31.神降ろし会
項が職員室に呼ばれていた事を思い出したので前半にちょい入れましたm(__)m
そういえば職員室に呼ばれているんだった。
調子も良くなったし行ってみるか。
職員室に行き、僕を保健室に運んだという体育の大内先生に当時の状況を説明すると、目撃者の生徒達の証言との食い違いもなく話はすぐに終り、最後にこんな事を言われた。
「ちょっと変な事を聞くんだが、山田ん家って犬神の家系だったりしないか?」
「さぁ、聞いたことないですけど……どうしてですか?」
「お前が鈴木に殴りかかった時、犬の顔に見えたと証言する生徒が何人もいてな………いや、スマン、忘れてくれ。もう行ってもいいぞ!」
鈴木と言うのは男子生徒の名前だろう。いや、そんな事はどうでもいい。
問題なのは、僕が男子生徒に殴りかかった時、花子モードが発動していただろうという事だ。なぜだ?
あの時、狐さんの声も聞こえて無くて『神降ろし』もしてなかったはずなのだ。狐さんの勝手な判断で降ろしたというわけでもないだろう。
「あら、山田君。もう、大丈夫なの?」
ちょうど四時限目の授業が終わり、職員室に戻ってきた担任の尼子先生と鉢合わせした。
「はい、おかげさまで」
この後、「今日は無理しないで早退したらどう?」という尼子先生の言葉に甘えて、早退させてもらう事にする。
職員室を出て荷物を取りに教室へと向かう。
「ねぇ、狐さん。大内先生の言ってた僕が犬の顔に見えたってやつ、どう思う?」
『さぁな、我にもさっぱりわからんが、項があの生徒を殴らなかったのは正解だったな。犬化で強化された拳で人間を殴っておったら下手したら死んでおったからのう』
……マジか。どう言う訳か、僕が狐さんの能力を勝手に引き出しちゃった?わからないけど、あの時の黒い感情は押さえなくてはいけないやつだ。それだけは判る。
教室に戻ると、毛利さんに早退するから今日部活休むと伝えると、「今日、保健室で山田君と話したことは私から皆に伝えとくね」と言ってくれたので、安心して学校を後にした。
◆ ◇ ◆ ◇ ◆
日曜日、僕達『歴史探索部』の面々は、広島城を訪れていた。
老朽化の為、もうじき閉城となる広島城を見に行こうと提案したのは、歴史探索部の部長、毛利さんだ。
山田君を励まそう!と、いう目的もあったとか、なかったとか。
当の本人である僕は、とっくに立ち直って、平常運転だったりするのだが……。
なんなら、この後の『神降ろし会』が楽しみで仕方ないくらいだ。
噂の方は、主に熊谷君と武田さんが動いてくれて、「僕と武田さんは、もともと付き合ってはいなかった!」という方向で、すぐに収束した。
「地元のこういう場所ってさ、なかなか足を運ばないもんだよねぇ…」
部長の毛利さんが言う。
これには全員が賛同した。
僕も、以前にこのお城を訪れたのは五、六年くらい前だ。妙な懐かしさを感じる。街に来る時に近くを通る事はあっても、遠くから眺めるだけで通り過ぎるのだ。
入城料を払ってお城に入ると、城内の展示物を見ながら天守に上った。
天守からの眺めはこれが見納めだと思うと、少し寂しさを感じる。
城を出て、ベンチで休んでいると武田さんが話しかけてきた。
「山田、ジュース買いに付き合って?」
え?僕、山田だけど……熊谷君の方へ視線をやると、目で合図してきた。「行ってこい!」ってことかな?
まぁ、僕も武田さんとの約束破った事を謝らなきゃって思ってたし。
皆から少し離れた辺りで武田さんの方から話を振ってきた。
「山田、ゴメン。わたし、ちょっと無神経だったかも……」
「いや、僕の方こそ秘密にするって約束したのに話しちゃって、何と言うか……ゴメン」
なんか、先に謝られてしまった。
「それで、あんたを殴った奴ってさ、バレー部の男子で、去年わたしに告ってきた奴なんだけど、家知ってるから話聞きに行ったんだよね。そしたら、そいつ何て言ったと思う?」
「さぁ?わからないけど……そいつ、武田さんのストーカーなのかな?」
「そいつさ、「日曜、街を歩いてたら急に黒い靄に包まれて、なぜか山田が憎くて仕方なくなった」って言ってたんだよ。それって、どう思う?」
「うーん、わからないとしか答えられないけど、何かに憑りつかれてたとか?」
「そっか、そうだよね……」
期待外れというか、僕にもわからない事は判らないのだ。狐さんになら何かわかるかもしれないが……。
僕達は人数分のジュースを買い皆のもとへ戻ると、武田さんは熊谷君と二人で少し離れた場所へ座った。
僕は、毛利さんと住吉さんにジュースを配り二人の横に座る。
「ねぇ、山田君。私もさ、七美ちゃんとは幼い頃からずっと一緒だったから分かるんだけど、七美ちゃんの件、もし山田君が一人で解決していたら、七美ちゃん山田君に惚れてたと思うよ」
住吉さんは、周囲に聞こえないように小声でそんなことを言う。
「八恵、それ言っちゃうかぁ……」
毛利さんまで……
今更、もう終わった事だし、それに……
「もし、熊谷君が来なかったら、千体の霊から武田さんを守れなかったと思うんだよね」
「ソレなんだけどさ、七美って一年生でバレー部のエースになるくらいの運動神経もってるんだよね。最悪、七美に神降ろししていれば何とかなった可能性も……」
「マ、マジで!?……と、いうことは、そういう未来もあった……のか?」
「山田君、心の声が洩れてるよ」
二人は、にんまり顔でこちらを見ていた。
どうやら毛利さんと住吉さんにからかわれていたらしい。
でも、そうだな……今、毎日が楽しいし……
「彼女は、当分いらないかな…」
僕に同情してくれたのか、住吉さんは悲しい表情を浮かべていた。
……と、不意に虚空に現れた黒い影が、住吉さんに吸い込まれるようにして消えた。
……えっ?今の何?見間違い?
「…ヤッタ!ハイレタ!ハイレタ!ハイレタ!ハイレタ!……」
急に、住吉さんが何かに憑りつかれたように同じ言葉を何度も繰り返しはじめる。
「……えっ、八恵!? どうしたの?大丈夫?」
「住吉さん、しっかりして!」
住吉さんは、虚ろな目をしていて、どこを見ているかもわからない状態だ。
「どうしよう、八恵になにか憑りついちゃった……」
助けを求める目で毛利さんが僕を見るが、僕にもどうすれば良いか分からない。
「狐さん、どうしよう」
小声で狐さんに話しかける。
『うむ、完全に憑りつかれておるのう……我が軽く脅してやれば出ていくのだろうが……』
「狐さんの軽くはシャレにならない気がするから、なるべく穏便な方法でお願い」
『そうだのう……だか、巫女の娘は心配いらんのではないか?』
その時、八恵の胸元の首飾りが光り輝き、八恵の体から黒いモノが弾かれると断末魔の声を上げて消滅していった。
そう言えば、住吉さんにはこれがあるんだったな。一体、何の力なんだろう?
「……え?六花ちゃん?みんな?どうしたの?」
「どうしたも、こうしたもないよ。みんな心配したんだからね!」
住吉さんは正気に戻ったようで、憑りつかれている間の記憶はない様だ。まぁ、無事で何よりという事で……。
その後、皆でお隣の護国神社のお参りをして、お好み焼きを食べてから熊谷君の家まで帰ってきた。
ぞろぞろと蔵の中へ入って行き、思いの思いの場所へ腰を下ろす。
「えー、只今より、第一回『神降ろし会』を開催します!」




