№6 よくある光景
よくある~。
黒板に並ぶ白いチョークで書かれた二人の名前。
鏑木シャロットに栗田ホラン。
タイプの違うハーフ美少女たちに男子生徒は沸いた。
「静かに・・・」
男子の興奮はおさまらず蛭田の声は聞こえない。
「じゃがぁしい!いてまうぞコラっ!」
担任の怒号が教室に響いた。
瞬間でその場が凍りつく。
「・・・あら、私ったら」
お約束とばかり生徒たちは、机からずり落ちる。
ちなみに現世は冴えない男、功刀康治は教室ど真ん中最前列に位置している。
空いてる席はその左隣と莉子の座る中ほど左の席だった。
「今日から諸君の仲間となり、青春をともに謳歌する鏑木シャロットさんと、栗田ホランさんだ・・・みんなよろしく頼むぞ」
蛭田の言葉にみなは頷く。
「では・・・2人の席は・・・っと」
「先生、アタシは最前列がいい」
シャロットは即座に言った。
「そう・・・じゃあ・・・」
「先生っ」
そこへホランが待ったをかける。
「む」
「どうしたの栗田さん?」
「私、近眼で目が悪くて」
「そう・・・じゃあ・・・やっぱり」
「待ってくれ先生っ!実は私も目が悪いんだ」
彼女は嘘がつけず、目が挙動不審に泳いでいた。
「・・・本当に」
「・・・ああ、多分」
「本当に本当?」
先生が問い詰める。
「すまない。嘘・・・つきました」
「はい。では、一番前が栗田さん。後ろは鏑木さんね・・・ああ莉子さんの従妹だったわね。じゃ、席はそこで」
「はい」
ホランは前の席に座る。
シャロットはとぼとぼと莉子の隣の席に座った。
「残念、御愁傷様」
莉子は苦笑いを見せる。
「ああ・・・あの娘」
「そうね。康治のジャストフィット好みね」
「やはり」
「間違いないわ」
2人は頷き合った。
「(今度は)負けない」
ざわざわする教室。
蛭田は教卓をばんばんと両手で二度叩いた。
「これが高校2年・・・一度しかない青春を謳歌するメンバーです。いいこと、前年度はコロナでやりたいこと出来なかったわよね・・・いい、今年度はいろんな行事があるからねっ!楽しみなさい!」
生徒たちから歓声があがる。
(ん?)
莉子は思わず違和感をおぼえ首を傾げた。
(ま、いっか)
あの頃(遠い目)。