№18 大観覧車の葛藤
キャパを越えることは、たいていテンパる。
遊園地のベンチに横たわるグロッキー状態の3人に、夢の世界に目を輝かせるシャロット。
康治はちらりと売店に貼ってあるポスターを見た。
(えっ、魔法少女のショーが15時から)
「行かねば」
「へっ?」
「いや、なんでもない」
「ちょっとまったりとした乗り物にしましょう」
「賛成」
「ああ」
「次はなんだ」
「じゃあ」
莉子はマップを見て、頭上を指さした。
「大観覧車ね」
康治はそれを鼻で笑う。
「観覧車ねぇ」
「いこいこっ!」
彼は即連行される。
「そんな子供だましに乗らなくても・・・」
引きずられながら本音を言う。
「馬鹿だね~」
3人が同時に言った。
「む」
「あなた(康治)と一緒だからいいんでしょっ!」
「ほ・・・う」
大観覧車の前に並ぶ乙女たちと康治。
3人はやがて順番が迫る中、じゃんけんをはじめる。
「康治の席取っ!じゃんけんっ!」
「ぽんっ!」
「よしっ!」
拳をあげるのはシャロット。
「むう」
むすくれるのは莉子とホランだった。
「凄い、どんどん上に上がっていく」
シャロットは康治の隣で目を輝かせて、窓の景色を見つめている。
「・・・・・・」
「・・・・・・そら、ようござんした」
対面に座るホランと莉子が不服なのは変わらずである。
女子免疫のない康治は、逃げ場がないこのシチュに戸惑いと変な汗をかきはじめている。
「うわあ!」
無邪気に喜ぶシャロットに、莉子は彼女の肩を小突いた。
「ん?」
「ん」
莉子は顎をしゃくり康治へ促す。
「あ」
うんうんと頷く対面の2人。
「康治」
シャロットはぐいっと身を寄せて来る。
「ふへっ!」
康治はそのスキンシップに驚き、立ち上がると狭い観覧車が揺れた。
「わわわわ」
「康治座りなさいっ!」
莉子が叱る。
「ああ、ごめん」
彼が座ろうとするもシャロットが身を寄せ、座面を狭めている。
「・・・あの」
「康治、膝の上にどうぞ」
「・・・いえ、それは遠慮します」
「何故?」
「何故と言われても・・・」
困惑する康治。
莉子はジェスチュアで、両手を出し「抑えよ」の指示をだす。
「ふむ」
シャロットは座面を空ける。
「ありがとう」
康治は座り直した。
「ありがとうは膝枕されてから言って欲しかった」
「そんな」
彼はよりいっそう深みに入った。
観覧車は一番上の高い所へ。
「ほら、みなさん真上に来ましたよ」
ホランが話題を変えようとする。
「うん、やっぱりいい景色だ」
康治も気を取り直して窓を覗き込んだ。
「そうだな」
彼はどきりとした。
頬をスレスレに、美しいシャロットの顔が近づいたからだ。
「・・・・・・」
観覧車はゆっくりゆっくりと下降していく。
康治の気持ちもより下降していく。
サゲサゲ~。




