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狐さんと行く歴史探索  作者: 貝石箱
歴史探索部
3/22

3.


 季節は流れて、春。


――新学期。

 僕は二学年へと進級していた。あの、多くの人が(やまい)を発症し黒歴史を作るという学年『中二』であるが、きっと僕には関係ないだろう。替わり映えのない毎日を過ごして一年後には三学年へと進級する。それだけだ。



(こう)、向かう先が違うと思うのだが……』


「今日から二年生なんだからこっちでいいの。さっき表に張り出されているクラス割り確認したでしょ。それより狐さん、学校では話しかけないでって何度も言ってるでしょ。僕が見えない存在と話してるって有名になりつつあるんだから!」


『…スマン。だが今更ではないか?開き直るのも手だと思うぞ。それに項よ、おぬし『中二病』『黒歴史』の条件を既に満たしているのではないか?』


「僕が中二、黒歴史……ち、ちがうし!狐さんだし!存在しているし!もう、うるさいうるさいるうるさーーーーーいぃッ!!」


 突然、声を張り上げ廊下を走りだす項。それを何事かと多くの生徒が振り返り注目を集めるのだった。


 その後、教室に辿り着いた項は自分の机に突っ伏していた。


 しょっぱなからやってしまった。あまり目立ちたくないのに。僕の平穏が……いや、まだ新学期初日だ。じゅうぶん巻き返せる。


「おはよう。君がイマジナリーフレンドがいるって有名な山田項君だよね。わたし、隣の席の毛利六花(もうりりっか)。これから一年間よろしくね」


「お、おはよ。山田項で名前は合っているけど…こちらこそ、有名じゃないけどよろしくね」


 項は顔を上げ、隣の女子に挨拶を返すと再び机に突っ伏した。


 毛利六花。確か去年、学年成績トップの生徒だ。童顔メガネの委員長タイプだが、自分の趣味意外に時間を割かれるのが嫌で役員関係に一切興味を示さず我が道を行く相当なオタク女子だと有名だ。

 そして先程、一度も話したことのない僕に親しげに話してきたことからすると、同類に思われたに違いない。だが僕は陰キャではあるが、これといった趣味を持たない。よってオタクではない。ただの陰キャよりも得意分野のあるオタクの方が上の気もするけど、決してオタクではない。


『これは……毛利の娘か』


 狐さんが何か言ってるけど教えてあげたほうが良いのかな。


 項は突っ伏したまま周囲には聞こえないように小声で答えた。


「あのね狐さん、毛利って聞けば一度はあの有名な武将を思い浮かべるかもしれないけど、毛利って名前、全国には結構いるんだよ」


『だが、色々混ざってはおるがこの(にお)いは……ほぼ間違いないと思うのだが』


「えッ、匂い? 匂いか……狐って鼻が利くっていうけど確かに狐さんが戦国時代に嗅いだ匂いと同じというのならそうなんじゃないの。……けど、マジかぁ……」


『項よ、隣の娘から血を一滴で良いから貰ってくれぬか。味見をすれば確実にわかると思うぞ』


「血を一滴下さいなんて言えるわけないでしょ!いくら狐さんのお願いでも無理だから!僕が変人って思われちゃうからッ!……でも、そんなに気になるなら本人に直接聞けばいいんじゃないの」


 項は、めんどくさそうに机から頭を上げ、隣の席に座る六花に声をかけた。


「ねぇ、毛利さん家ってさ、あの有名な一族と関係あったりする?」


「あー、わたしも元就がご先祖様だったらいいなぁとは思ってるよ。でも、知ってる?毛利って全国に三万人以上もいるんだよ! そりゃ山田君の名字とくらべたらかなり見劣りするけどね。山田君って案外、安易というか可愛いとこあるんだね」


 僕が狐さんに言った事をそのまま返されてしまった。超恥ずかしいんだけど……。

 でも、わかったぞ。あれだ。よくある、分家から枝分かれしていくうちに伝承が途絶えるやつだ。


……えッ、狐さんの嗅覚?そんなの一ミリも疑ってないよ。だって、狐さんだよ?間違えるわけないじゃん!



 ほどなくして先生が来て、ホームルームが始まった。このクラスの担任は尼子(あまご)先生という若い女の先生だった。新学期初日の今日は、この後、皆で体育館に移動して始業式⇒再び教室にてHR(ホームルーム)⇒下校という流れなのだが、このHRの後、僕はいきなり尼子先生に呼び出されてしまった。


 まだ何もやってないはずなんだけど。もしや、さっき廊下を走ったやつをチクられたかな。


「いきなり呼び出しちゃってゴメンね。で、山田君って部活なにも入ってないわよね。わたしが顧問をしている部が『歴史探索部』っていうんだけど部員が現在4人であと1人足らないのよね。良かったら――」


 部活の勧誘だった。だけど、僕、部活どこにも入るつもりないんだよね。速攻で断ろう。そう思った時、狐さんが僕に話しかけてきた。尼子先生の前で会話するわけにもいかないので、狐さんの声を聴くだけなんだけど。


『項よ。この歴史探索部とやら、ちと入ってみんか。理由は後で話す…』


 狐さん歴史探索部に興味があるらしい。まぁ、狐さんが勧めるのなら入部もやぶさかではない!


「――いちど部室に見学だけでも来――」

「――入りますッ!!」

「やっぱ、そうよね。いきなり言われても困っ……えッ、入るの!?」

「はいっ!歴史探索部、入ります!」



 こうして項の歴史探索部への入部が決まり、やっとことさこの物語が始まるのだった。ふぅっ、……




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