15.
二か所目に訪れたのは、三叉路の叉の路傍に立つ石造りの道標だった。そこに刻まれた文字は今となっては風化して読めないが、昔は多くの人の往来の助けとなっていたのだろう。
その後、道標四か所と災害や戦死者の慰霊碑、平安時代にお城があった事を示す石碑等を巡り、残すところあと一か所となった。
「山頂の『銀山城跡』を目指すって言われたらどうしようかと思ったけど、今日は城跡や神社は巡らないんだね」
最近、体調が良いから忘れがちだけど僕の体を気遣ってくれてたとかか?
「今日は数打ちたかったからね。お城とか神社はまた今度、一緒に行こうね」
そう言ってほほ笑む毛利さんの表情に一瞬ドキッとしてしまう。僕、もっと異性の耐性上げないと、将来簡単に美人局とか引っ掛かりそう。
「山田君って美人局とかに引っ掛かりそうだよね」
それ、今自分で思ったやつ!!
「じゃあ、僕が女性に慣れるように毛利さんが練習台になってくれる?」
「……えっ!?」
みるみる毛利さんの顔が赤くなる。
やり返せて、項は心の中でガッツポーズをするも、すぐにある事に気付く。
……まずい、これ誤解されるやつだ。
そんな男女のやり取りを、怨めしそうに見つめる視線があった。
……いや、実際に怨めしいのかは判らないが、路傍から二人を見つめる人影があった。
ソレは、項と六花の歩く15メートルほど先に立っていた。
僕が道端のソレに気付いた時、直感で目を合わせちゃダメだと思った。
ソレは着物を着た女性だった。綺麗に結われた髪に、かんざしを刺し、ただ、肌は異常に白く、とても生きた人間には見えなかった。実際、もう生きてはいないのだろう。
ソレとの距離が、10M、……5M、……と、だんだん縮まっていく。
着物女性は、僕たちが歩くのに合わせて視線が移動している。確実に目でこちらを追って来ている。同じ場所に立ったまま。動けないのか?
……動けないタイプなのか? 地縛霊みたいな?
それなら、何もアクションを起こさないまま気付かない振りで通り過ぎれば、やり過ごせる……………かもしれない。
まぁ、黙って通り過ぎれば大丈夫だろ!
そんな期待を胸に真横まで来た時、
「……しくしく」
……女性のすすり泣く声が聞こえた。
心の中で「ひっ!」と悲鳴を上げるも、表には出さずになんとか通り過ぎる事が出来た。
そして、…………5M、…………10M、離れて、やり過ごせたと思った時、
「……しくしく」
すぐ、後ろから聞こえてきた。
……めっちゃ、後ろを憑いてくるタイプだった!!
まだ半分くらいで途中ですが、またしばらく忙しくなるので投稿しときます。ちょくちょく見に来られても更新できないので予告を……次回、来週末かそれ以降になると思います。