№17 夏祭り
君がいた~。
ここは、皆様には、サブタイトルでもあるあの名曲を脳内再生して読んでいただきたい。
夜の闇が訪れ、露店の灯りがつき、ぼんやり祭りの空間が浮かびあがる。
「ちょっ、おい、おい」
康治の声が人混みにかき消される。
左手を引くのはホラン、右手は莉子そして彼の背中をシャロットが押す。
「ごめんなさーい。どいて、どいて」
ひしめきあう中、莉子は声をだして駆ける。
3人娘は息を切らせながら笑顔を見せる。
そんな姿を見て、康治は呼吸が乱れる中、苦笑した。
通行する人と莉子の肩が触れ合い、みんなはバランスを崩す
莉子が一瞬、外れそうになった康治の手を強く握り直した。
ドキッ。
ホランが、軽く繋いだ手が離れそうになるのを、強く握り返した。
ドキッ、ドキッ。
シャロットは、急ブレーキをかけた康治の背中に顔がぶつかり、思わず背中越しに彼を抱きしめる。
ドキッ、ドキッ、ドキッ。
みんなの胸の鼓動が早く高まる。
「なんかお腹すいた」
シャロットが突然言い出すと、興奮と緊張の糸が解け、みんなは笑いだした。
莉子は後方を確認する男どもの追いかけて来る様子はもうない。
「よし」
莉子は露店をはしごし、かき氷、とうもろこし、たこ焼き、はし巻き、イカ焼きと買い漁る。
「わあ、いっぱい」
ホランは目を丸くする。
「おごり?」
康治はちらりと莉子を見る。
彼女は大きく頷いた。
「ありがとう、莉子」
「うむ」
3人はお礼を言うと、各自めいめい好きな食べ物をとって、食べ歩きをはじめる。
「・・・・・・」
「・・・・・・」
「・・・・・・」
「・・・・・・」
4人は無言のまま、ゆっくりと境内を歩いた。
神社までの長い階段をのぼる。
ゆっくり、ゆっくり。
そして、社殿へと着いた。
石段が終わり、ホランは康治の手を引き少し人混みから離れた場所へ行くと振り返った。
「わあ」
思わず、感嘆の声をあげる。
眼下に広がるのは福沖町の夜景だった。
「ほう」
シャロットも眺める。
「やっぱいいね」
「ああ」
莉子と康治は頷いた。
しばらく夜景を眺めていた4人は、人混みに紛れ社殿までいくと、なんとなく参拝をする。
二礼二拍手一礼。
パンパン。
柏手を叩き、両手を合わせ願う。
「・・・・・・」
康治は薄目をうけ3人を見る。
静かに目を閉じて祈る乙女たちに彼はまたドキリとした。
なちゅまちゅり。




