32.神降ろし会2
「えー、只今より、第一回『神降ろし会』を開催します!」
皆が座るなり、開催宣言したのは毛利さんだ。
随分唐突だなと僕が思っていると、
「六花ちゃんは、こういうの仕切りたいんだよねぇ」
「今でこそ部長って立場があるけど、六花は昔からこーだよね」
「昔が懐かしいな……」
と、住吉さん、武田さん、熊谷君。
「へ、へぇー、そーなんだ」毛利さんが、恥ずかしさで顔赤めて、居たたまれない表情になってるから、もう、その辺で許したげて……。
でもまぁ、皆は昔から仲良かったって事だよな。
「ゴホンッ、では気を取り直して……」
と、毛利さんが、皆であらかじめ相談して決めた段取りを説明していく。
まず、『神降ろし』は一人ずつ順に行う。
順番は、最初に熊谷君、次に毛利さん、最後は武田さんという順だ。
住吉さんは、この後、僕が住吉パパに会うので、もしもなんて事が起こらないように今回は見送る事になった。
そして僕は、普段から頻繁にハナコを呼んでいる気がするし、どうせ今回も降りてくるのはハナコだろうという事でパスだ。
場所は、今回『神降ろし会』を行う場所として、熊谷君が自宅の蔵を提供してくれた。物が乱雑に置かれていて少し狭いが、誰かに見られる心配をしなくて良いのはすごく助かる。
ちなみに、熊谷家に張られているという『結界』についてだが、事前に武田さんに聞いてもらい「邪悪な物を阻むだけなので、神降ろしには問題ないだろう」と言う事で、一応は解決済みだ。
『神降ろし』という大層なネーミングだけど、実際のところ交霊術のようなものだと思っているので、寧ろ、今まで邪悪な物を引き寄せていた可能性があった事を気付かされて、色々と思う所もある。
今回に関しては、熊谷家で行えば悪霊とか降りてこないし、安全安心というわけだ。
ウシシッ、ここが大量のお宝が眠っているという熊谷家の蔵かぁ……。
項は、大量に積まれた古い本の中から一冊を手に取って見る。
えーと、どれどれ……ん?…………エロ本だった。
ちょ、熊谷くーーん!! 女子を呼ぶときは、こういう本は片付けとかなきゃだよお!!
「ちょっと、山田君!……ちゃんと聞いてる?」
「う、うん、大丈夫!最初は熊谷君からだっけ。もう始めても良いのかな?」
項は、大量に積まれたエロ本群を、女子の視線から遠ざけるように物陰に押し込みながら返事を返す。
ふぅ、これで熊谷君の名誉は守られた……はず!
「じゃあ、『神降ろし』始めるよ!」
項の合図とともに『神降ろし』が開始される。
程なくして、蔵の屋根をすり抜けて熊谷君の頭上に降りてきたのは、前と同じ甲冑姿の武人で、やはり二メートルほどの長い太刀を背負っている。
ソレ、は約二十秒程その場に留まると、来た時と同じく、蔵の屋根をすり抜けて帰って行った。
「『元直』で間違いないな。後、太刀だが、退魔の力があるな」
熊谷君が『神降ろし』中に感じ取ったイメージを口に出す。
退魔かぁ……戦国の世で、人外とも戦っていたのだろうか?
まぁ、それなら悪霊をばったばったと倒せていたのも納得かな。
言い忘れたが『神降ろし』をすると、降りてきた人物の情報が脳内にイメージとして流れ込むみたい。
以前、道端で女幽霊の『お篠さん』が僕に憑いてる時、僕がお篠さんの記憶を見れたのと同じなんだと思う。
「次は、毛利さんだね。いくよ!」
「お、お手柔らかに……」
毛利さんは、若干緊張しているようだ。それは僕も同じで、期待によるドキドキが止まらない。一応、開始前に「毛利元就こぉーーーい!」と、念じておいた。
『神降ろし』が開始され、程なくして蔵の屋根をすり抜けて降りてきたのは…………えっと、…………姫かな? 毛利さんの頭上に降りてきたのは、十二単姿をした女性だった。
熊谷君の時と同じく暫く留まった後、蔵の屋根をすり抜けて帰って行った。
「妙玖さんだった。能力とかについては不明」
毛利さんが得た情報を報告する。
妙玖というのは、毛利元就の妻だった人の名前だ。毛利元就ではなかったが、なかなかレアな人物を引き当てたようだ。
能力については、狭い蔵の中で試す訳にもいかないので保留だ。
だが、これでいい。毛利さん的には、今回の一回目の『神降ろし会』では全員に『神降ろし』を試す事が目的だからだ。僕が住吉パパと話をする前に『神降ろし』は安全なのだと立証しておきたかったのだそうだ。
まぁ、一度大丈夫だったからといって安全と言い張るのも強引すぎると思うが、そこは、これから先、何度も試していくしかないだろう。
そして、僕的にも住吉パパの話が『神降ろし』と無関係ではないだろうという考えは毛利さんと同じだ。
その住吉パパとの約束の時間までもうあまりなかったりするのだが……。
なので、とっとと『神降ろし』を終わらせてしまおう。
最後は武田さんだ。
「ラスト、いくよー」
『神降ろし』が開始され、皆、期待に胸を膨らませ蔵の天井へと視線を向ける。
…………なかなか降りてこないな。
そのまま天井を眺める事、約三分。……結局、何も降りてこなかった。
「え、えっと、邪悪だったから降りてこなかった…………とか?」




