね。……やっぱり通じなかったか」

「無論、お前とクロエ、そしてタニア殿も俺が出来るだけ守ろう。坊ちゃんとガラテア様の次に。それが魔道士として仕える俺の役目だ」

 テッドの後半の呟きをかき消す力強い言葉で断言するグレン。彼はそのままレオディーナを手で指して言った。


「しかし、この小僧はいかに優秀でもただの臨時雇い! そんな身分の者に危険な仕事をさせるのは納得しかねる!」

「ありがとうございます?」

 一応褒められているし、気遣われているようなのでとりあえずお礼を口にするレオディーナ。


「しかし、万が一の事態を考えれば呪いを解くことが出来る私も参加するべきでは?」

「確かにその通りだ。しかし、呪いには即効性は無いはず。メイドに扮してガラテア様の近くに控える必要はない。適当な部屋で待機していれば十分なはずだ」

 だが、危険性を考えてそう提案するとグレンからさらに彼女を気遣う提案がなされた。


(あ、それは助かるかも)

 お茶会の会場に居なくていいのなら、招待客と顔を合わせなくて済む。しかも、屋敷内に待機していればもしもの時にもすぐ対応できる。

 レオディーナにとっては実に都合が良い。


「そうね、レオ君には当日はここで待っていてもらおうかしら」

「ガラテア様、私室に臨時雇いの使用人を一人にするのは問題だと思います」

 でも、貴重品や見てはいけない手紙の類があるだろう貴婦人の部屋で留守番は困る。

「……小僧、スラム育ちとは思えないぐらいしっかりしているな」


「グレン、お前の意見は正しい。

 タニア、お茶会の間はレオをお前たちの部屋で待機させておいてくれ」

「分かりました」

 ギルバートもグレンの意見を聞いてそう考え直したようだ。


「じゃあ、当日は皆に防御魔法をかけたら私は待機していますね」

「防御魔法を? それは目立つんじゃないのか?」

 防御魔法をかける事は事前に提案していたが、聞いていなかったのかグレンがそう尋ねる。


「はい、『防音』の結界と同じで目には見えません。こんな感じです」

 口で説明するより実際に見せたほうが早いと、レオディーナはスラムでも使っていた防御魔法を唱えて自身にかけて見せた。


「こんな感じです」

「確かに、全く見えない。普通はどんなに弱くても淡く光るものだが……坊ちゃん、見えますか?」

「ああ、俺の『魔眼』でも注意しなければ気づけない程微かにだが」

「その分効果は弱いけどね。スラムで使っていた時よりも魔力を込めたから。投げつけられた石を弾くぐらいは出来ると思うよ」


 痛いのは嫌だけど、周囲に魔法を使っていることがばれたくない。そう考えているうちに開発していた、隠密性重視の防御魔法だ。

「お前、俺が思っていたよりも辛い目に遭っていたんだな」

「石を……大変だったのね」

 自信をもって披露したら、ギルバート達から同情が寄せられた。クロエやガラテアは涙ぐみ、タニアは労わるように撫でてくれた。


「あはは、まあ過ぎたことだよ」

 具体例まで上げたのが良くなかったかな。そうレオディーナが反省していると、ドアがノックされた。


『ガラテア様、アドニスです。よろしいでしょうか?』

 以前のように、レオディーナは素早くクロエの横まで下がってメイド見習いのふりをする。それを確認してから、ガラテアは「入りなさい」と入室を許可した。


「失礼します。これは、何かあったのでしょうか?」

 『防音』の結界で話し声が聞こえなかったアドニスは、部屋に大勢が集まっていたことに戸惑いを浮かべる。

「次のお茶会の打ち合わせをしていたのよ」

「まだ母上は本調子ではない。もしもの時のためにグレンにも参加するよう頼んでいたところだ」


 ガラテアとギルバートの説明に、「そうでしたか」とアドニスは納得したようだった。その様子に不自然な点は見られない。少なくとも一度、しかも短い間しか彼のことを見ていないレオディーナは気が付かなかった。


「それよりアドニス、何か魔道具を身に着けているな。それはなんだ?」

 しかし、ギルバートの魔眼はアドニスが普段身に着けていない魔道具を持っていることを見逃さなかった。

「はい、こちらは本領から届きましたアミュレットでございます。ガラテア様にさっそく身に着けていただこうと持ってまいりました」

 アドニスは携えていた箱を開き、中に納められていたブローチの形をしたアミュレット、護符を見せる。


「本領? 義父上がか? 聞いていますか、母上?」

「いいえ。アドニス、それは本当に旦那様からの贈り物なのですか?」

「添えられていた手紙に書かれていた指示にはそうありました。本領と王都は離れておりますので、連絡が遅れているのかもしれません」


 そう慇懃に答えるアドニスの表情や仕草には不自然な点は見られない。

(なんか、変。嘘にならないように言い繕っている感じ)

 しかし、レオディーナもそう思うほど彼の言動は妙だった。


「アドニス、念のためにそのアミュレットを調べさせてもらうぞ」

「調べる、と言うとどうなさるのですか、坊ちゃん?」

「グレン、『鑑定』の魔法をかけろ」

 ギルバートはそう言うとグレン、そして次にレオディーナに目配せをした。


「ん? ……はっ! お任せください! アドニス殿、そのまま動くんじゃないぞ! 今、『鑑定』の魔法を唱える!」

 一拍置いてギルバートの意図を理解したグレンが、アドニスの正面に立つと、逞しい両腕を大仰に動かして呪文らしきものを唱え始める。


「そ、そんな魔法が使えたのか。グレン殿?」

 それまで平然としていたアドニスも流石に動揺を露にするが、彼の視界と意識はグレンと彼が振り回す逞しい腕に占領されている。


(ああ、そういうこと。任せて、坊ちゃん)

 その間に、レオディーナはアドニスの背後に忍び足で回り込むと『鑑定』の魔法を唱えた。

「ああ、また最初からだ! これはとても難しい魔法なのだ、気が散るから黙ってじっとしていてくれ!」

 グレンが時間を稼いでいる間に唱え終わった『鑑定』の魔法は、アドニスがアミュレットと評する魔道具の正体を教えてくれた。


(これがアミュレット? 護符って言うよりマーカー……目印じゃない、これ)

 それは直接害を及ぼすものではなかったが、この魔道具の位置を対になる魔道具の使用者に教える、という魔法だった。前世の言葉でいうと、GPS発信機のようなものだ。


 呪いの品ではないが、怪しすぎる。一瞬自身の『鑑定』の結果に不安を覚えたが、この魔法はこれまでもギルバートの依頼でガラテアに贈られた魔道具の効果を明らかにしてきた。

 レオディーナはアドニスの背後で首を横に振って見せた。


「――アドニス、俺の質問に全て『はい』か『いいえ』で答えろ。そのアミュレットは、本当に本領から送られてきたのか?」

 それを見たギルバートは頷くとアドニスに静かな、しかし力強い口調で命じた。


「な、なにを言い出すのです、坊ちゃん? これは間違いなく――」

「アドニス、『はい』か『いいえ』以外口にするな」

 まだ幼い顔と声だが、金色の魔眼に睨まれたアドニスは怯んで息を呑んだ。助けを求めてグレンに視線を向けるが、そこにあったのはギルバートよりも厳しい顔つきだ。


「どうした、アドニス殿。坊ちゃんの質問に答えられんのか?」

 先ほどまでの道化じみた振る舞いとは別人のような迫力に、アドニスの四角い顔がはっきりと青ざめる。

「――くっ!」

 次の瞬間、アドニスはグレンにアミュレットを投げつけると、壮年とは思えない素早さで身を翻し、駆けだした。


「ま、待てっ!?」

 とっさにアミュレットを手で払ったために、伸ばしたグレンの手は紙一重の差でアドニスに届かない。彼以外の動きも一瞬遅れた。

「退けぇ!」

 もちろん、レオディーナも例外ではない。アドニスの背後に回り込んでいた彼女は、彼と扉の間に立っていた。


 逃走の邪魔だと、アドニスは見慣れないメイド見習いを片腕で乱暴に突き飛ばして扉から逃げようとする。

「がっ!?」

 しかし、華奢で小柄な少女に向かって振るわれたはずの腕から返ってきたのは、石の壁を殴ったような衝撃と痛み。自分が振るった腕の反動と動揺でバランスを崩したアドニスは、無様に床に転がった。


「ふんっ!」

 そこにグレンが伸し掛かった。アドニスの腕を決め、身動きが取れないようにする。

「ぎ、ぎゃぁぁ!? や、やめてくれっ! お、折れる!」

「黙れっ! 怪しい動きをすればこの腕をへし折る! 呪文の類を唱えれば、喉を潰す!」


「おい、大丈夫か」

 その様子をぼんやりと聞いていたレオディーナは、ギルバートに声をかけられて我に返った。

「だ、大丈夫。防御魔法のお陰で、ビックリしただけで済んだよ」

 アドニスの腕を防いだのは、直前にレオディーナが自身に唱えた魔法のお陰だった。『攻性結界』ではない、ただの防御魔法だったが、


「本当か? 怪我をしたり、首を痛めたりしていないか?」

「うん、防御魔法に魔力を強めに込めたからね。衝撃は伝わって来たから、ちょっとクラクラするけど」

「それは大丈夫じゃないだろうが。顔も赤い、ショックで熱が出ているのかもしれない」

「違うよっ! ショックはショックだけど、そうじゃないっ」


 レオディーナは、顔が赤いのはきっと自分自身が情けなくて恥ずかしいからだと思った。

 スラムで暮らしているときは、何日かに一回は他の子供から石を投げられたり、不意に罵倒されたり、すれ違いざまに小突かれたり足を引っ掛けられたりした。それに負けないように生きているつもりだった。物理と言葉、両方の暴力に慣れているつもりもあった。


 しかし、一年半程の平穏で豊かな生活でその免疫はすっかり失われてしまった。アドニスが向かってきた際。棒立ちのまま逃げることも出来なかった。

 結果的にはそのお陰でアドニスを取り押さえられたが、ギルバートに心配をかけてしまったことが情けなく恥ずかしい。


(それと照れくさいかな!?)

 くらくらすると言ったためだろう、ギルバートはレオディーナを支えるために彼女を抱き寄せていた。しかも、怪我をしていないか確認するために顔を覗き込んでいる。

 とても距離が近い。


「貴様、アドニス殿ではないな!? 正体を現せ!」

 そうしている間も、アドニスはグレンに腕を決められたまま締め上げられていた。しかし、強情なのか痛みが強すぎるのか、口を割ろうとしない。


「坊ちゃん、『魔眼』で何か分かりませんか!?」

 グレンに問われて振り返ったギルバートが魔眼でアドニスを注意深く観察する。すると、床に転がっているアミュレット以外に魔道具を持っていたのに気が付いた。


「グレン、そいつの片眼鏡だ」

「これかっ!」

 片眼鏡をグレンが取り上げると、アドニスは「ああっ!」と短い悲鳴をあげる。すると、その四角い顔つきが崩れ、似ても似つかない若い男の顔に変化する。


「顔が変わった? 幻覚?」

「『変身』の魔道具です。顔の形と声まで他人のものに変えることが出来ます。犯罪に利用されるため禁術指定されていて、魔法とそれが付与された魔道具を許可なく使用すれば違法になります」

 驚くレオディーナにテッドがそう説明する。


(えっ!? 『変身』が禁術……なら今あたしが使ってる『変色』は!? 大丈夫なの!?)

 それを聞いて、レオディーナは自身の髪や瞳、そして肌の色を変えている『変色』の魔法に思い至り、不安に青ざめた。色を変えるだけで他人に成りすます魔法ではないし、師であるバンクレットも何も言わなかったので多分大丈夫だと思うが。


「あなたはカロス。旦那様の親族からの紹介で、去年から屋敷で勤めてくれている執事の。アドニスも働きぶりは評価していたのに……」

「信用を得て隙を突いたか。本物のアドニス殿はどうした? 殺したのか!? 五つ、数えるうちに白状しなければまずこの腕をへし折る! イチっ!」

「こ、殺してはいないっ! 薬で眠らせて――」


 正体を知られ、痛みも限界に達したのかアドニス改めカロスが口を割り始めた。色々気になることがこれから明らかになっていくのだろうが――。


「ギルバート、『レオナ』を別室で休ませてあげなさい。タニアは騎士達を呼んで。グレンはカロスを引き渡したら、アドニスの救出を。回復魔法が使える魔道士が必要になるかもしれないわ」

「はい、ガラテア様」


「えっ、あたしは大丈夫――」

「何を言ってる。今度は顔が青くなったぞ。クロエ、テッド、行くぞ」

「お任せください。怖い目に遭いましたね。顔も腫れていなくて良かった」

「いやいや、私、いや、俺の顔のことなんて気にしないでっ」

 一人称をどちらにするか混乱するほど慌てるレオディーナの手を握って、クロエは「何を言うのです」と言った。


「痕が残ったらどうするの。もっと自分を大切にしなさい」

「回復魔法でどうにかするから大丈夫だよっ」

 そう言うが、結局レオディーナはクロエとギルバートによって部屋から連れ出されてしまった。最後尾のテッドが扉を閉めたことで、かけたままの『防音』の結界でグレンの怒鳴り声もカロスの悲鳴も聞こえなくなる。


 それからレオディーナはタニア一家の部屋でしばらく休んだ後、「今後の事は後日いつもの場所で説明する」と約束してこっそり屋敷を後にした。

(大ごとになったし、多分お茶会は延期かな。あのカロスって人が犯人ならもうあたしが参加する必要はないんだけど)

 慌ただしい雰囲気のルーセント辺境伯のタウンハウスを背に、レオディーナはそう思った。







 ある日の午前中、自身の家で寛いでいたバンクレットは届いた手紙を見て複雑な顔をしていた。

「ルーセント辺境伯家のお茶会は延期……いや、中止か」

 元同級生のレスタト・ヒルゼンの依頼で、ギルバート・ルーセントの臨時家庭教師を務めた縁で彼もお茶会に招待されていた。


「レスタトから弟子……『レオ』も連れてくるよう頼まれていたから、面倒事が一つ減ったのは喜ばしい。しかし、レオディーナ嬢をギルバート君に会わせたかった気もするな」

 レオディーナ程じゃないが、ギルバートもかなりの才能の持ち主だ。同じ年頃の天才同士が顔を合わせれば、いい刺激になるに違いない。その機会が失われたのは、残念だった。


「とはいえ、同じ国にいるのだ。同世代の天才に気づくのはそう遠い未来ではないだろう」

 そう言って手紙を置くと、気を取り直して読んでいる途中だった今週の新聞に視線を落とす。

「ほう、呪物を制作した魔道士が逮捕されたか」

 人を呪う呪物をばらまく犯罪者は、自分のような真っ当な魔道士にとって害悪でしかない。喜ばしいニュースに、バンクレットの落ち込んだ気分は少し持ち直した。


もし面白いなと思っていただけたら、ブクマや評価、いいねで応援していただけたら幸いです。よろしくお願いいたします。






誤字報告ありがとうございます!

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