№2 団欒
いや~うまいことなってる。
逃げ出した現世の康治を追い回したシャロットと莉子だったが、結局逃走を許した。
2人は疲れ果てて、鏑木家自宅へと戻った。
「はあ、アタシが御厄介になる訳には」
二階建て家の玄関を前にして、シャロットは思わず躊躇してしまう。
「なに言ってんのよ。むこうの康治には私が必ず面倒みるって約束したでしょ」
莉子は頬を膨らませる。
「しかし・・・」
「うちの両親なら大丈夫・・・犬が一匹、増えようが人が一人増えようが、問題ナッシング」
「仮にもアタシはディオラ王国の姫、犬と一緒にされるとは心外・・・」
「いいから、とっとと家に入りなさいっ!」
莉子はシャロットの背中を抱きしめると、玄関を開け無理矢理中へと入る。
「ただいま~」
「ちょっ!」
足音が近づいて来る。
「あらっ、莉子にシャロちゃん、お帰りなさい」
「ママ?」
「???」
「どうしたの2人ともきょとんとして・・・」
「いいや」
「ねぇ」
「さ、あがって、あがって」
2人は莉子ママに言われ、家へと入る。
その時、視線を感じる。
「ん?」
シャロットは気配のした方を見やるが、もう気配は感じなかった。
「どうかした」
「いや、気のせいか・・・」
夕食の食卓にはカレーのいい匂い。
「まったく、お姉ちゃんも困ったもんね。商社マンのイギリス人旦那さんと一緒にイギリス在住で、こんなかわいい娘のシャロちゃんを日本に置いて、心配じゃないのかしら」
あからさまに説明台詞を言わされるテイの莉子ママ。
「なんか、話がうまいこと・・・」
莉子が呟く。
「なっているな・・・」
シャロットは頷いた。
「こらっ、絵里ちゃん、よく噛んで食べなさい!」
さっきから、ガツガツとカレーを食べまくる少女がいた。
「ママ、カレーは飲み物よ」
絵里は堂々宣言しつつ、視線はシャロットをロックオンして離さない。
「・・・ぶる、ぶる」
「・・・どうしたの?」
「いや、なんか、既視感が・・・」
「ああ妹の絵里ね」
「さっきから、じっとこっちを見ている」
「・・・ああ、なんか察し・・・」
「うむむ」
シャロットは思わず唸った。
「シャロ姉様も食べなよ」
絵里はカレーを流し込みながら、瞳をらんらんと輝かせ舌ぺろりする。
「ああ」
「早く咀嚼音を聞かせてよ!」
「ひいっ!」
シャロットは全身が総毛立った。
絵里=エリザかな。