「麻宵と千草~happy sisters」
麻宵と麻宵の妹である天月千草のお話です。
挿絵は龍之進さんから描いていただきました。
「パンパカパーン!発表しまーす!!千草!今日は近所の公園に一緒にバイキングに行こう!というか行くべき♪これは決定事項だよ~!」
ある日の朝に麻宵はキッチンで料理をしている妹の千草にそう言った。千草は12歳の小学生でピンクの髪の色で頭の両脇のお団子が特徴的な女の子で、麻宵と千草は両親が早くに亡くなっていて現在は事務所近くのマンションに姉妹二人で住んでいる。
「とりあえずおはようお姉ちゃん。そして落ち着いてね。バイキングじゃなくてハイキングでしょ?」
トマトを輪切りにしながら千草は苦笑いでツッコミを入れた。
「フッフッフッ~甘いよ千草!かりん糖くらい甘い。お弁当とか料理とかお菓子をたくさーーん持って行って広げればバイキングになるじゃない!」
「(なんで甘さの例えが、かりん糖なんだろう…。)と、とにかく、今日はハイキングに行こうって事だよね?お姉ちゃんと何処かに出かけるなんて久しぶりだから喜んでOKだよ!」
千草の返事を聞いて麻宵はオーバーアクションに感動した。
「千草…あなたはなんて素直でいい子なの?本当に私の妹なのかしら??」
「私が素直だとしたら、それはお姉ちゃんに似たからかな♪だから私は間違いなくお姉ちゃんの妹だよ!」
その言葉に麻宵は「ぐはぁ~。」と言って、ふらふらとキッチンの椅子に腰掛けた。
「あぅ~朝から千草のホワホワ光線にやられたよ~。かわいいふりして中々やるね千草は~。」
「もう意味がわからないよお姉ちゃん。それよりハイキングに行くなら、早く顔とか洗ってきたほうがいいよ?」
「あ、それもそうだね!それじゃパパッと済ましてくるねー!」
そう言って麻宵は洗面所の方へと向かっていった。
「ハイキングか久しぶりだなぁ。お父さんとお母さんが生きていた頃みんなでよく行っていたっけ…4人で一緒にお弁当作って、お姉ちゃんいつも卵焼きを焦がしっちゃってお父さんに笑われていたっけ…。」
千草は両親がいた頃を思いだして目から涙が出そうになったが、我慢した。両親はいないけれど私にはお姉ちゃんがいる。それに今だって十分幸せだから寂しくなんてない。
「私は今でも卵焼きを上手に焦がすけどね~!」
顔洗いに行った麻宵が着替えも済まし、いつのまにか戻ってきていて千草の後ろに立っていた。
「あ、お姉ちゃん。上手に卵焼きを焦がしちゃ駄目だよー。そうだ!卵焼きをこれから焼こうと思っいるんだけどお姉ちゃん挑戦してみない?」
千草は腕で目をゴシコジと一拭きして笑顔で言った。
「ほほう…千草は朝ごはんorお弁当のおかずを一品無駄にしようって言うのかしら?」
「大丈夫だよお姉ちゃん。私も隣で付いているし、この前買ったこの本だってあるから!」
そう言って千草は「初心者でもできるクッキング」という本を麻宵にみせた。
「どれどれ~……えぇ!?卵焼きを作る手順ってこれだけなの??」
本を読んで麻宵は何故か凄く驚いた様子だった。
「うん。そうだけどなんで?」
「もっと、こう何かを加えなくていいの?人参とかピーマンとか挽き肉とか?」
「それじゃオムレツになっちゃうよ。卵焼きは卵と調味料だけで基本は作るんだよ。」
そう説明されて麻宵は目から鱗が落ちるくらいの衝撃を受けた。
「そ、そうだったんだ~!?私は卵焼いてる時に何か加えたいけど何がいいかな~って考えちゃうんだよね。」
「たぶんそれが失敗する原因だよお姉ちゃん!シンプルが一番とも言うじゃん。」
「確かに…よーしさっそく作ってみよう千草!」
「うん!」
こうして二人は卵焼きの作り始めた。楽しそうにおしゃべりしながら料理をする二人はとっても幸せそうであった。そしてしばらくして麻宵がフライパンをの蓋をゆっくり開けてみると中に黄色い卵焼きが出来ていた。
「や、やった…。」
「やったねお姉ちゃん!大成功だよ!!…お姉ちゃん?」
卵焼きは大成功なのだが麻宵はうつむき両腕は震えていた。
「どうしたのお姉ちゃん?」
しばらく麻宵は「うぅ…。」と言いながらうなだれていだか突然、
「ヤッターー!遂に宿敵だった卵焼きが出来るようになったーーー私って最高ー!!」
と大声で叫んで喜んだ。
「わっ!?ビックリした!もーう、おどかさないでよ。でも良かったねお姉ちゃん。」
「うん♪ありがとう千草!それじゃお皿にもるね。」
そう言って麻宵がフライ返しで卵焼きを皿に移そうしたが、その途中で事件は起きてしまった。
「あぁー!」
二人は同時に声を上げた。なんと卵焼きがフライ返しから落ちてしまったのだ。
「た、卵焼きがぁ…。」
「お姉ちゃん…。」
すぐ麻宵はしゃがんで落ちた卵焼きを床の卵焼きを集めた。
「あはは…まぁこうなちゃうよね……。」
「で、でもでも!卵焼きは自体は成功したんだし自信は持っていいと思うよ!」
「……そうだよね!ありがとう千草!また今度リベンジするね!!」
「うん!ファイトお姉ちゃん!!」
(よーし次は絶対成功するぞー!!)
心の中で麻宵は強く思うのだった。
そして二人は朝食を食べた後に近所にある大きな公園にやってきた。
「ふぅー到着!お疲れ様~それじゃお休みなさーい!!」
そう言って麻宵は草っぱらに大の字に倒れた。
「もう。来ていきなり眠っちゃ駄目だよお姉ちゃん。せっかく来たんだから何かしようよ?」
千草が寝ている麻宵にそう言うと麻宵は体を起こして不敵な笑みを浮かべた。
「ふふふ…千草がそう言ってくると思って、じゃじゃーん!バドミントンセットを持ってきてみましたー♪」
「えっ?部屋にそんなのあったっけ!?」
「うにゃにゃ~事務所に有ったやつを勝手に拝借して来たんだよ~。」
「えぇ!?勝手にもってきていいものなの?」
「さぁー?まぁ良いと思うよ♪」
「(よくないと思うよ…。)というかラケットに赤羽花梨って書いてあるよ。これって花梨さんのでしょ!?」
確かにラケットには赤羽花梨と名前が書いてあった。
「本当だ。これって花梨さんのだったんだ~…まぁでも後でちゃんと返しておけば大丈夫だよ!それよりいくよ~千草ー!!」
バドミントンの羽根をを宙に投げ麻宵は千草に向かってそれをラケットでおもいっきり打った。
「えっ!わゎ!?」
千草は驚きながらも羽根を打ち返した。
「おぉ~千草やるねー!!」
そう言って麻宵も打ち返す。羽根は高くそして勢いよく千草に飛んでいく。
「もうお姉ちゃんはいろいろいきなり過ぎるよー!」
言いながら何とか落ちる寸前の羽根に千草は追いつき、また高く麻宵に打ち返した。
「凄い凄~い!それじゃ羽根を増やすよ千草ー!!」
「え?えぇー!?」
千草に方に左右からバドミントンの羽根が曲線を描いて向かってきた。
「む、無理だよ!!」
千草は右から向かってくる羽根は何とか打ち返したが左から向かってきた羽根は反応すら出来なく、羽根は地面に落ちた。
「あらら~。残念千草!!」
「残念というか2個なんて普通、打ち返えせないよ…。」
「そう?藍理さんとか普通に打ち返してくるよ!」
「藍理さんが打ち返せても、私にはレベル高すぎだよ。ただでさえ体育の授業は苦手なんだよ。」
千草は頬っぺたをプクーと膨らませた。
「怒ってもカワイイね千草は♪千草が体育が苦手だからこそお姉ちゃんが鍛えてあげたんだよ!」
「それは嬉しいけど、お姉ちゃんも苦手な国語の四字熟語を何とかした方がいいと思いますよ?中学生で一石二鳥を一石三年とか言うのはいかがなものかと思いますが?」
少しイタズラな笑顔で千草は言った。
「ムムッ…石の上で三年待てって事だよ~!」
「それは石の上にも三年でしょ…。いろいろ間違ってるよお姉ちゃん。」
「えーと…うーん。そうだ!そろそろお昼にしようか?」
「まだ11時過ぎだよ?」
左手にした腕時計を見ながら千草はそう言った。
「大丈夫大丈夫!私はお腹ペコリーヌ三世だから!!」
「誰!?というかお姉ちゃんお腹空くの早すぎだよ。」
「動いたからねー♪」
「うーんあんまり動いて無い気もするけどお腹ちゃんがお腹空いたならしょうがないか、お昼にしようか♪」
そう言って千草は持ってきたランチバックの中からお弁当やら水筒やらを取り出した。麻宵はその横に素早くレジャーシートを広げてその上に素早く正座をした。
「ごはーん♪ごはーん♪」
そう歌いながら麻宵はシートの上に広げられたお弁当の蓋を次々開けていった。
「ふぉー!肉団子がいっぱい!!これ千草の手作り?」
「うん!最近覚えたんだよ。」
「へぇ~流石千草だね!それじゃいただきまーす♪」
「はい。召し上がれ♪」
肉団子を箸でいっぺんに2つも掴んで麻宵は口の中に放り込んだ。
「んー!美味しい♪何だかほのかにフルーティな甘さもあるね!」
「流石お姉ちゃん。隠し味にパイナップルを少し入れてみました。」
「うん!バッチリだよ千草!」
「お姉ちゃんが一生懸命手間かけて作ってくれた唐揚げもとっても美味しいよ!作ってくれてありがとうお姉ちゃん♪」
「アハッ!どういたしまして♪」
そんなやりとりをしながら二人は自分達が作って持ってきたお弁当をあっというまに(主に麻宵が)食べ終えた。
「ぷはぁー満足満足ぅ~~。」
麻宵は幸せそうに自分のお腹を擦った。
「やっぱり千草の料理は最高だよーご馳走でした千草~。…あれ千草?」
返事がしないので麻宵が千草の方をみると千草は座りながらクゥクゥと眠っていた。
「そういえば千草は小学生なのに毎日5時半に起きて朝食の準備してくれているんだっけ…。今日も同じ時間に起きて朝食を作ってくれて私のいきなりなアイディアにも付き合ってくれてお弁当まで千草は作ってくれて…。」
麻宵は千草をゆっくり横にして膝枕をした。
「いつも本当にありがとう千草。こんな姉だけどこれからもよろしくね。」
そう言って麻宵は眠っている千草のピンクの髪を優しく撫でた。そんな二人の姉妹を太陽は温かく照らしていた。