№7 放課後びたーたいむ
酸いも甘いも。
チャイムが鳴る。
五時限目の授業が終わり、生徒たちは部活や帰宅おのおの動きだす。
シャロットと莉子は最前列の康治のもとへダッシュする。
「康治一緒に帰ろ!」
2人は同時に言う。
「えっ」
戸惑う康治。
「・・・あの、私も」
隣のホランがおずおずと手をあげる。
シャロットと莉子は思わず苦笑いをみせる。
「待ていっ!」
「待て待て待ていっ!」
そこへ待ったがかかる。
「康治君は我々、アニメ研究会の会活へと行くのだ」
絵馬が康治の左肩にポンと手をかける。
「その通り、我等が康治は研究会随一のブレイン・・・すなわち頭脳、会員たちの憧れ、レジェンドオブレガシーマスターなのだ」
圭が思いっきり彼の右肩を叩く。
「てっ!」
康治は顔をしかめる。
「すなわち」
絵馬は得意顔で言う。
「君たちはゴートゥホーム…我等はエンジョイアニ研だっ!」
圭は右手でしっしっと女性陣を払う。
「このヲタどもめ」
莉子は苦々し気に呟いた。
「どういうことだ」
イマイチ状況の飲み込めないシャロット。
「ねぇ」
ホランは莉子とシャロットを交互に見た。
「アンタはどうすんのよ」
莉子はズバリ康治に聞いた。
「・・・俺は」
康治は思わず言い淀む。
「おっと、アニ研は毎日会活これが鉄則。何人足りとてこれを侵すことは出来ない」
圭は言い放つ。
「それが、たとえ本人の意志であろうと」
絵馬は続いた。
「どういうヲタク会なのよ」
莉子は呆れる。
「封建社会・・・」
ホランは呟いた。
「御託はよい!もう一度聞く。康治はどうしたいんだっ!」
シャロットは華麗に翻り、両手を伸ばし彼に問う。
「・・・俺は・・・アニ研行くよ」
「・・・だあにい!」
ショックのシャロット。
「よく言った。それでこそヲタ中のヲタ」
圭は右腕を康治の首に巻きつけると、自分の顔を近づけ、どさくさに紛れてうなじの匂いを嗅いだ。
「そういうことだね。おととい来やがれっ!」
絵馬はさりげなく、背中を押すフリをしながら、康治の尻をさわさわした。
「ふふふ」
「ははは」
絵馬と圭の高笑いが響く。
ちらり申し訳なさそうに、康治は振り返る。
去って行く男3人に凍りつく女3人。
「なんなのよ」
莉子。
「なんなのだ」
シャロット。
「ねぇ」
ホラン。
なんでやねん。