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コンサートは二重の意味で楽しみ?

お待たせしました 言い訳は活動報告で

 今回のランチ会も上手くいったと思う。正直、雰囲気に助けられた所も大きい。

 途中までは店の仕事に活かせるかもと思ったんだけども……。


「ワイワイ騒いで食べるご飯は美味しいけど、店じゃ難しいか」

 これが僕の感想だ。店には一人で見えるお客様もいるし、静かに食事を楽しみたい方もいる。

 仲間で大騒ぎしながら食べるご飯は美味しい。でも、それを迷惑に思うお客様もいる訳で……うちは後者の人が多いと思う。


「そんなの当たり前だろ。クラスのリア充連中みたく『俺達が楽しいから、皆も楽しい筈』ってのは、無神経なだけだ。その辺はホールの人が上手く分けているんだと思うぞ」

 ホール業務か。僕は配膳が主だし、誘導は母さん達がやっている。多分、僕が気付いてないだけで、色々考えているんだと思う。


「リア充連中って言えば、今日は実のスマホ鳴らなかったね。実をカラオケに誘った時も、織田アホのアシストをしなかったし」

 桃瀬さんが不思議そうに呟く。確かに織田君達の性格からして『今からでもカラオケに来ない?』って言いそうなんだけど。


「あたいも、こんな上手くいくとは思わなかったよ」

 夏空さんは何かを知っているらしく、苦笑いを浮かべていた。その視線の先にいるのは徹だった。


「まさか徹が何かしたとか?」

 徹の力があれば可能だと思うけど、あいつは力の乱用をするタイプではない。下手に圧力を掛ければ、織田君の性格からして暴走する危険性がある。


「俺は何もしてないよ。ただ祭に頼んで、彼氏がいる友達と恋話をしてもらっただけさ」

 それだけ?なんで、それで織田君や取り巻きが静かになったんだ。


「だから祭と亜美が、あんなに惚気まくっていたの?二人してデレデレしまくって『大学生の彼氏と箱根にドライブに行ったんだ』とか『オートクチュールのドレスを作ってもらってさ』とか。幸せ自慢は他所でやれって思っていたら、彼氏しょうじんくんの指示だったんだ……逆にむかつくわ」

 夏空さんの性格からしてドレスを作ってもらった事を内緒にこそすれ、自慢はしないと思う。でも、それが徹の頼みだったのなら頷ける。


「取り巻き連中も、もう高校生だろ?いつまでも、皆仲良くで満足する筈がない。まして高校から加わった奴等は、抜けがけ禁止ルールに納得していない筈だ。そんな中、他人の幸せエピソードを聞いたら『私も織田君と』って思う訳さ」

 結果、ライバルを一人でも減らそうと思い、秋吉さんがカラオケに来ない様に動いたと……確かに取り巻きが自発的に動いたのなら、織田君も騒がないか。


「カラオケに行った子のライソだと、皆必死に盛り上げているみたいだよ。『こっち盛り上がっているから、実に来なくて良いって伝えてね』だってさ……あたいが言わなくても、誰かさんは良里りょうりに夢中なんだけどね」

 料理の所で夏空さんが僕を見た。確かの僕が作った料理を美味しそうに食べてくれている。でも、夢中って程ではない。


「さぐさぐ、あれは天然なの?まさか高等なじらしテク?」

 照山さんが僕を見て溜息を漏らす。じらし?蒸らしの効き間違いだろうか?茶碗蒸しを作ったし。


「すだよ。変わらなくて僕は安心したけどね。信吾君、良い仲間が出来たんだね」

 探、どうした?茶碗蒸しにはすは入ってなかったぞ。


「うん。それは胸を張って言えるよ。竜也、持って帰る分は、どれ位あれば良い?」

 竜也が持って帰れる様に、多めに作っておいた。でも、いつ食べるんだ?コンサートのリハーサルの間にでも食べるんだろうか?

 ……料理は持って一日だ。同じ物を短い期間に二回も食べたら飽きると思うんだけど。


「一人分で良いよ。徹、チケットは手に入った?」

 流石は演技アイドル。スリーハーツの関係者ほんにんだから、チケットの手配にも手を貸していると思う。何より竜也の性格からして、チケットが手に入ったか確認している筈。

 それなのに、しれっとしたな態度で聞いている。事情を知っている僕と徹以外は、気にも留めない自然な演技だ。


「おう、きちんと六枚手に入ったぞ」

 徹が鞄からコンサートチケットを取り出す。


「……すご……これ、滅茶苦茶良い席だよ。ファン垂涎のプラチナチケットだ。実、マーチャントグループって凄いんだね。」

 桃瀬さんが目を丸くして驚いている。マーチャントグループだけじゃなく、本人ゆうが直接事務所に頼んだだと思う。


「なんであたいに聞くの?徹、良く手に入ったね。まさか、転売屋から買ったとか?」

 なんでって、彼女だからだと思うけど。徹は竜也の秘密を夏空さんに話していないと思う。


「前も言ったけど、うちはスリーハーツの番組のスポンサーをしているんだよ。このホットプレートも、スリーハーツの番組に出るんだぞ」

 うん、竜也は一生懸命操作手順を覚えていたもんな。スポンサーとアイドルが、結託?しているなんて視聴者は絶対に思わないだろうな。


「う、羨ましい。私もコンサートに行きたい。生タカ様見たいっ!」

 どうやら結城さんはタカ推しみたいだ。

(チケットは六枚か。竜也は絶対に来れないから、残った一枚はどうするんだろ?)

 竜也はスリーハーツのユウだ。自分のコンサートを見れる訳がない。

 もしチケットが五枚だと、秋吉さんか夏空さんが遠慮していたと思う。


「サインなら手に入ると思いますよ。ねえ、徹」

 結城さんが仲間タカのファンだと分かって嬉しそうな竜也。そしてサインは確実に手に入る。竜也が頼めば、その日のうちに手に入るのだから。


「まあな。俺もユウのサインを持っているし」

 僕と徹は、竜也本人からサインを書いてもらった。しかも、コメント付きだ。

 徹への“おめでとう”は分かるけど、僕への“もっと積極的になって”は、どういう意味なんでしょうか?


 ◇

 後片づけを終えて、それぞれ帰る事に。当然、徹は夏空さんと一緒。竜也は寄る所があるって、部屋で分れた。


「実、わたしはさぐさぐと紅葉と帰るから。良里、実をお願いね」

 嬉しいけど、結城さんが苦い顔をしているんですが。

 送ると言っても、秋吉さんの家まで十分も掛からない。直ぐに着くから、少し寂しい。

(前は一緒にいれるだけでも、嬉しかったのに贅沢だな)


「スリーハーツのコンサートって横浜だよね……し、信吾君、帰り一緒にゴンドラ乗らない?」

 横浜のゴンドラ……探が照山さんと乗ったデートにお勧めって言うゴンドラ?

 しかも、一緒って二人でって事?

 気の所為か、秋吉さんの顔が赤い。


「ぼ、ぼ、僕と?もちろん喜んで」

 甘い空気にはならないと思うけど、絶対に大切な思い出になる筈。


 ◇

 後日、スリーハーツのラジオを聞いていたら、タカが


「この間、ユウが友達と作ったって、茶碗蒸しや大学芋を持って来てくれたんだよ。しかも、男だけで作ったんだって」

 って言っていた。なんでもタカは、あのマンションに住んでいるそうだ。当時、竜也は、タカの部屋から来たそうだ。

 ……芸能人に食べさせるなら、もっと豪華な食材使ったのに。


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― 新着の感想 ―
[一言] 見てるぞ|ω•`๑)チラリ 更新楽しみにしてるけんね
[一言] なるほど良(りょう)里(り)…… 普通に名前として認識してると全然気づかないもんだなあw
[良い点] 更新ありがとうございます。この作品が本当に楽しみです。秋吉さんとの仲が本当に少しずつだけど進展しているかな。
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