その後
しばらくしてエリザベスは部長と結婚した。部長は交際を申し込むとき、汗をかいて一生懸命、話した。
「ベス、フレッドが君を幸せにしてくれると思って、紹介した。君たちが一目でお互い、気に入ったのを見て正直苦しかった。でも二人が幸せなのが一番と思った。出張するのも辛かった。多分、うるさいのがいなくなったとフレッドが・・・・話が進むと思ったから・・・・だけど友達止まりだと・・・・ふざけるなと思ったけど・・・・安心して・・・・
だけど、思ったんだ。僕が立候補してもいいんじゃないかって・・・・ベス・・・初めて会った日から・・・」
「部長。やっと言ってくれた・・・・・」
やはりこの言葉は効果的だった。
続きは言えなかった。部長がエリザベスに抱きついて泣き出したから。エリザベスは最高の結婚相手を手にした。
自分より大きい部長の体を抱きしめ、背中をやさしく撫ぜた。
『ナタリーにお礼かな』とエリザベスは思った。
エリザベスと部長が初めて会ったのは、まだエリザベスが子供の時だ。母親に連れられて公爵家の令息の誕生会に出席した時だ。
その時、部長は宰相補佐で独身最後の大物と呼ばれていたが、宰相である公爵家のお茶会の子守の手伝いに駆り出されていた。
そこで見かけたエリザベスが、子供の頃亡くなった妹に似ていたのだ。おもわず「ベス」と呼びかけた。
「うん?どうして私がベスって知ってるの?」
「どうしてかな?なんだかベスがいるって思ったんだ」
「すごいね、なんでも知ってるの?」
「そうだね。ベスがお菓子を食べたいと知ってるよ」
そういうと彼はベスの手を取るとテーブルの方へ連れて行った。
その後彼は時々、ベスのことを思い出した。背はこれくらいかな?どんな本を読んでいるかな?とかそんなことだ。
そして、文官試験でベスを見かけて驚いた。首席合格にはもっと愕いた。
いろいろあったが、毎朝ベスが淹れたお茶を飲むのが、幸せだった。ベスの幸せを願ってフレッドを紹介したが、フレッドがつまずいた。
ベスを手に入れた今、終わりよければすべて良し、にするために、久しぶりに部長ではなくスミス侯爵として活動することを決めた。
ナタリーは学生時代の知り合いと再会し、一緒にいた男性に熱烈に口説かれた。彼は魅力的でいい加減な男だった。
結婚したらそいつは魅力的な部分をかなぐり捨てて、いい加減な男になった。
ナタリーはその男から、逃げる事ができなかった。
「お堅いねぇ。おいナタリー。役所なんかやめちまえ、お前出るところに出たらもっと稼げるぞ。俺につくそうと思わないのか?」
その男の口癖だ。
「ナタリー俺、やっちまった。お前の可愛さを自慢してたら友達が一度、試したいってこれから来るからさ」
すぐに家を出ようとしたが、遅かった。
ナタリーは無断欠勤で役所を首になった。
フレッドは隣国からの誘いを受けて旅立って行った。あちらの公爵令嬢との結婚が決まったのだ。
侯爵家は一族をあげてフレッドを祝福して見送った。
部長は侯爵位をフレッドの弟に譲って、家にあった子爵位を継いで領地に引っ込んでのんびりしたが、国王からのひっきりなしの泣き落しに負けて、王都に戻った。
王都では王家から提供された屋敷を断って、エリザベスの家に住んでいる。
たまにこの家に押しかけてきていた、義妹夫婦は借金で爵位を失い、辺境の地で働いている。義母も父もついて行った。
古風で手入れの行き届いた家具のある居間で、エリザベスの入れたお茶を楽しんでいるスミス子爵のもとへ国王から極秘の連絡がはいった。
使者に向けてあからさまにいやな顔を見せた子爵は、
「ベス、あいつが呼んでるみたい。もういやだよ」
エリザベスは黙って微笑み、
「早く行って、早く帰ってきて」と答えた。
馬車を見送りながらエリザベスは思った。
「たまには亭主の留守もいいわね」
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