№21 現実へ戻れ~ビューティフル・ブレイカー(美しき破壊者)~
やってみました大介版、ビューティフル〇リーマー。
決意の朝が訪れた。
(今日、俺たちは絶対にこの日を超える)
康治は黙々と海の家開店準備をはじめる。
「いらっしゃいませ~」
莉子は笑顔でお客を迎える。
「それっ、それっ、それっ!」
圭は額から汗を流し、厨房でフライパンを振るう。
「やきそば2かき氷いちご1です!」
ホランは注文を承ると厨房へ叫んだ。
「あいよ!」
絵馬は皿洗いをしながら返事をかえす。
夕刻。
互いの高揚感をおさえるべく、砂浜でビーチバレーを思いっきり楽しむ。
「それっ!」
赤のビキニ姿のシャロットが高く飛びあがり、巨烈なスパイクを叩き込む。
それから夕食を済ませ、みんなは男子部屋へと集まった。
「いいか、みんな」
絵馬が切り出す。
「今までの繰り返す日常を打破するんだ。寝てめざめると昨日が今日になっている。異常な現象の根源を探り、解決するんだ。何でもいい、手掛かりをみつけるんだ」
「どうやって?」
康治が問う。
「我々はこの町に来て異変に巻き込まれている・・・すなわち現象の原因が場所で考えられるとすれば➀この海の家の捜索➁外・・・」
「外って範囲が広くない?」
莉子が問う。
「ああ、だけど、異変の相場って限られるだろ」
「・・・神社?」
圭が答えた。
「ああ古今、神社で何かが起きているのは定番にて定説だろ」
「では、ここと外を捜索する者で分かれるんだな」
シャロットは頷いた。
「オフコース」
「じや、ここは公平に・・・」
ホランは言った。
「あみだで決めよう」
絵馬はサムアップした。
「まて、君たち、そんなことをしなくても」
露利田は慌てて、皆を制そうとする。
「このまま手を、こまねいていられません!」
みんなは瞳に決意をみなぎらせた。
莉子、シャロット、圭は町を走る。
夜の闇が包み、一旦静けさが訪れたかと思ったが、海辺から爆音が響いたかと思うと、鮮やかな火花が散った。
「花火」
思わず莉子は言った。
「今は、それどころじゃない」
圭は一目散に神社へと向かう。
「いこう!」
シャロットは莉子に声をかける。
長い石段を一気に駆けあがる。
それから3人はくまなく境内を調べた。
康治、ホラン、絵馬の海の家捜索部隊は、まず自分達の寝泊り部屋を調べあげ、海の家の前に立っていた。
絵馬はそっとポケットから店の鍵を取り出す。
「いつの間に」
康治は思わず言った。
「準備は常に周到に・・・だ」
「いきましょう」
ホランは頷いた。
絵馬はウィンクすると、静かに入り口を開ける。
電気をつけ、不審な物がないか探し回る。
外部隊は神社での収穫を得られず、トボトボと帰宅の途についてた。
通り過ぎるのは、花火が終わって帰途に向かう人たち。
「花火大会楽しかったね~」
子どもが母親に楽しそうに話しかけている。
「花火大会」
莉子の何かが引っ掛かった。
立ち止まる。
「どうした?」
シャロットが訝しがる。
「いままでの今日は花火大会なんてなかったわよね」
「ああ」
圭は同意する。
「あっ!」
莉子は電信柱に貼られた花火大会のポスターを指さす。
そこにかかれていたものは・・・。
開催日8月8日の文字であった。
海の家捜索部隊の3人は、互いの成果を確認しあうべく顔を見合わせた。
3人とも顔を大きく振る。
成果なしであった。
諦めて部屋へと戻る途中、離れの江洲田の住む家から話し声が聞こえてきた。
「もうこれ以上は隠し通せません」
露利田の声だ。
「しーっ」
声をひそめ静かに3人は近づいてみた。
「何を言っているの。これからもみんなにはバリバリ働いてもらうわよ」
「おばさん、もう十日近くも拘束しているんですよ。親御さんが心配・・・」
「大丈夫、きちんと電話して話はつけているから」
「しかし・・・」
「いいこと、毒を食らわば皿までよ」
「・・・・・・」
部長は黙り込む。
「そこまでっ!」
康治、ホラン、絵馬は踏み込んだ。
そして、戻ってきた莉子、シャロット、圭とともに、正座をさせられた部長と江洲田へ説教がはじまった。
・・・・・・。
・・・・・・。
いつもの朝が来た。
こうして、同じ日が繰り返されるという怪現象は幕を閉じたのであった。
夏編完結。
しばらく拙作はお休みします。
今月中に番外編をちょこっと書いて、秋編は来年を予定しています。
ちょっと、テコ入れが必要かなと。
では、またお会いしましょう。
読んでいただき、感謝です。




