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家の時計が3分早い

作者: さくらもち

ホラーに分類してはあるけどそこまでというかホラー要素は皆無です。若干不気味かもですが。

「僕」の考え方と家全体のちょっとした違和感を感じてもらえればと。

僕の家の時計は、3分早い。3分だけ、早い。どんなに時間を合わせても、いつの間にか3分進んでいる。

たかが3分、大差ないが気になりはする。



家の時計が3分早い



目覚まし時計が鳴り響く。スマホの時間と照らし合わせる。ぴったりだ。

部屋にある壁掛け時計の時間を見る。スマホの時間と照らし合わせる。ぴったりだ。

パジャマのまま部屋を出る。廊下の奥に古いが動いている振り子時計がある。振り子時計は他の場所よりも埃が積もっている。スマホの時間と照らし合わせる。3分ずれている。3分早い。

リビングに入る。テレビに記されている時間を見る。スマホの時間と照らし合わせる。1分ずれている。1分遅い。

母に声をかける。母からの返事はない。黙々と食事をしている。

父に声をかけてみる。無視された。淡々と黄ばんだ新聞を読んでいる。

僕も席に着く。冷めてしまった目玉焼きに箸を伸ばす。黄身が硬い。僕の好みではない。

「奏叶、いただきますは?」

母が声をかけてきた。いただきますを忘れていたのかもしれない。

「いただきます。」

母は満足したのか、また食事に戻っていった。まあ、元からこちらを見てはいないが。

お味噌汁も白米も冷えきっていた。食べられることに感謝するべきなのかもしれない。

朝食を終え、食器をキッチンに運ぶ。相変わらずシンクには小バエが住み着いていた。これは何日前の食器だろうか?洗うのは僕の仕事じゃない。だから僕は食器を置いたらもうキッチンに用はない。

キッチンを出て、リビングを後にする。次に向かうのは洗面台だ。

洗面台についた。やはり蜘蛛の巣が張り巡らされている。歯ブラシと歯磨き粉を取った。蜘蛛が僕の腕に乗りそうになったが嫌だったので振り払った。

鏡を見ながら歯磨きをしようと思った。しかし鏡は曇っている。僕は諦めた。

歯を磨き終わった。蛇口を捻ってみる。泥水が出てきた。口の中をゆすぐのはやめておこう。蛇口を逆方向に捻った。これでは顔も洗えない。もう洗面台に用事はない。洗面台にさよならをした。

廊下に戻ってきた。所々老朽化して穴が空いている。穴には土やら謎のうねうねした虫がいた。仄暗い廊下をゴキブリが横切った。そして埃が積もっていた。

階段を上る。ギシギシ、と嫌な音がする。そのうち崩れ落ちるだろうな、と思う。

2階廊下に着いた。部屋に戻って何をしようか。

ふと時計を見る。埃は積もってるし蜘蛛の巣が大量に張り巡らされているし傷ついているが動いている。

違和感を感じ、時計とスマホの時間を照らし合わせる。4分ずれていた。4分早い。

廊下を振り返る。埃が積もっている。さっきよりも多い。埃を踏んで階段へ向かう。階段はなくなっていた。僕はどうやって1階へ行けばいいのだろう。

時計を振り返る。時計の傷は増え、蜘蛛の巣も倍以上になっている。辛うじて時間が見えるくらいだ。

改めて時計とスマホの時間を照らし合わせる。



家の時計が4分早い。


この後どうなったか、この前はどうだったのか、僕はいったいどんな人物なのか、そもそもどんな世界観なのかはご想像にお任せします。

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