21.
そして、放課後。僕は、毛利さんに「今日、部活休む」とだけ伝えて、武田さんとの待ち合わせ場所へと向かった。
「僕にしか頼めない事ってなんだろう。狐さんなんだと思う?」
『……さあな、項にもようやく春が来たのではないか?』
「そんなわけないよ。僕だって武田さんが熊谷君と仲良いのは知ってるし、分をわきまえているつもりだよ」
待ち合わせの場所は校門前だ。僕にしか頼めない事が何か分からないが、それは下校途中に聞くことになりそうだ。
校門へは僕が先に着いたようで、およそ一分遅れて武田さんが到着した。
「ごめん、六花に部活休むって言いに行ってて遅くなった」
僕も、さっき教室を出る時に毛利さんに休むって伝えたんだけど、ほぼ同じタイミングって事で変に詮索されないだろうか?
だが、その心配も杞憂に終わる事になる。
なぜなら…………
「山田君、わたしと付き合ってください!」
「……えっ!?」
……武田七美の突然の告白によって、事態は予期せぬ展開を迎えるからに他ならない。
「……え、僕山田だけど、相手間違えてない?大丈夫?」
「わざわざ呼び出しておいて、人違いするわけないでしょ! それともアンタ、わたしに告られて嬉しくないわけ!?」
「うーん、想像の範囲外というか、熊谷君から昨日の武田さん、なんか様子可笑しかったって聞いていたから、その事だろうと思ってたし……」
「なーんだ、雨竜、もう話してたんだ。………だったら、その話聞いてなかったら嬉しかった?」
「いや、陰キャの僕が女子に告白されるとかありえないし、何かの罰ゲームって思ったかな」
「アンタ、どんだけ卑屈なのよ。まぁ、いいわ………それで、わたしと付き合ってくれるんでしょ?」
「そ、それは、えっと……」
「……週末まででいいからお願い!」
「週末までとか、最初から別れる前提で付き合う意味わかんないし」
結局、武田さんに押し切られる形で、武田さんに今起きている事態が収まるまでという約束で、彼氏役を演じる事になる項なのだった。
◆ ◇ ◆ ◇ ◆
「それで、昨日、武田さんに何があったか話してくれるんだよね?」
武田さんの話を聞く為、僕たちは通学路から外れた場所にある古民家を改装したカフェに来ている。窓からは緑豊かな風景が望め、お店の中は歴史を感じさせる太い柱や高い天井が独特な空間を作り出している。武田さんもきっとここの方が話しやすいだろう……
…そう思ったのだが、武田さんはなぜか複雑な表情を浮かべていた………なんでだ?
「はぁ……アンタには最初から事情を説明しとけば良かったと思うわ。たとえ嘘の告白でもそれなりに勇気いったんだからねっ!」
……いや、最初から嘘告白なんてしないでほしいって思う僕がダメなのか?
「……まぁ、良いわ。そうね、あれは……確か、三か所目に行った場所で、雨竜と並んで石碑の前に立った時だったわ。私の耳元で『……見つけたぞ』って声がして、振り返っても誰もいないの。当然よね、ずっと雨竜と二人きりだったんだもの。でも、わたしには確かに聞こえたのよ。それから、ずっと誰かに監視されているような気がして……わたし、一体誰に見つかったのかなぁ?」
今の話聞く限りまだ被害はなさそうだけど……
「今の話、雨竜……熊谷君に話さないのは何で?」
次回は4月5日(土)更新予定です。ストック貯まれば週の間でも更新しますm(__)m




