№19 3泊4日・・・3日目
次第に感じる違和感。
「さっ、今日は合宿最終日だ。気合入れるぞ」
絵馬はそう言った。
確かに言った・・・だが違和感をおぼえる。
なんだか、もやっとする。
喉の奥に小骨がつかえたような・・・。
午前、午後とアニ研メンバーと3人娘は海の家でのバイトに精をだす。
くたくたになりながら、夕方をむかえ、浜辺で泳いだり遊んだりして過ごす。
合宿最後の晩餐をいただく。
そして、帰宅するはずの・・・朝・・・。
「起きろ!皆の衆、さぁ、今日は合宿最終日だぞい!」
露利田は、後輩男子を起してまわる。
「せいっ!」
部長は布団をめくる。
ひとつの布団の中には、康治を中心に左絵馬、右圭の川の字で寝ていた。
「このお話に濃厚BLはいらぬ!」
彼は一喝する。
陽の照りつける間は、海の家の稼ぎ時、みんなは汗水流して、あくせく働いた。
夕方、ちょっとだけだるい身体を動かし、海へと走る。
夕飯をいただいたあと、夜、みんなで花火をして思い出づくり。
そして、明日は帰宅するだけ・・・朝。
「起きなさいっ、男どもっ!」
江洲田は豪快にアニ研メンバーを起こして回る。
「・・・うちは夜這い禁止っ!」
康治の寝る布団をめくる。
莉子、シャロット、ホラン、絵馬、圭と芋づる式に出てきた。
「はっ、いつのまに!」
康治が惨状に驚く。
「もっと~」莉子。
「しゅごい~」シャロット。
「素敵です」ホラン。
「やっとやっとだな」絵馬。
「お前は俺のモノだ」圭。
「・・・こいつら、どんな夢見てんだよ!」
窓辺に寄り添う露利田が呟いた。
「最終日のはじまりだ」
パンパンと江洲田が両手を叩く。
「さっ、仕事のはじまりだよ」
「・・・・・・」
絵馬は皿洗いもそこそこに黙り込んでいる。
「どうした絵馬?」
圭が訝しがる。
「いいや、なにか変だなと思わないか」
「何が?」
康治が尋ねる。
「・・・違和感・・・感じないか」
「・・・・・・」
「・・・・・・」
「気のせいだろ」
部長のやや声がうわずったそっけない声がし、江洲田の檄が飛ぶ。
「そこ、手を動かすっ!」
「はいっ!」
看板3人娘も変化を感じる。
店の常連と交わす会話。
ホランが注文を取りに駆けよる。
「ホランちゃん、今日も元気だね~」
「はいっ!」
「ホランちゃん、こっちに来て何日になるの?」
「はいっ!3日目です」
「ん?」
「ん」
「・・・いや、もうちょっと長くいるような・・・おじさんの気のせいかな」
「ん?」
シャロットが配膳をさげる時、
「この間は、さぁせんでした」
初日の海辺の輩たちが詫びを入れに来たのである。
「ああ」
「姉御っ!」
「ん」
「いつまで、ご逗留で」
「30日(7月)」
「ん」
「ん?」
(兄貴・・・今日は5日・・・)
小声で話す。
(馬鹿野郎っ、姉御は8月の終わりまでいるんだよ)
「わっかりました。今度、俺らに稽古わつけてください」
輩たちはそう言うと、そそくさと店を出で言った。
「いや・・・アタシ達は明日帰る・・・」
言葉も聞かずに彼等は去って行った。
莉子の場合、接客スマイル時、常連から、
「いらっしゃいませ」
「ん」
「どうしました」
「莉子ちゃんさぁ」
「はい?」
「3泊4日って言ってたよね」
「はい。今日が最終日です」
「・・・そう」
「どうしました」
「いや・・・うん」
「?」
「可愛いから、いっか」
「はい、可愛いです」
・・・・・・。
・・・・・・。
・・・・・・。
夕食みんなは無言で食べた。
違和感が次第に現実となってくる。
次の日が訪れるそう信じて・・・みんなは眠りについた。
それは・・・。




