表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

ケ・セラ・セラ

作者: 黒楓

今日も黒いですが……エチではありません。




 妻の前に不倫の証拠写真を並べながら『この調査費用の支払いは済ませたのだろうか? 支払方法は現金?それとも振込?』と言った疑問や不安が頭を擡げるが『今は離婚の事に集中せねば!!』と自らを叱咤激励し、妻に向かって話を切り出す。


「離婚はしてもらう!! しかし、私はキミからだけでは無く、相手の男に対しても慰謝料を取ろうとは思ってはいない。これはひとえに私が自分の体面を重んじるからだ!」


 妻は言葉を返す。

「『なぜ、こうなったのか?!』と、理由はお尋ねにならないの?! 私にも言いたい事は山ほどあるし、闘うつもりよ!!」と


 私は少しだけ皮肉を混ぜた微笑みで妻を見据え言い放つ。


「闘いにはならんよ!財産もキッチリ2分の1を分け与えるし、私は不貞行為など行ってはいないからな。キミが今後、この写真の男とどうなろうが関知もしない!」


「あなたの仰る事……とても信じられないわ!! “渡りに船”みたいな顔をなさってるもの!!」


 妻は勘の鋭い女だ。

 だから私は軽くため息を付いて見せる。


「まあ、その様に信頼関係が築けないからキミは不貞を働く訳だ。例えこの様に人を雇って調べさせたとしても……私が不貞を行った証拠など出やしないよ。私がワーカホリックなのはキミが良く知っているだろうに」


 そう!私はワーカホリックだった。


 私の疾患の原因がそれに関係するのかどうかは分からないが……そう遠くない将来、私は仕事が出来なくなる……そうなる前に、今抱えている案件を次々と引継ぎしているのだが……実は妻と別れるより仕事を手放す方が何倍も辛い!!それこそ断腸の思いだ!!

 こんな薄情な夫の母親の面倒をずっとみてくれた妻の心情は、壊れつつある私でもまだ察する事ができる。

 だからこそ!!今回の不倫騒動は()()()()だった。

 これから母以上に手が掛かることになるであろう“この息子”の世話で……これ以上、妻の人生を食い潰す事はできない!!


 妻が出て行ったらグループホームに入り、この家は売り払おう!!


 ああ!!若年性認知症で脳みそは腐っているのに……

 へたに頑丈なこの体はいったい何年もってしまうのか??!!


 私の人格や記憶が壊れゆく精神的な死と……取り残された()()()()()がしでかすであろう様々な事に私は恐怖し、それを紛らわせたくて……

 私は古い映画で歌われていた歌詞を口ずさむ。


 そして今、妻を目の前にしても

 頭の中は「Will Be」を繰り返すのみだ。





これは恐ろしいなあと思ってしまいます(-_-;)




ご感想、レビュー、ブクマ、ご評価、いいね 切に切にお待ちしています!!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] 切ないような、潔いような、何処かで本当にありそうな、考えさせられるような、いいストーリーでした。 [一言] 面白かったです。
[一言] 不倫離婚かと思いきや、その背景にこういう事情が……。 男性の心遣いと覚悟に胸が締め付けられるようでした。 ラストシーンがとても印象的ですね。 壊れたレコードの表現、好きです。 黒楓さん、あり…
[一言] そう、認知症は、概して、 「肉体は健康」 なんだよね。 だから余計困るんだよね。 徘徊とか・・ 私も近くにそういう人がいて・・
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ