【プロットタイプ】愛を込めた独占
注意事項1
起承転結はありません。
短編詐欺に思われたら申し訳御座いません。
注意事項2
無意識ながらも愛が重い。
そしてさり気なく牽制をする。
そんな事してそう。
「はいこれ、上げる」
鏡花は気に入った奴に良くものを渡す。取り分け相手が日常的に使いそうなものを選ぶ。
その言葉には『物を使っている時に、自分の事を思い出して欲しい』という気持ちが多分に篭っている訳だが。
そう考えると、彼奴は俺が思っている以上に、独占欲が強いのかも知れない。使うもの全てが彼奴から贈られたものだったら、俺の全ての所有権は彼奴のものになるのだろうか?
そんな事を考えて寝落ちをしたら、高校時代の体育際の夢を見た。彼奴は借り物競争に出ていて、お題に沿った物を探す為、当たりを見回していた。
――瑠衣たん〜? ゆらりぃ〜? 〜麗衣ちゃま〜? はい〜!! 三人集合!!
名前を呼ばれた諭羅と麗衣は、先に席から立ち上がって鏡花の元に駆けていった。俺も一足遅れて、席を立ち上がると、強引に腕を掴まれた。
――ほら〜!! やる気ないのは分かるけど、クラスの為だよ。
うるせぇな。足が遅ぇんだよ。そんな事を考えていたら、何時もの様に麗衣が俺をおぶって走り出す。呼び掛けた張本人を追い越して、先にゴールへと辿り着く。
――はい。鏡花選手のお題は『好きな人』!! なんと三人纏めて連れて来て戴きました〜!!
校庭が熱狂の渦で沸き踊る最中、鏡花は晴れやかな笑顔で何かを述べていた。
キリが良いところで目が覚める。俺は椅子に腰掛けており、文庫本を持っていた。読書の最中に強い眠気に襲われて、そのままぽっくりと眠ってしまったらしい。
「瑠衣たん、おねんねするならベッドだぞ〜?」
鏡花の煽る声がする方へ顔を向けると、ニヤケ面で栞を弄る。この間、鏡花に貰った栞。金属で縁取られたステンドグラスの様な美しいもの。
「もう!! ちゃんとしてよね? 人から貰ったものなんだから」
「渡したのお前だろ」
そんな何時もの軽口を返しながら、鏡花の指先で弄ばれる栞を奪う。どこまで読んだかは薄ぼんやりと覚えている。だが、それよりも。
「お前、高校の時の体育祭、覚えているか? そこで借り物競争に出た事」
「覚えてるよ。瑠衣たんとゆらりぃと麗衣ちゃま連れてゴールした」
「あの後、お前はなんて言った?」
「『生涯に渡って好きな人です!! これからもめいいっぱい愛情を注いでいきます!!』だったはず。ちなみに麗衣ちゃまは照れて、ゆらりぃはうんざりした顔で、瑠衣たんは無表情でゲンコツだった気がする」
やはり独占欲は強いタイプらしい。
鏡花って気に入った人に贈り物をするのが好きなんですよ。
理由は使っているとき、自分を思い出して欲しいから。
結構、重い理由。
だから日常品か目に付く物を贈りそう。
でもその裏側では少なからず独占が見え隠れしている。
鏡花が渡したものでいっぱいになれば、他が入り込む余地はない。
と薄ぼんやり思った瑠衣たん。
そんなことを考えていたら、その片鱗は高校時代の体育祭から浮き彫りだったなと。
『好きな人』にお気に入りの三人呼び付けて、『生涯に渡って好きな人です!!』なんて普通は言いません。
『この子達は私のだから!! 誰にも渡さないから!!』という一種の牽制。
まあ、瑠衣とは約束してましたが、他二人はしてないので。
そんな事しなくても、一緒に居てあげるって。あの三人。