№5 新学期はじまる転校生は2人
春は出会い。
沖福学園の新学期がはじまる。
高校2年の鏑木シャロットと鏑木莉子は新たな思いを胸に登校する。
「じゃ、あとで」
「また」
幸いクラスも一緒だが、転校生であるシャロットは、担任の教師の蛭田亜里亜と一緒に教員室へと行くので別れた。
「さてと」
莉子は辺りをきょろきょろと見渡す。
(いたっ!)
康治がとぼとぼと登校している。
(行くか)
少女は走りだす。
「おはよっ!」
大声と一緒に思いっきり背中を平手で叩いた。
「いたっ!」
「へへん、元気がないぞ!」
蛭田のデスクにパイプ椅子が二つ並べられている。
左にはシャロット、右にはどう見ても年下・・・小学生のような可愛らしい少女が座っていた。
「栗田ホランさんと鏑木シャロットさんね」
「はいっ!」
栗田と呼ばれた少女は元気に返事をする。
美しい黒髪に瞳の眼は金色をしている。小さな可愛い娘。
シャロットは直感する。
(この娘・・・きっと恋敵に)
女の勘は恐ろしい、しかも彼女が異世界でよく知る人にそっくりなのである。
(ここでは負けないっ!)
シャロットはぐっと拳を固める。
「待ちたまえ」
康治の背中に一撃を加えた莉子の背後から声がした。
「なによ」
彼女は振り返る。
おかっぱで背が低く丸眼鏡が印象的な男子生徒がこちらを見ていた。
「僕の名前は田中絵馬。文学をこよなく愛し、康治君もついでに愛したい一人の男だ」
さりげなくも問題発言をする絵馬。
すると、長身で体格のよい男が割って入ってくる。
「おっと、絵馬。康治に告白かい。そいつは見逃す訳にはいかないなっ!俺の名は鈴木圭・・・俺もまた一人の男を愛す男だ」
圭は康治に熱視線を送る。
(はあ!何こいつら)
莉子は変態たちに囲まれながら、心の中で悪態をついた。
「いこっ」
彼女は康治の袖を引っ張り走り出す。
「待ちたまえ」
「待つんだ」
「2人ともハーフの帰国子女?珍しいわね」
担任教師蛭田はそう言うと、シャロットとホランの手をとり握手をさせる。
「・・・・・・」
「よろしくです」
ホランは屈託なく笑う。
シャロットはわずかばかりの引け目と、作り笑いを浮かべた。
蛭田は2人の表情を見た。
「さあ、転校生諸君。学生生活をれっつ、えんじょいよ。いきましょう!教室へ」
担任教師は2人の転校生を教室へと案内する。
ライバル(恋敵)?