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彼女の笑顔

 中学生の僕に伝えたい。高校生になったら、テレビ局で、高校生ビジネスマンと現役アイドルに会っているぞと……絶対信じないよね。


「すみません。内々の話なので、三人だけにして頂けますか?電話で、お伝えした様にユウ様に感謝をお伝えするのが本日のメインですので」

 徹はそう言うと竜也のマネージャーさんに頭を下げた。いや、普段とキャラが違い過ぎでしょ!

高級そうなスーツを着ており、やり手のビジネスマンにしか見えない。


「ユウ様?止めてよ、徹!」

余りの落差に竜也もドン引きしている。そんな竜也を見てマネージャーさんは、大慌て。


「庄仁様、申し訳ございません!ユウ、マーチャントグループは、貴方の番組の大事なスポンサーなのよ」

 マーチャントグループ、言わずと知れた日本……いや、世界有数の大企業。

徹はそこの跡取りって事になる。

 いくら竜也がトップアイドルとは言え、徹の反感を買うのは得策じゃない。マネージャーさんが慌てるのも納得出来る。


「心配しないで下さい。相取君は、私の大事な友人です。話が終わりましたら、連絡しますので……二人共、座らないのか?」

 マネージャーさんが退出した途端、砕けた態度になる徹……キャラ変わり過ぎでしょ!


「徹……だよね。いや、なんて呼べばいいの?庄仁様?それとも徹ぼっちゃま?」

 正直に言う。かなり混乱しています。だって、あのマーチャントグループの跡取り息子なんだぞ。


「いつも通りで良いぞ。その方が気楽だし……まずは椅子に座れ」

 竜也と顔を見合わせて、椅子に座る。

(しかし、徹がマーチャントグループの跡取り息子だったとは……)

 そりゃ、竜也がユウだって知っても驚かない訳だ。


「もしかして、ケータリングを頼んでくれたのは徹?」

 料金は思いっきり適正価格だった。お金持ちなら、もう少し豪華な物を頼んでも良いと思います。


「そうだよ。竜也も正体を教えてくれたろ。良いタイミングだと思ってな。お前等には感謝しているし。旅行は、そのお礼だ」

 感謝?アイドルの竜也なら分かるけど、僕に感謝する必要はないと思うけど。


「いや、僕は関係ないでしょ?」

 友達になってくれて感謝?いや、徹はそんな甘い性格じゃない。


「まずは竜也、ドラマ成功おめでとう。視聴率も良くて、CMで流している商品も売れている。感謝するぜ」

 竜也の主演しているドラマは大人気で、視聴率も凄い事になっている……ますます、僕関係ないよね。


「僕も毎週見ているよ……うん、僕、関係ないよね」

 あれか、竜也に賄い作りを教えたからとか?でも、ドラマ成功に比べたら小さ過ぎる。


「桃瀬のスランプ脱出。うちの桃瀬担当が感謝していたぞ。そして竜也に賄いを教えてくれた事。あのドラマの監修をしているの、かなり気難しい料理人なんだ。でも、賄いを教えたのがヨシザトの孫だって聞いて、一気に態度を軟化させたんだよ」

 名前を聞いたら爺ちゃんの知り合いだった……当然、あの事件も知っているよね。僕の賄い云々より同情だと思う。


「感謝される様な事じゃないと思うよ。竜也みたいに売り上げに直結した訳じゃないし」

 僕がいなくても、なんとかなったと思う。


「それと林間合宿のお前の料理をヒントに新しいプランを作ったら大好評でな……何より児童館に、うちの社員が迷惑を掛けている証拠を掴めた。うちでも、手当を出しているのに、利用料踏み倒しなんて恥以外のなんでもないぞ。世間にばれたらとんでもない痛手なんだぞ」

 地元の農家や山に詳しい人と契約して、自分で収穫して料理をするプランを作ったら大好評との事。

(優子先生は、徹の名刺を見て驚いたんだな)

 徹は、マーチャントグループ本社に所属しており、代表取締役であるお父さんの命令で色んな業務に関わっているそうだ。

 ちなみに児童館はマーチャントグループの委託を受けて、利用料は給料から天引きの形になったらしい。


「分かったけど、なんで今日?ランチ会の時でも良かったんじゃない?」

 唐突過ぎると言うか……徹ならもっと計画的に事を運びそうなイメージがあるんだけど。


「祭に聞かれたくなかったんだよ。家の事とか抜きにして好きになって欲しいし……何より旅行の相談もしたかったんだよ……いきなり泊り旅行とか引かれていなかったか?」

 いや、十分好かれていると思うけど……仕事が忙しくて、中々二人で話せる時間が作れず、旅行を思いついたらしい。


「大丈夫だと思うよ。皆ノリ気だったし」

 竜也の言う通り、皆喜んでいた。でも、徹がマーチャントグループ関係者だと分かって気になった事がある。


「でも、なんであのホテルなの?マーチャントグループなら、他にも海添いのホテルあると思うんだけど」

 高級ホテルだけど、建ったのは十数年前。近くに目立った観光地もないから、予約は取りやすいと思うけど。


「あそこ宿泊客が伸び悩んでいるんだよ。その視察も兼ねている。何より竜也が泊まったとなれば、話題になるだろ」

 社長の息子が泊まり行くとなれば警戒されてしまう。しかし、高校生なら良い意味で油断してくれる可能性があると……思いっきりビジネスじゃん。でも、ただで泊まれるのは有難いです。


 テレビ局から戻って、そのまま厨房に直行。

 秋吉さんもアルバイトに来てくれたけど、辞表とか持って来ていないよね?

 爺ちゃんに聞きたいけど、そんな余裕もないまま賄いタイムに突入。


「今日の賄いは、サラダうどんだよ。お代わりもあるから、沢山食べてね」

 いつも通りの笑顔だから、退職はない筈。でも吹っ切れた笑顔なら……。


「さっぱりして美味しい!水着を着るからカロリーの低い食べ物は嬉しいな」

 喜んでくれるのは嬉しい……秋吉さんからしたらバドミントンをやりたくても、言い出せない可能性もある訳で。


「そう言えば、照山さんとは連絡とっているの?」

 凄く自然な聞き方だと思う。これなら秋吉さんも切り出しやすいと思う。


「うん、今度お店に来てくれるって……信吾君、お願いがあるんだけど良い?」

 秋吉さんの表情は真剣だ。これは来たか……強引に作り笑顔にする。


「ぼ、僕に出来る事なら、何でも良いよ」

 爺ちゃんにも上手く伝えるし……。


「良かった!今度、水着買いに行くの付き合って。後、庄仁君も誘えるかな?祭も一緒に行くから」

 身体の力が一気に抜ける。夏空さんを見たら、顔を赤くしていた。親友の為に、一肌脱いでやろうじゃないか。

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