2話 私の使命は
エメラルドとアメシスト色の強烈な光に包まれていた
。
眩しいと感じ、目を細めた。
浮いていた体が地面につき、冷たくつややかな感覚が足の裏に広がる。
この瞬間をもって、私は確かに存在し始めたようだ。
光が収まると、仄暗い空間になった。いや、元に戻ったと言った方が正しいのかもしれない。暗さに目が慣れてくると、人工的な空間の中に、エメラルドとアメシスト色の仄かな光がいくつも浮かんでいることに気がついた。
それは壁にかけられた黒百合のオブジェから発せられている。
一面艷やかな黒い石の床でできた、殺風景な広い部屋。一際存在感のある大きな窓の向こうに浮かぶは大きな真紅の三日月。
純粋に綺麗だと思った。そして、なぜだか懐かしくも、怖くも感じた。
後方からコツンコツンという音と、何かが擦れる音がゆっくりと近づいてきた。
私はすぐさま振り向いた。それが足音とマントが地面に擦れる音だとわかっていたから。
「おかえり、私の下僕」
その低くて心地よい声を聞いた瞬間、私は、私であることを思い出した。まだ多くは思い出せない。それでも、私が以前もここに居たことは強く覚えている。
「復活の儀を執り行っていただき、ありがとうございます。ダークムーン様」
私は片膝を付き、深々と頭を下げた。
この時、初めて自分が裸体であることを認識した。やけに白い肌が闇の中に溶けきれずにいる。少し時を遅くして、主を前に裸であることに少しだけ動揺してしまう。
「君は417号だ。顔を見せておくれ」
私は顔を上げた。
そこに見えるは、この世の何よりも美しすぎる主の顔。褐色の肌に紺碧の艷やかな長髪。黒い眼球に白い虹彩と瞳孔、筋の通った鼻、真っ赤な唇は完璧なバランスで配置されている。ダークムーン様は私の顔を見るなり、口角だけをきゅっと上げた。
「今回は特によくできているね。これならきっと、私の望み通りになるだろう」
白い瞳に見つめられ、私は息を呑んだ。
美しいからだけではない。
腸をぎゅっと掴まれたような感覚。冷や汗がすっと頬を伝った。
「はい。次こそは、次こそは必ず」
私の返事に満足でもしたのか、ダークムーンは少しばかり目を細めた。
「期待しているよ、417号」
そう言うと、ダークムーン様は踵を返した。
私がやるべきことは唯一つ。
奴の、アーリートワイライトマンの仮面をダークムーン様に捧げること。




