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№4 アニフェス開幕からの~

 コスプレ3人娘。


「いっくよ~!2021アニメフェスティバルの開幕だぁっ!」

 ステージに立つコスプレ司会者からの開催宣言によりアニフェスがはじまった。

 ステージ周りには人だかりが出来、地下アイドルだのコスプレイヤーたちのイベントに、サイリウムを片手ヲタ男子女子が熱気ムンムン色めきだっていた。


 そんな最中、沖福アニメ研究会のブースは盛況であった。

 コスプレ売り子に扮した莉子、シャロット、ホランたち乙女たちが元気に笑顔で挨拶をする。

 そのものと見紛うばかりの容姿に再現度抜群のコスプレ衣装で、注目を浴びないはずはないのである。

 

 なので3人を一目見ようとする黒山の人だかりと、キャメラ小僧のフラッシュの明滅が激しく、一際このブースが異彩を放っていた。


「いらっしゃいませアルよ」

 劇中のリンシャンの口癖アルを連呼し、やつらを虜にする莉子。

「ボキと写メってくれませんか」

「いいアルよ」

「あのうリンたんの決め台詞、ハぉ中国三千年の歴史、嶺上開花(リンシャンカイホウ)ロンアルね言っていただけますか」

「・・・はぁ」

 莉子は困惑しながら胸に手をあて、ちらりと康治を見る。

 彼は太極拳の構えをとり、ゆっくりと動作を見せる。

(わかった)

 莉子は頷き、同じ構えをとり言い放つ。

「ハぉ(好)中国三千年の歴史、嶺上開花(リンシャンカイホウ)ロンアルね!」

「びびびびびっ、も、も、も、萌~」

 懇願したヲタは卒倒した。


「いらっしゃいませ。いろいろ買ってね」

 わるきゅーれシャロットは、ウィンクをする。

(アタシは王女(異世界では)だぞ)

 心の中の葛藤は物凄い。

「わー、わるきゅうーれだ!」

「あはん、わるきゅーれさまっ!」

 ヲタ女子が近づいて来る。

「ねっねっねっ!わるきゅーれ様」

「近いな」

 シャロットは言った。

「あはっ!主人公をなじるときに言うあの台詞言ってくださいっ!」

「それは・・・」

 彼女は康治の方を見た。

 彼の唇が動いている。

 じっとシャロットは唇の動きをみる。読唇術だ。

(わかったぞ)

「跪けっ!そしてワルの先端の尖った木靴を舐めなさいっ!」

「あはー」

「昇天っ!」

 ヲタ女子はゴートゥへブンした。


「あの・・・良かったら買ってください・・・ね」

 メロンに扮するホランはその気恥ずかしさから縮こまっていた。

「あっ、ママっ!メロンちゃんだ!」

 幼い女の子がホランを指さす。

「そうね。まぁ、そっくりね」

「ママ、渚見に行こうか」

 そう言うと父親は娘を肩車し、母親の手を引いてホランの元へ近づいた。

「こんにちは」

 女の子が声をかける。

「・・・こんにちは」

「うわ~声もメロンちゃんそっくり」

 少女は小躍りして喜んだ。

 その本気の喜びっぷりにホランの心臓は破裂しそうなくらい緊張する。

(どうしよう・・・私)

 思わず彼女は康治を見た。

 彼はお手製のフィギュアメロンを片手に掲げ、もう片手を胸にあて、大きく頷いた。

(うん!)

「私は、魔法少女グーリンことメロンっ!」

「わーい、わーい、メロンちゃんだっ!」

 喜ぶ娘と見守る父母。


 大盛況の3人とは裏腹に、

「うぉっ!売れん・・・こんなに人が来てくれているのに・・・」

 露利田が嘆く。

「そりゃあ・・・な」

「30年前の魔法少女の同人誌なんて」

「な」

 絵馬と圭は憐れみの表情で部長を見た。



 隣のブースにて。

 苦々し気に沖福アニ研の活躍を見つめる影あり。

「ふん、沖福のやつらめ」

「今に見てなさい」

「形勢逆転だからね」

「みんないくぞ」

「はいっ!」


 また来週~っ。

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