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始まる前から四苦八苦?

 今回の一番のハードル。それは爺ちゃんと父さんからオッケーをもらう事だ。


「これなら数を作れるし、味も及第点だ……欲を言えば、もう少し種類を増やしても良いと思うぞ」

 爺ちゃんからオッケーをもらえた……でも、父さんに目配せしているのが気になります。


「保温機も予算に組み込んでいるし、計画案もこんな物で良いと思うぞ。しかしだ……信吾、お前なんで家庭科部の人達に手伝ってもらわなかったんだ?」

 試食会の状況は、先に言った筈なんだけど。でも二人共まじな目をしていて、口答えはアウトだと思う。


「それは手を出してこなかったし、秋吉さん達にもお願いしていたから」

 家庭科部の人達を信用していないって訳じゃないけど、微妙にやる気を感じられなかったし……途中からは織田君達が近づいて来れなくてラッキーと思ったのは事実です。


「お前は将来人を使っていく立場になるんだ。初対面だからって、コミュニケーションを避ける訳にはいかないんだぞ。それに社員やバイトが問題のない人だけだと思ったら、大火傷をする」

 流石経営歴三十年を超す爺ちゃん。言葉の重みが違う。うちでも問題のある社員やアルバイトさんは何人もいた。でも、即クビって訳にはいかない。

 その日の出勤人数によっては、その人達を上手く使わなきゃいけない事がある。


「夏空さんから聞いたけど、お前は仲が良い人達だけで作業したらしいじゃないか。その中に自分から入れって言うのは酷な話だぞ」

 爺ちゃんに言われて気付いた。織田君達への壁のつもりだったけど、それが仇になるなんて。


「僕から声を掛けるべきだったんだね」

 初日のアルバイトさんを放置する様なものだ。ランチ会の皆に頼り過ぎたのが原因だと思う。


「そういう事だ。祭の時は、家庭科部とボランティア部の人達に協力してもらいながら動いてみろ。シフト作りの練習にもなる」

 折角のお祭りだ。皆も楽しみたい筈。休憩時間を考えてシフトを作らないと。


「それでもお前に仲が良い友達が出来て安心だよ。後は無理しないレベルで知人を増していけ」

 父さんは、そう言うと優しく笑った。友達にはなれたけど、彼女は……まだまだ無理です。

(秋吉さんにも休憩時間を作らないとな)

 織田君とお祭りに行くかもしれない。でも、僕は厨房に篭っていると思う。それが料理人の責務だ。


 家庭科部、ボランティア部の部員に何をしたいか、何時位に休みたいかってアンケートをしたんだけど……。

(希望が被っているんだよな。販売希望が多すぎだよ。しかし、午後三時になにがあるんだ?)

 ボランティア部の人達は、児童館の子供と触れ合いたいんだと思う。だから大半の人が販売希望だ。家庭科部の人でも、裁縫が得意な人は販売を希望している。

 

「信吾、朝から渋い顔してどうしたんだ?……おー、見事に休憩希望時間が被っているな」

 徹の言う通り、どっちの部員も午後三時に休憩希望を出している人が多いのだ。

 希望者全員を休ませるのは、不可能。でも、誰の希望を優先させるかで、悩んでいます。


「あれ?良里、知らないの?その時間、スリーハーツも祭に来るんだよ」

 夏空さんの話では、スリーハーツの動画コーナーで発表されたらしい……だから竜也は会話に参加しなかったのか。

 チラ見したら、露骨に顔を背けられたし。


「それじゃ人手が凄い事になるよね……仕入れ量を見直さないと。と・こ・ろ・で、スリーハーツは何しに来るのかな?夏空さん、分かる?」

 竜也に聞こえる様にわざと大きな声で話す。絶対に人手が多くなって、作業量が増える筈。これ位の仕返しは許されると思う……秋吉さんが三時に希望していないのが、唯一の救いです。


「陽菜から聞いた話だと、町内の子からコーナー宛てにメールが届いたらしいぞ。祭に来る人が減っているから、助けて欲しいって」

 開催日に、近くの神社で大きなお祭りが開かれてるらしい。歴史も向こうの方が古く、規模も段違い。殆んど客はそっちに集中しているそうだ。

 どこのお祭りと明言はしていないけど、ネットに上げらた画像やスリーハーツの言葉から推測されたらしい……ファンって凄い。


「でも、なんで同じ日にお祭りをやったんだろ」

 竜也が否定しないって事は、確実な情報って事だ。

 向こうはニュースでも特集される大きなお祭り。それに比べてこっちは高校の部活も参加出来る小規模なお祭りだ。

 町内会の人には悪いけど、どう足掻いても敵う筈がない。


「竜也は何か知っているか?お前もスリーハーツのファンだろ」

 徹、ナイス。今の振りなら誰も怪しいと思わないだろう。


「タカのツイットーで見たんだけど、昔は向こうの祭から客が流れてきていたんだって。でも、不況の所為で、お祭りをはしごする人が減ったみたいなんだ」

 お祭りの出店って、被っている物が多いもんな。しかも、売り上げが伸びない所為で、出店の数も減っているらしい。


「相取もスリーハーツのファンなんだ。しかも、ツイットーまで見ているなんて、ガチ中のガチじゃん」

 夏空さん、驚いているけど、そこにいるのはガチのユウだから。


 その日の昼、僕達三人は会議室でご飯を食べる事にした。


「まさか信吾君が手伝いに行くお祭りだとは思わなかったよ。思ったより、噂が流れているみたいだね。参ったな」

 企画が始まっていたのはスリーハーツの方が先だし、僕達も竜也に詳しい事を伝えていなかった。

(僕は厨房に篭る予定だから、竜也と会う事はないな)

 ジュンとタカに会ってみたかったけど仕方がない。


「その時間はスリーハーツの方に人が集中するから、休憩する人を増やしても平気かもね。でも、何をやるの?」

 あまり動きまわると、とんでもない事になると思う。


「芸人さんと街ぶらならぬ祭ぶらロケだよ。投稿者の家がお肉屋さんだから、そこで唐揚げを食べて、少し散策するって感じ」

 児童館は本通りから離れた所にある。竜也達が来る可能性は低い。


「今頃実行委員会は、ルートの確保に四苦八苦していると思うぞ。注意喚起や取材許可も必要だしな」

 アポなし訪問って店側からすると、結構きついんだよね。断るとこっちが悪者みたくなるし。


「とりあえず園からの連絡を待つよ。これで休憩時間の目途はついたな」

 僕は休みなしでも良いし……秋吉さんの希望時間は夜の七時。誰とお祭りを見て回るんだろう?

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― 新着の感想 ―
[気になる点] 料理を信吾君に丸投げしているのですから、シフト位はボランティア部と家庭科部が作るべきでしょう。 寄生部に改名した方がよいですね。 それにしても、信吾君は信頼出来る友人に囲まれて幸せです…
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