3話 ヒーローは就職活動中
「また、ダメだった、、、」
耀はスマホに届いた"お祈りメール"に肩を落とした。
居間の円卓の上のベマは、可哀想に、と抑揚のない聲を発した。
『正体を隠してヒーローをしながらの就職活動だなんて。一般企業を相手に、4年の夏に決まってないのって、なかなかヤバいってやつですか?』
「、、、」
耀はジト目でベマを見やった。無言の肯定にベマは小さく笑う。
「うるさい。ヒーローはいつまでもできるわけじゃないし、そもそも稼げない。俺だっていつかは美人な嫁さんをもらって家族を養うんだ」
『はいはい。応援してます』
ベマがその言葉を聞いたのはおそらく10回目ほど。おのずと返事も適当になる。
「そもそも、宵の三日月のやつら、俺のこと知りすぎだろ。なんで面接の日に限って襲撃してくるんだよ。面接すっぽかしとか、笑えねぇ」
盗聴されてるのか?!と耀は部屋のあちこちを見る。この電源タップが怪しいか?などと抜き差ししてにらめっこしている。
『ププ』
「このクソマスクが。そういえば、前にも大事な時期に邪魔された気がするんだよな。ずっと前、大学1年の最後の方」
抜いた電源タップを振りながら、耀はベマに尋ねた。
『まぁ、常に奴らには邪魔されてますからね』
「確かに。次こそは受かる。内定をもらって、美人な嫁をもらう!」
『それは、飛躍しすぎでは、、、』
ベマの呟きは、耀の耳には入らなかった。