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狐さんと行く歴史探索  作者: 貝石箱
歴史探索部

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26/34

26.


「おせぇよ!」

「ごめん、熊谷君があまりにも強かったから、あのまま行けるんじゃないかって、高括ってた」


 熊谷君の言葉に僕は小声で返した。もともと、高みの見物を決め込もうと思っていた分、今更、武田さんに見つかる事が気まずく感じたのだ。

 熊谷君と背中合わせに立ったのも、実は武田さんから隠れる為だったりする。

 だが、これが功を奏した。互いに背を預けることで球体の直撃を食らう事もなく正面の球体に集中できる。

 ここからの熊谷君は更に強かった。太刀を振る速度が更に上がり、刀身の光に触れる球体を次々と消滅させていく。

 僕も頑張った。遠目にはわからなかったが、球体には顔があり、元は生きた人間だったモノらしい。だから何だ。関係ない。こいつらを野放しにすれば、武田さんや他の誰かがまた被害に遭ってしまうのだ。

 僕は球体の顔面を殴り、地面に叩き落すとペシャンコになるまで何度も踏みつけて無力化させる。これでようやく一体。あれっ?僕、なんか弱すぎん? いや、熊谷君が強すぎるんだ。だが、今回僕は熊谷君の背中を守る事でじゅうぶん役に立っているといえるだろう。


 そして、この後の作戦だが、再び熊谷君と武田さんを二人きりにする為に動こうと思う。

 幸い、武田さんは熊谷君の胸に顔を埋めたまま震えており、僕にはまだ気づいていない。

 球体の数は残り約半分ほど。後は熊谷君の背後の球体を、ちまちまと倒しつつ狐さんの食料となる邪気を回収して、熊谷君が球体を殲滅させると同時に二人に気付かれることなく離脱する。

 これぞ完璧な作戦だ!


 そうして、順調に球体の数を減らしていき、残り3割程となったところで球体共が動き出した。

 僕たちを囲むようにして全方向から攻撃をしかけていた奴らが攻撃を止めて、全ての球体が熊谷君の正面へと集まる。

 もともと、こいつ等の狙いは武田さんなのだ。

 背後からの攻撃が無意味だと気付き、正面からの一点集中攻撃に切り替えたのだろう。


 背中から緊張が伝わってくる。

 熊谷君は戦意を失ってはいないようだ。

 いけるのか? それはわからない。

 僕は、加勢に回ったほうが良いのだろうか。

 いや、ダメだ。

 僕が動いたら再び熊谷君の背後に隙が生まれてしまう。

 ここは信じるしかない。

 恐らくこれが球体共の最後の攻撃になるだろう。

 全ての球体の攻撃を凌ぎきれれば、熊谷君の、僕達の勝ち。

 凌げなければ僕達の負けだ。

 その場合、その後の僕達がどうなるのかは想像がつかない。


 そして、緊迫した空気の中、球体の一斉攻撃が始まる。

 無数の球体が、一斉に熊谷君めがけて飛んでくる。

 熊谷君は、それまで正面に向けていた光の刀身を横の向けると、柄の部分を軸にして高速回転させて光の円を作り出す。

 直後、球体が次々と光の円の中へ吸い込まれるように消えて行く。

 あっという間に百体もの球が光の円の中に消える。

 残り二百体ほど。

 後、5秒くらい光剣を回転させ続ければ、すべての球体を消滅させれるだろう。

 残り百……。


「あ……」


 熊谷君から声が漏れたと同時に、光剣は手元から離れていた。

 ……失敗した? そう思った時、奇跡が起こる。


 熊谷君の懐から、別の手が伸びて空中でキャッチすると、そのまま回転させ続けたのだ。


 そして、光の円の中で最後の球体が消滅する。


「昔、バトントワリングの練習に付き合わせたのが役に立ったわね!」

「スマン、七美、助かった。実は、もともと2秒ほどしか回せねぇんだが、咄嗟にこれしか思いつかんかった」


 空中でキャッチした光剣を、そのまま最後まで回し切ったのは武田さんだった。

 さっきまで熊谷君に顔埋めて震えていたはずなんだけどナァ……まぁ、とにかく助かった。

 ……いや、まだだな。

 そこにはまだ、一際と禍々しい気を纏う怨霊の頭部が一体だけ浮かんでいた。

 きっと、こいつが親玉なのだろう。


「フフフ、その程度で勝――」

「――えいっ!」

 ポコッ、「ギャァァァァアアアアアッ!!」


 武田さんが振り降ろした太刀が脳天に直撃すると、怨霊は苦悶の表情とともに叫び、消滅した。


 怨霊、何かしゃべりかけてたけど、喋らせないんだぁ…………。

 あっ、そうだ。離脱しなきゃだった。忘れてた。


 そうして、ふと視線を向けた先で武田さんと目が合って、ジト目で見られてしまう。


「おっ、お邪魔しましたぁッ!」


 咄嗟にそう言って、僕はその場から逃げるように駆け出した。

 まぁ事実、逃げたんだけど。


「あっ、ちょっと、山田ァ、待ちなさいよッ!」

「サンキュー山田ッ! 助かったぜ!」


 武田さんの呼び声と、熊谷君の感謝の言葉を背中で受け止め、走り去る項なのだった。



 結局、死神姿の黒い影はなんだったのかと言うと、怨霊となった処刑人が、この地に集まってきた霊を取り込んで、死神のような姿にまで成長した姿だったのだと僕は思う。


「ねぇ、狐さん、あの場所だったって事は、武田さんって信重さんの子孫だったりするのかな?」

『いや、あの娘は呪われてはおらんから何代も前の血筋であろうな』

「……えっ、呪いって、どういう事!?」


 この後、狐さんからの返事が返ってくることはなかった。これ以上は話したくはないという事なのだろう。

 ただ、僕から言えるのは全ての怨霊が消滅したあの場所で、今後、何かが起こる事はないという事だ。




当初の予定では、雨竜視点で書きはじめて、七美が雨竜に話さなかった理由を回収しつつ、二人の馴れ初めを盛り込んでいく予定でしたが、前回の更新から一ヶ月以上も経っており、時短で書いて山田項君のナレーション?と言う形になりました。雨竜視点では、ギャグ無、シリアスな感じで今後どこかで掲載したいと思います。

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